天才の天災

春夜

エギル

窓から差し込む陽の光で俺は目を覚ました。昨日の気だるさがまるで嘘のように無くなり、さえている気がする。
「おはようございます、ご主人様。
起きていらしたのですね。
調子はいかがですか?」
「あぁ。もうなんともない。」
「それは良かったです!
それで、その......」
「ん?なんだ?」
「お目覚めすぐで申し訳ないのですが、
お昼頃にギルドマスターが来られるそうです。昨日の報酬のお話に来るそうです。」
「そうか。ならすることも無いし、
もう一眠りするかな。」
そう言って隣で伏せているハクロに抱きつく。
ハクロは毛並みがサラサラでめちゃくちゃ気持ちいい。
力でなくとも、抱き枕として有能すぎる。
というわけで、俺の隣で寝かすことにした。
「...むぅ...羨ましいです...」
「ん?何か言ったか?」
「い、いえ!何も言ってませんよ?
で、では、お昼に起こしに来ますね!」
ココは足早に去っていった。
なんだったんだ?と思いつつも、もう一度眠ることにした。

「失礼します。ご主人様、ギルドマスターが来られました。起きてください!」
「...ここに呼べ...」
寝起きの目を擦りながら起き上がる。
ココが戻ってきた。
ギルドマスターの他にもう1人、白髪の老人が居る。国王とはまた違う人物だ。
「昨日はありがとな!
報酬の話だが、昨日話した通りだ。
冒険者ランクはもう上げてあるが、
報酬金は、金額が大きいからもう2、3日待ってくれ。2、3日後にまた、ランカに届けさせよう。Sランクに上がりたいなら、この前ボイコットしないでくれよ…」
「あぁ...完全に忘れていた。
そんなことより、そこの奴は誰だ?
国王とは違うみたいだが…」
「待っててくれたアイツらにどんだけ頭を下げたことか…」
「これは紹介が遅れてすまんかったな。
わしはこの国の国王の弟、エギルという。独立国として学院の理事長をしておる。」
「で?要件は?」
「うむ。レン君や。わしの学院に入学する気はないかの?」
「ないな。」
「ハッハッハ!これは手厳しいのぅ。」
「学院に通う歳でもねぇよ。」
「む?お主の出身は他とは変わっておるのかの?わしの知る学院のほとんどが、
年齢の制限などないんじゃが…
わしの学院は世界で2番目に大きい学院での。子供だろうが大人だろうが、
例え生まれてすぐでも、素質に見込みのある者は通えるんじゃよ。」
「わざわざ説明しなくても、
入る気はねぇよ。」
「まぁそう言わんで。今度見学にだけでも来るといい。」
「しつこいぞ?」
少し殺気を飛ばす。
「おお!これがお主の実力かの?
じゃが、まだ全然本気ではなさそうじゃの。」
「用が済んだならさっさと失せろ。」
「わしの学院と張り合う1番大きい学院に来月から勇者達が通うそうじゃよ?
イベントとして対抗戦なんかもあるし、
闘う機会もあるぞ?わしの学院にも実力者がおるがの。」
勇者?あぁ...この前ミネアが言っていた
帝国で異世界から召喚された勇者だっけか?この世界にいると言われている
魔族の王、魔王を倒すために呼ばれたとか...
「強いのか?」
「あぁ!もちろんじゃ!
そもそもどこの学院も、実力が無いと入れん。わしの学院と帝国寄りにある1番大きい学院はその中でもトップクラスと言われておる。」
「そうか...少しは楽しめそうだな…」
「マスター、楽しそうですね。」
「ますたー、笑ってる。」
「ま、行かねぇけどな。」
「!!なんでじゃ!
今のは完全に行く流れじゃろう!」
「戦いにおいて自分より弱い奴らにおそわることなんかねぇし、めんどくさい授業に出るのも嫌だからな。」
「そ、そんな...頼む!
わしの学院に入ってくれ!
お主の要望はある程度叶えよう!
じゃからどうか、この通り!」
ガンッ!と床に頭を打ち付けて土下座を始めた。
この世界にも土下座はあるんだな…
「なら条件だ。」
「な、なんじゃ?」
「1、俺は授業には出ない。
2、通うのは俺、シズク、ミネアの3人だ。
3、対抗戦に俺たち3人の出場確定。
こんなもんか…」
「そ、それはほぼ通っていないとの...」
「はぁ...ギルドマスターにもこの前言ったが、嫌なら帰れ。お前らの頼みを聞く以上、優位なのは俺だ。この条件以外受ける気は無い。」
「わ、分かった!わしの権限で何とかするわい!」
「なら来週から行ってやる。」
「一応在籍してくれるようじゃし、
感謝するぞい、レン君。」
「ではエギル様、帰られますか?」
「そうじゃな。帰るとしよう。
レン君、待っておるよ。」
「分かってるよ。」

「よろしかったのですか?マスター。」
「ん?何がだ?」
「学院の件です。
学院には実力者が集まるというのは確かですが、マスターの思っているような強者はいないと思うのですが…」
「俺も別に期待してねぇよ…
もう1つの学園の勇者、本命はそっちだからな。闘う口実になればいい。
ところで、ミネアとシズクは?
朝から見かけないが...」
シズクはいつもなら俺に引っ付いているはずだが、隣には朝も今もハクロしかいない。
「シズクならこれからミネアとずっと
模擬戦をすると言って庭に行かれましたよ?」
「そうか。」
あいつらはまだ本来の力の半分も出せてはいない。どれほど強くなるのか、しばらく神眼を使わずにおこう。

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