神様と異世界旅行

ダグドガ星 猫耳、ウサギ耳

俺達は舗装された土の道を、かれこれ1時間は歩いていた。
茜(あかね)さんが言った生きている者が沢山居る場所を目指しているのだ。
俺の前を歩いているミリスさんとデミルさんが、急に立ち止まり後ろからでも分かる様に首を傾げている。
そんな二人に俺は声を掛ける。

「どうしたんだ?」

二人は振り向き困惑した表情で俺を見ると、前方を指差して言う。

「道が途切れてまして・・・」
「途切れた先は森なんだけど・・・」
「え?」

俺は二人が指差している所を見る。
確かに、道が途切れて森になっている。
・・・いや、不自然だろ。
そこまで、道を舗装しておきながら森があるとか。
答えは一つしかないな。
俺は振り返り、後ろに居るセレンさんに言う。

「これが空間阻害ですか?」
「そうです」

セレンさんは俺の言葉に頷き、続けて言う。

「森が本当にあるわけではなく、その様に見えるんです」
「結界とかではないからのう、そのまま通り抜けれると思うでのう」

セレンさんの隣に居る茜さんが、続けて言う。
ミリスさんとデミルさんは驚いた様で、二人で話しをしている。

「デミル、こんな空間阻害って見た事ありますか?」
「ないないっ。見た事ないよっ。そもそも私じゃ魔力を感じれないしっ」

ん?
魔力を感じれない?
でも、セレンさんは強い魔力を感じると言ってた気がするが・・・。

俺はセレンさんを見る。
セレンさんは頷くとミリスさんとデミルさんの間に移動する。
そして、二人の肩に片手づつを置くと言う。

「どうですか?」
「ぇ・・・えっ!?」
「わっ!?」

驚きの声を上げる二人。
え、何、何が見えてんの?
スッゴイ気になるんだけど。

「盾も、見たいと思うでのう?ワシが力を貸すかのう?」
「へ?」

後ろから茜さんに声を掛けられ、顔だけ振り向こうとしたら。
ギュッと、後ろから抱き締められた。
いやいや、待て待て。
何故に抱き着くっ。

「あ、茜さん?」
「ほれ、前を見てみると良いのう?」
「いやいや、違くてさっ」
「はよせい」

珍しく俺に対する言葉の強制力に戸惑いながら前を見る。
どうだろう、集落と言うのか村を守る木材の塀が現れていた。
途切れて森になっていた所は、今は閉まっているが、それは村に入るための門があったのだ。
正直、塀が高過ぎて集落なのか村なのか判断出来ないが。
俺は茜さんに抱き着かれているのを忘れて、驚きの言葉を口にする。

「完全に森だったのに・・・」
「覚えておくといいのう?これが高度な空間阻害だでのう?込める力が強いだけ範囲も広がれば、より本物に見えるでのう」
「流石・・・魔法だな」

俺が軽く感動していると前にいた三人は振り返って、こちらを見ていた。
の、だがセレンさんはいつも通り無表情なのだが、ミリスさんとデミルさんはニヤニヤしている。

「ぇっと、どうした?」
「今、振り返ってはいけませんよ?」
「いけませんね」
「うん、いけないねぇ」

は?・・・はぁっ!?
忘れてたわっ、茜さんに抱き着かれてたっ。
俺は顔を振り向かそうとするが。

「イテッ、痛い痛いっ。茜さん力が強いってっ」
「・・・」

無言で更に身体を締め付ける力を強くされて、振り返る事は出来なかった。
汗もかいてるし、恥ずかしいし離れて欲しいのだが。
というか、女性に抱き着かれた事が久し振り過ぎて真面目に恥ずかしいっ。
セレンさんはこちらに近付いて来ると、俺越しに茜さんに言う。

「茜様の、その様な表情は初めて見ましたね」
「・・・か、からかうでないのうセレン」
「身体をお貸ししましょうか?」
「頼むでのう、やはり慣れない事はするもんじゃないのう・・・」

