人間から(堕天使の)スキルになりました!?

雨夜

魔王城へ…って?

マスターのスキル《飛翔》で空を飛ぶのかと思いきやリブロさんが人間の姿からドラゴンの姿へと変わった。
マスターはドラゴンの背中に乗りモルテさんは翼を広げて隣で飛んでいた。

「では、アンジュ様。私は他の幹部達に招集をかけてきます。不本意ですがリブロと共に城へ戻っていてください」
「あぁ、任せたぞ。モルテ」

モルテさんがどこかに行ったのを見送るとリブロさんが翼を広げ空高く舞い上がった。

《うわぁ〜…!すっごい高い!!》
「(フフ…そうであろう?リブロの背中に乗るのは我とお主だけの特権だぞ)」
《えっ、僕も!?》
「(おかしなこと言ったか?お主は我のスキル【賢者】で我の仲間…大切な存在となったんだぞ)」
《あ、そっか………えへへ》
「(どうした?)」
《僕は元の世界ではゲームしかやってなくて…だから学校ではよく悪口言われてたり無視をされたり色々…辛いことをされたんです。だから、マスターみたいにとても優しい人にそんな事言われたら嬉しいです》

「……リブロ、城に着いたらベンダに綺麗な死体を用意するように言え」
《え!?》

「かしこまりました、アンジュ様。……何を使うのか聞いても?」
「何、新たな仲間を紹介したいだけだ。その為に死体が必要なのだ」
「成程…その様な考えをされていたとは、気付かなくて申し訳ございません」
「よい、お主にも使う理由を内緒にしようと思っていたからな」
「アンジュ様…(はっ!となると、俺は先にアンジュ様がやりたい事を知ったという事…つまり、モルテより先に動ける!!)」

リブロさんがなにか考えてると思っていたけど見えてきた城や街の景色に僕は釘付けになった。
それと同時に本当に異世界に来たんだって気持ちになった。

《あれが…マスターの住む城…!それに…街の人達明るいですね!》
「フフ……これが我の理想としている街…。何故人間は我の考えに賛同してくれないのかわからぬ…」
《マスター……解答…。恐らくですが姿や力が違うからだと思います。昔から人間は自分とは違う所を見つけただけで拒絶したり敵視したりしますので…》
「(そうか…)やはり人間とは分かり合えないのだな……」

そう呟くマスターはどこか寂しそうに街を見下ろしていた。
笑顔で手を振ってくれる人間や魔物、人間と仲良く歩いてる魔物、魔物相手に怖がったりする素振りを見せないで商売をする人間…色んな魔物や人間がいた。
勇者やその仲間達はこの光景を見てどう思ったんだろうか?街に住む人間達はマスターに操られてるとか洗脳されてるって思ったのかな…。
もし、僕の考えがあっていたら僕は勇者……人間を許さない。
マスターが封印から解かれたから勇者もきっと召喚されてるはず!だから、体を手に入れる事が出来たら真っ先に調べなきゃ!後、【賢者】から【大賢者】とかにならないと今の僕じゃマスターの役に立てないよ…。


そんな事を考えていたら城の中庭に着いてマスターが地面に降りている。
僕は慌ててマスターから通して見える景色を見てみる…それは幻想的とも言えるような庭だった。
四季折々の花が咲いていて綺麗な小川が流れている。
木の枝や草花の葉をよく見ると妖精が会話をしたりマスターを指さして喜んでる様子が見えた。
すると、他の妖精より少し一回り大きい妖精が近寄ってきてマスターに頭を下げる。


「復活、おめでとうございます。アンジュ様」
「フォル、久しいな。昔と変わらず今も妖精族の長のようだな」
「フフッ…妖精族は寿命が長いですからね。それに私は大妖精、他の妖精、種族より1番長生きしているとも言えるでしょう」


おぉ…!大妖精…!凄いな、妖精を見れば本当にファンタジーの世界に来たんだって時間が湧くよ…!!


「…して、フォルよ。ベンダは何処に居る?」
「あの骨だけの男ですか。アイツなら偽の玉座の間にてアンジュ様の仕事を代わりにしていますよ」


フ、フォルさんも嫌そうな顔してる…(汗)
性格が悪い人なのかな…?
そう思う僕を置いてマスターは少し満足そうに「そうか」と言って歩き出した。


《ま、マスター…ベンダって人は性格とか悪い人なの?》
「(いや、悪くは無いが…性格に少々難アリ、だな)」


せ、性格に少々難アリ…?
それはそれで大丈夫なのかな…そんな人が用意する身体はあまり期待しない方がいいかも…。

マスターは少し大きめな扉を開け入ると中は玉座だけで後は何も無かった。そして、玉座に座ってる骸骨の人が…ベンダさん…?
彼?はマスターに気付くと玉座から立ち上がり跪いた。


「お帰りなさいませ、マスター。貴殿が再びこの世に戻って来るのを今か今かと首を長くしてお待ちしておりました」
「長く待たせてすまなかった、ベンダよ。我が城を守ってくれたそうだな…感謝する」
「いえ…マスターの城を守るのが俺の役目です。これくらい平気です」
「ふふっ……我が封印される前から変わらんな」


愛おしそうにベンダさんを見るマスター…。玉座に向かいながらマスターはベンダさんに変わった事など色々聞いて僕の身体の話になった。


「その話でしたらリブロ殿から聞いており既に用意しております」
「流石リブロだな、早速その身体を見せてくれ」


ベンダさんが収納魔法から出した身体は白髪で少し幼さが残る僕と瓜二つの身体だった。


「……随分と、幼い身体を出したな。ベンダ」
「申し訳ございません、他の死体は既にアンデッドにしており昨日回収した死体はどれも損傷が激しく残っていたのはこれだけしかなく…どこかのダンジョンで人間を生け捕りにしてきましょうか?」
「……ふむ…(隼人、お前はこの死体でいいのか?)」


幼さがある身体で色々不便さが出そう…そう思ったけどわがままとか言っていられない!


《マスター!僕はその身体でも構いません!今のままじゃマスターに守られているだけです。僕はそんなの嫌だ!守られるだけなんて…!!》
「…そうか、ならば早速始めるぞ。ベンダ!準備をしよ!」
「既に準備は出来ております、後はマスターのお力のみです」
「うむ」


隣の部屋に移動して大きい魔方陣の真ん中に死体を置いた。魔方陣の外からマスターとベンダさんが何かを唱えた瞬間、何かに引っ張られ冷たい石畳を感じた。


「…で、き…ぁ……?」


声がうまく出ない…。かなり長く使われてないみたいだ…。


「成功したようだが…少し休んだ方が良いようだな」
「では、部下に命令してその者の部屋の方をご用意させます」


ベンダさんがこっちに来たから急いで立とうとしたけど上手く力が出せなくて尻餅をついたみたいになった。


「…ぅぅ…」
「…気にするな、まだ魂が新たな身体に慣れていないようだからな。明日になれば走ったり色々できるようになるだろう」


え、ベンダさんの口調…優しい!?
こっちの口調の方が僕好きかもしれない…。でも、人前ではやってくれなさそうだなぁ…。
そんな事を考えてる間にベンダさんは僕を抱き上げマスターに一礼をし部屋を出た。


んん……少し、ねむ…い…かも……。
そう思った僕は目を閉じ、そのまま眠りについた…。

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