人間から(堕天使の)スキルになりました!?

雨夜

初ダンジョンまでの道のりが長い…って?

翌日
僕は欠伸をしながら夜明けと共に起き身支度をしマスターから呼び出され食堂へ。


「おはようございます、マスター」
「おはよう、隼人。…よく眠れたようだな」
「はい、今からダンジョンへ行ってまいりますがとても楽しみです」
「フフ、楽しみか…。気を付けて行ってきてくれ。それとこれは餞別だ」


マスターはそう言って横に置いてあった剣を僕に渡してくれた。…って、この剣…!


「ま、マスター!これ、僕が欲しいって言ってた…」
「フフ、可愛いお主の為に買ったのだ。…魔剣 オプファー…それはまだ出来たばかりで自我などは無いが気を付けよ」
「は、はい!マスターの為、この剣と共に精進して参ります!」


剣を受け取って僕は強く抱き締めた。
剣からは膨大な魔力を欲してる気配も感じれたけど…マスターが僕に期待しているみたいで嬉しい、それに初めて、この世界に来てプレゼントを貰った。ダンジョン、頑張らなくちゃ!

そう強く思いながらマスターに一礼をし、食堂を出た僕は瞬間移動で自室に戻り忘れ物が無いか念入りに確認。
忘れ物がないのを確認しベンダさんが待つ召喚部屋へ移動した。


「ベンダさん、準備が出来ました!」
「その様だな…。いいか?くれぐれも俺達の教えを忘れるな。お前の能力などもな。そして……勇者がお前にとって親しい人物だとしても隙を与えるな」
「…かしこまりました、不死の王よ」


ベンダさんに言われた言葉に気を引き締め魔法陣の中心に立ち…



「それでは、行ってまいります!転移ゲート、開門!」


行先は━━━━━━━━━



























     レアーレ王国首都 レルギ!










「ここがレアーレ王国、か…」


地下街に出た僕はローブをきちんと羽織り、フードを深く被りながら周りを観察した。
とても賑やかでマスターが納める街と同じくらい。…唯一、違う点は魔物が一匹もいない。
周りを見渡しても人、人、人、人。たまにエルフやドワーフといった人間に近い種族も歩いてる。


「冒険者の人より商人の人が多いんだ…。ん?…………いい匂い、それにこの匂い…懐かしい…」


ふわりと香ばしい匂いが鼻をくすぐり、匂いの元に辿り着いて目を見開いた。
そこにあったのはお祭りや神社などに出ている屋台。どこか嗅いだことがあると思ったらたこ焼きの匂いだった。


「…これは……」
「いらっしゃい!!」
「っ!…ど、どうも…」


この世界に来て久しぶりに見るたこ焼きらしきものに夢中になって店主の事を忘れていた…修業が足りないなぁ…。
それにこの店主…どこかで見た事がある。どこでだっけ?


「あー…これ、いくらだ?」
「銅貨3枚だよ!」


財布から銅貨3枚を出し、店主に渡す。
店主は満面な笑みで「毎度あり!」と言い出来立てのたこ焼きもどきにソースもどきを付け爪楊枝(この世界にもあったと知った時驚いた)を刺して僕に渡す。
…ソースもどきの匂いは完全にソース…だな。味の方は…どうだろう?


「……いただきます」
「はい、どうぞ!」


爪楊枝が刺さってるたこ焼きもどきを口に運び恐る恐る食べる。
熱さに少しビックリしたが外はカリカリで中はトロトロ。それにこのタコもどきの食感…タコと思ってしまう程近いな。紅しょうがもどき等もなかなか美味い。


「これ、モンスターの肉が入ってるのか?」
「え、なんで分かったんですか!?」
「食べた事があるからな」


モンスターの肉を食べた事があるというのは嘘である。
カマをかけてみたが…素直過ぎて逆に心配になってくるな。


「た、食べた事がある人だったんだぁ…。実はリルポって名前のタコモンスターが海に居るんですよ。それを買取って…」
「食材にした…か。凄いな、モンスターの肉なんて嫌がる人多いだろ?」
「うん、でも普通のお肉は高いから…仕方ないよ。その結果がこれなんだけどねぇ〜」
「……客が来ないんだな」
「ま、のんびり待つつもり!あ、貴方名前は?私は……えーと、リンカ・ミヤノ!」
「…宮野梨花?」
「え、なんで分かったの!?」
「勘だ。俺の名前はハヤトだ」


僕がそう名乗るとリンカは一度固まったかと思うと「ハヤト…?違う人かな…」とブツブツと呟いて、ぎこちない笑顔でよろしくと言ってきた。
……これは、何かしらの地雷を踏んだか?


「どうかしたのか?さっきよりぎこちない感じがするが…」
「な、なんでもないよ!それよりハヤトはなんでここに?」


リンカの問いでダンジョンに向かう途中だった事に気付いた。
僕は冒険者になりたくてダンジョンを探していると伝えると道を教えてくれると言った…知っているんだが……。


「公園を出て真っ直ぐ歩いて途中、右に曲がってそのまま学校に向かって歩いていけば着くよ」
「学校?」
「うん、今は授業終わって他の皆はダンジョンに行ってると思うけど…」
「…そうか、ありがとう。また来るよ」
「毎度!今度はもっと美味しいのを作るからね!」


リンカと手を振って別れ、僕はダンジョンに向かった。
…学校と言ってたが恐らく、勇者であるアイツらの仲間を作る為に…そして勇者の教育…いや、洗脳をやっているのか。
マスターの街で人間にモンスターと手を取るべきではない!なんて言うバカがいたおかげでこの国はわかりやすい。
モンスターは全部悪だと考えてるのがわかる。

その証拠は…まず、僕のこの姿。歩く度に髪が見えているのか眼が見えているのか分からないが僕を見てヒソヒソと何か話してる姿が何度も見られる。
そして、会話の内容から「魔人」という言葉を聞き取れた。…魔人もモンスターと同類ってわけか…不愉快だな。

そう思ってる間にダンジョン前に着いた。出店や冒険者、旅人でかなり賑わっていて装備品を全て確認しダンジョンの出入り口を守る衛生兵に見つからないように隠れて入った。


さあ、楽しい楽しい初めてのダンジョンの時間だ!!


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