神様と異世界旅行

神だけど、様はいらない

俺は立ちながら話すのも、ないと思い座るように龍神様に促す。
龍神様、もとい茜さんはそれに従い畳に腰を下ろす。
正座で座られたので、俺もその場で正座で腰を下ろす。
戸惑いながら、俺は言う。

「その、龍神様が何の様です?」
「茜だ」

ん?少し不機嫌になった?
俺は言い直す。

「茜様」
「茜だ」
「・・・茜、様」
「茜、だ」
「・・・」
「・・・」

どんどん不機嫌になっている龍神様。
次第に言葉に強制力が見られるし。
えぇ、なんだこれ、どうしたらいいんだ?
空気を読む事は凄く苦手なのだが。
あれか、様はいらないのか。

「茜、さん?」

正解の様だ。
見るからに不機嫌そうではなくなった。
それだけではなく、微笑んでいる。
うん、やっぱり高校生位にしか見えないな。

「それで茜さん、僕に何の様です?」

茜さんは、楽しそうに微笑みながら言う。

「旅はしたくないか?」
「はい?」

いや、したいですよ?
茜さんは、俺を指差し続ける。

「悪いが、意識を失っている間に記憶を見させて貰ってのう」

その指差ししていた指を、左右にフリフリしながら続ける。

「色々な事を見て、知る旅に出ぬか?まぁ、長くここを開ける事は出来ぬが定期的にだ、が?」

俺は首を傾げながら訪ねる。

「それは、旅行という事ですか?」
「おぅ、その様な言葉が出来ていたか、そう、それだ」

いや、言葉が出来てたかって見ていたわけではないのか?
いかん、このままでは質問責めにしてしまいそうだ。
俺は苦笑しながら首を横に振り、茜さんを見ながら言う。
日本位なら何処でも連れて行けるぐらいの財産を持っている、場所を聞かないことには何とも答えれない。

「何処にです?」

俺の問い掛けにクックッと、笑い。

「異世界、だ」

とんでもないこと言い始めたよ、この龍神様は。
茜さんは指をフリフリさせたまま、続ける。

「おぬしの中で異世界とは、どういうものかのう?」
「この世界とは異なる、もう一つの世界ですかね」
「もう一つ、というと?」

うーん、簡単に言うと。

「もう一つの星・・・」
「流石だのう!」
「はい?」

茜さんは、再び俺を指差し楽しそうにクックッ笑い言う。

「そう、異世界はもう一つの星の事。だが、それが一つだけだと思うかのう?」

いや、つまりあれか?
空にある星に行く、という事?

「ちなみに、その星ではないのう。本当に異なる世界、だから異世界」

茜さんは指差しを止め、窓から見える空を見ながら言う。

「ここから見える星ではない、地球という世界としての星空だからのう」

茜さんは俺を見ると、続ける。

「例えばディータという異世界があるとしよう、それは地球から見えるの星達には存在しないのだよ」

なんとなく分かった。
つまり、異世界同士が交差する事はないという事か。
あ~、ヤバイ楽しそうだ。
年なのにワクワクする。
何年ぶりだろう、こんな気持ちは。
茜さんは俺の表情から、答えを知ったのか楽しそうにクックッと笑い。

「なら決定だのう、その為にしてもらい事があるのだ」
「してもらいたい事?」

茜さんは頷き立ち上がり着いておいでと、歩き出す。
俺も立ち上がり茜さんの後追うとすると、茜さんがおもむろに振り向き苦笑しながら言う。

「あとな、様はいらないでのう。神という種族なだけだからのう?」
「はい、分かり・・・」
「丁寧な言葉遣いもいらん、ワシは旅行の相棒だからのう」

つまり、気を使うなと。
なかなか、難しい事を言う龍神様だよ。
俺は苦笑すると、片手で頭の後ろをかくと覚悟を決め言う。

「分かった、宜しく茜さん」

答えは茜さんの満足した様な、嬉しそうな微笑みだった。

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