神様と異世界旅行

ダグドガ星 神属は規格外

俺、茜さん、セレンさんは真っ白な空間に居た。
俺と茜さんは苦笑しながら、後ろに佇んでいるセレンさんを見る。

「本当に大丈夫なんですね?」
「大丈夫なのかのう?」

心配そうな俺達を他所にセレンさんは無表情なまま頷き、答える。

「大丈夫です」

俺と茜さんは顔を見合わせて、苦笑する。

何故か?
セレンさんが着いてくると言ったから。
理由はセレンさん曰く。
「何千年もあの空間じゃ、飽きます」
らしい。
セレンさんは、あの真っ白な空間が出来た瞬間から管理を任されていた。
それは、とてつもない年月が過ぎたのだろう。
何千年もって、言ってるし。
しかも、最近では・・・ここ50年程は利用する者が居ないんだそうだ。
利用する者が居るなら気も紛れるが、利用する者が居ないと。
「自分の存在を忘れそうになります」
と、眉を潜めながら言っていた。
管理はセレンさんが何処からか出した、白い球体が簡単な管理をするらしい。

そして、何よりも一番凄いのは。
俺は今、リュックを背負ってません。
はい、旅行・・・異世界に行くというのにです。
昨日、リュックに物を仕舞っていた所でセレンさんが近付き、手に収まる程の白い正四角形を造り出し。
「これを持っていくのですね」
と、それに突っ込んだ。
すると、どうだろう。
消えたのだ忽然と。
俺の表情から何かを察したのか、セレンさんは正四角形に手を突っ込みリュックを取り出した。
茜さんが龍脈を操れる様に、セレンさんは空間を操れる様だ。

うん、簡単に分かり安く言うと容量ほぼ無限の収納ボックスだ。
流石、神属だ規格外過ぎる。
これを、皆チートって呼んでるやつなんだろうなぁ。

ちなみに冷蔵庫横にある棚からは、お菓子とインスタントラーメン類は空っぽでした。
うん、つまり全てアイテムボックスの中です。


「開門します」

セレンさんが片手を翳すと、そこだけが真っ黒になった。

「今回、開門して繋がった星はダグドガという所です」

ちなみに利用者が行った事がある星には何度でも繋げれるが、新しい星に行く場合はランダムなのだとか。

「ダグドガという星は・・・」
「行くだのう!!」
「ちょっ、茜さんっ」

茜さんはセレンさんの声を遮り、俺とセレンさんの手を掴むと真っ黒に染まった場所に飛び込む。
俺は驚き声を上げるが、駄目だった。
龍神様は簡単に止まらない。


バッと一瞬で景色が変わる。
俺達が降り立った場所は、森の中。
ジャングルの様な未開の地という感じはしない。
どちらか言えば、神聖な森という感じがする。
草は芝生の様で。
いや、何よりも。

「木、デカっ」

デカイ、日本では御神木と言われるぐらいデカイ。
どれぐらいだろうか、試しに手を広げて抱き付いてみる。
マジかぁ、3分の1程度しかないということは、大体俺が手を広げると1.5程だから、その三倍。
円周5メートル近くあるのか、この木。

「茜様?人の話を聞かないのは昔からですね」
「い、いやのう。楽しみでのう?」
「それは私もです。ですが情報を知っているのと知らないのでは危険性に違いが出ます」
「そ、そうだのう」
「昔からですが、落ち着いて頂きませんか?」
「す、すまないのう」
「昔からですが」
「・・・そんな昔、昔と言わないで欲しいのう」