頼むから俺を通して会話しないでくれ。
顔が暑くなってくるのが分かる程、恥ずかしいのに。
というか、背中も暑い。
セレンさんは俺をジーッと見ると、頷き言う。

「良かったですか?」
「・・・黙秘します」

良かったよ、だからこそ黙秘させて頂きますっ。
セレンさんは俺の言葉に無表情だが不満そうにすると、俺の後ろに移動する。
そこで、ようやく茜さんが離れてくれたのだが。

「まだ、振り向いては駄目ですよ」

ハイハイ、気なるけど我慢しますよ。
それに、俺も助かったし言う事聞きます。
俺はいまだにニヤニヤしているミリスさんとデミルさんに、前に進む様に促す。



「止まれっ!!」

門の目の前まで来た時、突然に男性の大きな声が響き渡った。
ミリスさんとデミルさんは武器に手を掛けようと、していたのだが俺が慌てて声を出す。

「二人共、武器を抜いては駄目だっ」

二人は俺を心配そうに見る。
だけど、こういう場合に敵意を見せるのは良くない。
俺達は戦いに来た訳ではないのだから。
俺は二人の前に出る。
声は門の上から聞こえた、だから俺は上を見上げる。
そこに弓だろうか、それらしき物を構えた数人の人影が見えた。
相手に聞こえる様に大きな声で言う。

「すみませんっ、旅の者ですっ。許可なく門に近付き申し訳ないっ。話しを聞いては貰えないだろうか!?」

人影は何かを話し合っている。
警戒するのは分かるが、話しを聞いてくれたら嬉しいんだが・・・。

「ただの旅の者が、この村の空間阻害を見破ったと!?」

あ~、やっぱりそこだよね~。
そう来るんじゃないかと思いましたよ。
どう、説明したら良いものやら。
俺は腕を組み考え込んでいると、突然門が開きはじめる。
ぇ、今の今で開けてくれるの?

「だ、誰だ!?誰が、開けたんだ!?」

上の人影も想定外だったらしく慌てている。
ゴゴゴッと木材が擦れる大きな音を立てながら、門は開く。
そこには一人の女性が立っていた。
服装はマンガで言う所の村人風の焦げ茶色。
髪は綺麗な赤色。
長さはセレンさんと、同じぐらいか。
雰囲気は柔らかそうだが。
いや、その前に頭に・・・。
頭にウサギ耳が付いてるんですけどっ!?

「ぇ、耳が・・・え?」
「じ、獣人だ・・・」

俺の後ろに居る二人も小声で驚いている。
という事は珍しいのか?
女性は俺を見ると柔らかく微笑み、近付いて来る。

「お、お待ちくださいっ、村長!!」

後ろから先程聞こえた男性の声と共に、数人の男性達が走ってくる。
村長と呼ばれた女性は立ち止まり振り返ると、これまた優しい声で男性達に言う。

「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」

そして、再び歩き出し俺の目の前まで来るとニッコリ微笑み言う。
背は俺と同じ位か?

「どの様なご用件でしょうか?」

俺は片手で頭の後ろを掻きながら、困った様に答える。

「旅をしているのですが、出来れば休ませて頂けれたらと思いまして」

俺は後ろの二人をチラリと見て、女性に視線を戻す。

「あと、話しも聞かせて頂ければな・・・と」

女性は少しの間、頬に片手を当てて思案したのち微笑み頷き言う。

「分かりました。では、私の自宅に招待致しましょう」
「そ、村長っ!?」

後ろの男性達は驚きの声を上げている。
いや、俺も驚いている。
良いのか?初対面で、そこまで気を許して。
女性は微笑んだまま、俺に言う。

「大丈夫です、しっかり警戒してますので」
「そ、そうですか・・・」

俺は、また顔に出てたのかと片手で顔を触る。
やはり、顔に思ってる事が出すぎだろ・・・俺。
女性はそんな俺の行動が面白かったのか、口元に片手を当ててコロコロ笑うと言う。

