無自覚少女の異世界大冒険(仮

きくりうむ

目覚めた場所は暗かった

「…ここはどこ?」

 目が覚めた。
 どうやら私はごつごつした地面で寝ていたみたい。すごく背中が痛い。
 てか、なんで私はこんなところで寝ているんだろう? 寝ぼけたのかな? …いや、ないか。

 横には、地面と同じくごつごつした壁がある。壁際で寝ていたようだ。
 この場所は薄暗く、壁から反対側の壁がよく見えない。

 「…洞窟…かな」

 そう思った。
 それなら話は早い。とりあえずここから抜けよう。暗いし、寒いし、怖い。

 壁に手をつきながら歩きだす。
 壁がごつごつしてるのは良いんだけど、微妙に湿ってて気持ち悪い。うぅ…最悪だぁ。
 そんなことを思いながら私は歩いた。

 …おかしいな。もう10分位歩いているのに、出入口らしきものにあたらない。というか、もう1週してたりしない? 

 私の頭の中に嫌な予感がはしる。

 「もしかして…そもそも出入口がないとか……?」

 …ガチでそういうのは止めてほしい。それなら私は一体どうやってここに来たのだ。上から放り込まれたのかな。
 上を見てみると、暗くて天井が見えないが、どう考えても放り込まれたら無事ではすまない高さだ。
 そこで私はふと思った。

 「隠し通路的なやつかな」

 そう。隠し通路。それなら出入口がないのはわかる。
 定番と言えば、壁の一部を押したり、特定の床を踏んだりだよね。むしろ、そのくらい簡単なやつじゃないと、解けないよ私は。

 「せめてライトが欲しいな」

 この暗さでどうやって仕掛けを見つければ良いのか。ちょっとハードすぎやしませんかね。
 せめて、壁にろうそくがズラーっと横に並んでてもいいんじゃないの? 
 そんな愚痴を言いつつ、適当に壁をペタペタしたり、地面をあちこち踏みながら、再度1周する。

 「いやないじゃん」

 さっきより大幅に時間をかけて回ったのに何にもなかった。ちくせう。もう1周した私の時間を返してくれ。……はぁ。

 「…となると、こっちだよねぇ」

 壁に背中を向け中央を見る。うーん…何も、ないような気もするけど、行ってみるしかないよね。
 これで何もなかったら、この壁ぶん殴ってやるんだから。

 地面をよく見ながら転ばないように進む。
 今のところ、これといって何もない。

 「…やっぱりなにもないかな」

 がっくりと肩を落とす。
 もう、このままここで生活しろというのだろうか。どう考えても無理なんだけど。
 いや、だって何もないんだよ? 生きていくのに必要不可欠な水と食料が。
 こんなの3日くらいで餓死しちゃうよ。私は。

 そういえば、昨日は何を食べたんだっけ、と思い返す。
 ハンバーグかな。カレーかな。唐揚げだっけ? 
 そこまで思ったところで、ふと気づいた。

 「ビックリするぐらい思い出せないんだけど…」

 しかも、昨日のご飯のことだけじゃない。自分の事についての記憶ががっぽりとなくなっている。
 私は誰なのか、どんな性格なのか、どこに住んでいたのか、両親はだれなのか……その全てが思い出せない。

 「これが…記憶喪失と言われる現象か……!」

 いやでも待て。
 自分についての記憶はないけど、他の記憶なら普通にあるんだけど…。
 自分の記憶だけ消えてるのか。うーん……なんだかなぁ。
 こうも、はっきり自分の記憶だけ消えてると、作為的な何かを感じる。

 もしかして私、何かやらかしてしまって記憶を消されてここに閉じ込められた…みたいな?

 「さすがにないか」

 記憶は消えてるけど、前の私もきっと超優秀で、超天才で、超モッテモテだったに違いない。そんな私がやらかすはずがない!
 とかなんとか思っていると、

 「なにこれ…?」

 ぽつん、と、何かが地面に刺さっていた。

 私の知る限りこれは…棒だ

 「なんでこんなところに」

 とりあえず棒の回りを回ってみると、これといって何もない。
 どう考えても怪しすぎる。
 倒れているなら、「あ、棒だぁ わーい」ってなるかもしれないけど、刺さってるってことは、いかにも「自分怪しいです。弄ってください」みたいな感じでしょ。

 「…怪しいけど、取るか」

 考えていても仕方ないので、なるようになれ、ということで引き抜く。
 …あれ? 抜けない。…ますます、怪しいな。
 うーん…横にも倒れないし前にも後ろにも倒れない…。

 …うーん…………あっ

 「押すのかも」

 そうだよそうだよ。まだ押すという選択肢が残ってるよ。
 どれどれ、さっそく……

 …ガチャン

 ギイィィィィ……ガコンッ……

 棒を押すと何かが作動した。よかった。やっぱり押すのが正解だったみたいだ。
 何が来るかな。ちょっと楽しみ。

 ……ズズズズッ……

 「うわ、まぶし!」

 何かが動いた音が聞こえたかと思うと、奥の方から思わず目を瞑ってしまうほどの激しい光が現れた。

 「うぅ…くるならくるって言ってから来てよね」

 10秒くらい目を開けられなかったが、徐々に目が光になれていき少しずつ開いていく。

 「…ん。…あれ…これは…風」

 ヒューヒューと、光の方から風が吹いていた。優しい風が肌に触れ、着ている服と少し長めの髪をなびかせる。
 それだけじゃない。
 あの光が現れてから、肌寒かったこの洞窟が温かくなった。
 私はこの光…いや、光の先を知っている。
 そう。ここは……

 「……っ外だ!」

 遂に私は外に出ることが出来たのだった。

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