天才の天災

春夜

辞退、からの...

「......今、なんて言うたんじゃ?」
「俺は辞退すると言ったんだ。」
桜花が長い槍を肩に掛け直してレンに近づき、レンの胸ぐらを掴む。
「どういうつもりじゃ!!!!
わしはお前と戦うんを楽しみにしとったんじゃ!」
「俺は別に楽しみにはしてなかったよ。
ミネアの成長も見れたし。正直満足だ。
楽しみにはしてなかったが、
お前の槍はちょっと気になるがな。」
「やったらその目で確かめてみぃや!!
初めて会うた時に言うたじゃろ!
わしは強いやつと戦いたいんじゃて。」
「別に戦わなくても神眼で見れば能力は分かるし、お前と闘うメリットはあまりない。」

...........................
しばらくして桜花がレンから手を離す。
そして冷ややかな低い声を発した。
「...そーかい......失望したわ...」
そしてそのまま引き返していく。
「まぁ待てよ。」
「...言い訳ら聞きとうないわ。
ほっといてくれや…」
「お前のために言ってやってるってのに。冷たいな。」
桜花の足が止まり、少し振り向く。
「...なんじゃ?」
「おい!早く試合を終わらせろよ!」
レンが唖然としている審判に向かって声を張り上げる。
「ディ、ディーオ選手の棄権により、
勝者は桜花選手!!!!」
審判の一言で披露戦が終わる。
「さてと。」
レンは手の骨をポキポキと鳴らしながら
桜花に声をかける。
「ミネアの試合で少し楽しめたし、
今日の俺は機嫌がいい。
披露戦は俺の負けだが、個人的な勝負なら受けてやってもいいぞ。」
「......ええんか?手ぇ抜いたりせぇへんじゃろうな?」
「?手加減しなくていいのか?」
「アホか!わしは本気のお前と戦いたいんじゃて。」
桜花の瞳に光が戻り、少し元気になる。
「わかった。が、使うのは水魔法だけだ。」
(本気出したらこの星ごと殺せるんじゃないか?俺は死神だし...)
試すわけにもいかない疑問を持ちつつも
桜花と向き合う。
「ちょっ!!ちょっと君たち!!そんなっ...」
審判が止めに入ろうとしたが、いつの間にかシズクが背後から魔法をかけて
審判を一時的に仮死状態にしていた。
「ありがとな、シズク。
邪魔してくる奴が他にもいるなら任せるぞ。」
「ん。ますたーの邪魔、させない。」
「いつの間に...全然気付かへんかったぞ...」
「おい、桜花。1つ、忠告だ。」
「なんじゃ?これでも強い奴を探し回っとったんじゃ。今更恐怖なんかねぇぞ!!」
桜花は槍を構え直し、顔には笑顔を浮かべる。
「そんなんじゃねぇよ...」
そしてそのままレンに向かって走り出す。
ドクン!
桜花の持つ槍が脈打つ様な感じがした。
「気ぃ引き締めろよ!!!!
行くぞ!!『剛血』ゥゥゥゥゥ!!!!!!」
桜花が槍の名前を叫びながら
レンに一直線に突っ込む。

「気合い入れてるところ悪いが、
その槍の能力を見ることも無く終わるぞ。本気出せって言ったのは、
お前だからな?」

血液操作ブラッド・コントロール

槍がレンに届くことは無く、
桜花はその場に勢いよく崩れ落ちる。
桜花の身体中からは血が流れ出している。

「ますたー、何したの?」
「何って。さっきも言った通り、水魔法
を使っただけだが?」
「水なんてない。」
「何を言っている?
人間の体の7割は水分で出来ている。
それをちょっと暴れさせただけだ。」
「人間によって、持ってる魔力は違う。
体内に干渉は出来ない。」
「できたが?」
「ますたー、チート。」
「どこでチートなんか習ってきた?」
「この前ますたーに会いに来た女の人。」
(沙織か...)
「それを言い出したら、俺は魔法使えば全部の属性でチートになるだろ。」
「ますたー、凄い。」
「チートって聞くと褒められた気がしないな...よし、部屋に戻るぞ。」
「ん。」

忘れないように、いじっていた記憶も戻しておいた。

突然の辞退、そしてバトル。
圧倒的な強さとグロテスクでしばらく会場内で声を出せるものはいなかったそうだ。

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