後ろを振り返ると腕を組んでいるセレンさんに、茜さんが注意されている所だった。
茜さんは肩を落として、反省している様だが。

いや、無いな。
興奮したら忘れるぞ、あの龍神様は。

俺はその二人の後方にある『門』に興味が沸き、二人を通り過ぎると『門』に触れる。
遺跡後の様にツルの様な植物が多い繁っている。
見た感じ。

「石材・・・か?」
「ただの石では、無さそうだがのう?」

後ろから声がして、振り返り茜さんを見る。

「ただの石ではない?」

茜さんは頷き、言う。

「ただの石には、龍脈の力は通りにくいでのう」

俺は驚き、言う。

「この星にも龍脈があるのか?」

俺の問いに茜さんは、呆れながら言う。

「星があるのなら、龍脈は必ずあるでのう」
「その星によって、名前を変えますが」

茜さんの言葉を引き継ぐ様に、セレンさんが言う。
俺はセレンさんを見ると、首を傾げる。

「名前を?」

セレンさんは無表情なまま、頷く。

「この星では、魔力と言われている様ですね」

なに、魔力?
あったのか、本当に。
ぇ、じゃあこの星はファンタジー好きには堪らない。

「剣と魔法の世界かっ」

セレンさんは俺の言葉に再び頷く。
いや、その前に茜さんを見る。

「茜さんも、規格外なんだな」
「なんでだのう?突然・・・」

茜さんは首を傾げて不思議そうにしているが、龍脈を使う事が普通過ぎて気付いていない。
つまり、茜さんはどんな星に行こうが龍脈の力を使い放題。
どんな事が出来るのかは、まだ知らないが最強じゃないですかね。

俺の表情から何かを察したのか、セレンさんは茜さんを見て言う。

「落ち着いてくださいね?」
「な、なんだのう?二人揃って・・・」

俺とセレンさんの視線に、更に首を傾げる茜さん。
うん、分かって無さそうだ。
不意に茜さんは勢いよく後方を振り返る。
その茜さんの反応に俺は身構える、こういう場合は何かある。
セレンさんは慌てず、茜さんが見ている方に視線を向ける。

「危険が迫っているのですか?」
「いや、のう。周りを調べておったら、弱々しい人の気配が見付かったからのう」
「弱々しい、ですか?」
「うむ、死ぬ程ではないがのう?」
「どうします?」
「どうするかのう?」

待て、何故に二人共、俺を見る。
おかしくないですかね?
決定権は俺なんですか?

「隊長は、どうしたいかのう?」
「隊長はどうしたいですか?」

いつ、俺が隊長になった!?
止めろ、その悪戯っ子みたいな微笑みは。
セレンさんは無表情のままだが。
むぅ、二人の表情を見るからに撤回は無さそうだ。
俺は溜め息を一つすると言う。

「様子を見るだけ見てみよう。放置出来るなら放置で」

何故かと言えば。
これは、明らかなフラグだ。
旗がバッタバッタとなびく程の、だ。

茜さんは俺の返事に楽しそうに微笑み、頷き言う。

「なら先導はワシがしようかのう」
「それでは、私は後方を見ましょう」

セレンさんも頷き言う。
俺が真ん中なのは有難い、が。
神属と言えど女性に守られるのは、少し情けなく思ってしまう。
茜さんは森の奥を指を指して、微笑み歩き出す。
それに続き俺、セレンさんの順番で後に続く。

歩き始めて思うが、やはりこの森は普通の森ではないのだろう。
辺りを見回しても、草は芝の様に整頓されていて鳥の鳴き声さえしない。
御神木の様な木々の、せいかもしれないが。
木々の葉からの溢れ日が所々出ているからだ。

10分歩いただろうか、茜さんは足を止めた。
こちらを振り返り、木を指差す。
セレンさんは小声で、茜さんに尋ねる。

「その、後ろですか?」

茜さんはコクコクッと頷く。
俺は木に近付き、顔だけを覗かせていく。
どうやら、少し開けてる場所の様だ。
太陽の光が、強く見える。
人だ、人が二人居る。
一人は軽装騎士の様で、もう一人はトンガリ帽子をしている。
顔までは見えないが、荒々しく肩で息をしている。
すると、トンガリ帽子をしている人が顔を上げこちらを見る。

やっべ、目が合った。
フラグを自分で立てちまったか?
あんなに注意していたのに。
俺も、まだまだ甘いなぁ。

トンガリ帽子は弱々しい声で、言う。

「誰?」

誰でしょうね?
頼むよ、本当に。
厄介事は、止めてくれよ?
旅が始まったばかりなんだから!!

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