「面白い方ですね」
「えっと、まぁ」

どう、返答して良いか分からんっ。
女性は笑うのを止め、俺達を見渡すと言う。

「自己紹介が遅れました。私はこのカセ村の村長タート・ティル。そして、こちらがゴードンです」

タートさんが片手で後ろに控えている男性を紹介する。
俺達に声を張っていた人だ。
背が高い180はあるぞ、ガタイも良い。
屈強な戦士って感じだ。
だけど・・・こっちは猫耳だっ。
男性は不服そうに俺達を見ながら言う。

「私はゴードン、カセ村の警備隊長をしている。変な事はするんじゃないぞ?」

いや、しないって。
俺は苦笑しながら言う。

「自分は河口 盾です。盾って呼んでください」

続けて俺の左右から、ミリスさんとデミルさんが言う。
というか、何故俺を間に挟む?

「わ、私はマグド・ミリスです。ミリスとお呼びください」
「ケルカノ・デミル・・・デミルと呼んでください」

・・・あれ、茜さんとセレンさんは?
俺は振り返ると二人を見る。
二人は後方を見つめており、茜さんが声だけで言う。

「盾のう、早めに村の門を閉めた方が良いのう?狼の群れが近付いておるからのう?」
「20・・・21頭ですか、少し数が多いですね」
「デミル、どうですか?」
「まだ私では、そんなに遠くまでは気配察知できないよっ」

茜さんとセレンさんの言葉に、困惑するミリスさんとデミルさん。
その言葉を受けタートさんは、ゴードンさんに指示を出す。

「ゴードン、中に急ぎましょう。門を閉めた後、弓にて攻撃。全滅を確認後、いつもの様に。良いですね?」
「・・・信じるのですか?こちらの方では、その様な確認は・・・」
「ゴードン」
「・・・了解致しました、村長」
「気持ちは分かります。直ぐに答えは出ますよ」
「・・・はい」

タートさんはこちらを見ると、微笑み言う。

「さぁ、急ぎましょう。案内、致しますわ」

俺は頭を軽く下げ、言う。

「宜しくお願い致します」



俺達がタートさんの先導の本、カセ村に入り門を閉め始めた時。
ピーッと笛の大きな音が鳴り響く。
門の上から声がする。

「隊長っ、テルウルフの群れです!!」
「・・・いつもの様に油断するなよっ!!」
「了解ですっ!!」

ゴードンさんは何かを言おうとしたのだろう、だが俺達に軽く会釈すると駆けていった。
タートさんは俺を見ると、微笑み言う。

「情報、ありがとうございます」
「いえ、自分は何も・・・」
「いやいや、盾がここにおるから言うたのだからのう」
「何もしてない訳では、ありませんね」
「・・・いや、待て待て。おかしいだろ」

左右から声がしたなと思ったら、腕に抱き着かれた。
右に茜さん、左にセレンさんだ。
茜さんならともかく、セレンさんまで・・・。
状況をね、もう少し考えて頂きたいんですよ神様達。

「まぁ、細かい事はいいではないかのう」
「そうです、盾様。細かいですよ」

・・・セレンさん、貴女だけには言われたくありません。
というか、歩きにくい恥ずかしいってのっ。
汗、かいてるっていってるだろっ?
本当に頼むから、止めてくれっ。

「デミル、あれ良いですね」
「うん、次はあれでいこう」

おい、後ろで不穏な事を言うんじゃない。
気付いたら、逃げてやる。
・・・気付いたらだけど。
茜さんは腕に抱き着いたまま、微笑みタートさんに言う。

「ワシは茜じゃ。宜しくの」
「私はセレンです。宜しくお願い致します」

タートさんはそんな俺達を見ると、楽しそうにコロコロ笑い言う。

「本当に面白い方達ですね。アカネさんにセレンさんですね、こちらこそですわ。さぁ、こちらです。ついてきてくださいな」
「よ、宜しくお願いします・・・」

俺は顔が暑くなっているのを感じながら、なんとか返事をする。
俺は抱き着かれながらタートさんの後に続き歩き出す。
そして、考える。

俺・・・いつフラグ立てたんだよ。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品