魔法の世界で、砲が轟く
第七十話 両指揮官の決定
「斥候部隊より連絡です! 敵の強い抵抗に遭いつつあり、我一時後退す、です!」
司令部に駆け込んできた伝令の兵士が司馬懿に報告を挙げる。
「さすがは孔明。抜かりはありませんね」
司馬懿は諸葛亮に半ば苛立ちながらも賞賛の言葉を贈った。
「それで、敵はどれほどの規模?」
「詳細は分かりませんが、対戦車壕があることから戦車での攻撃は難しいようです」
「となれば、正面からの攻撃は無理な上、回り込んで攻撃という行為も通信が出来ない上は各個包囲撃破の可能性があり、厳しいですね」
「どうなされますか? もたもたしていてはジーマン軍本隊が敗走します!」
「となれば、あれを使いますか」
そう言って、司馬懿は幸一の方を見た。
「あれを使うのか? まだ量産体制に入ったばかりで、数は揃っていない。さらに言えば、要員の技量は高くは無いぞ」
「構いません。どうせ襲われる危険は少ない上、運が良ければ敵に心理的な動揺が与えられます。それに今は一刻を争います。出し惜しみしている暇はありません」
「分かった」
そう言って近くの無線機を取った。これはジーマン本国と直接通信が取れるようなもので各師団に一つずつしかない。
「こちら第一独立師団、至急バタフライの発信をお願いしたい。目的はバラー周辺の敵情の偵察だ」
それから二言三言言ってから、無線を切った。
「数時間後には敵情が分かる。それまで敵に細かな攻撃を仕掛け続けよ。敵に休みを与えるな」
「敵は未だに抵抗を続けているのかい~?」
グレイの代わりに副官に付いた仕官にニックは尋ねた。
彼は現在、バラーに籠城しているジーマン軍本隊攻撃の指揮を執っていた。
「はい。敵の指揮官は名将ミンシュタインです。そう簡単には突破させてくれません」
「報告によれば、後方からスーザン殿を攻めていたジーマン軍が攻撃を仕掛けているらしい~。もたもたしていると敵の突破を許すよ~。何せ、今の通信妨害はそう長くは持たないのだから」
そう言って、上を見た。彼が籠もっている天幕の上には気球のようなものがあり、それが今回の電波妨害の要因であった。元々は通信設備の充実していたジーマン軍に対抗するためにかなり以前から研究されていたものであったが、今回の作戦に伴い開発中であったが、急遽使用が決定されたのだ。しかし、開発段階ながけあり、使用期間などがあり、それが半日であった。
ここに到着し、戦闘を始めたのが数時間前のこと。
つまり残された時間はあまりないのだ。
「しかし、敵は何せ防御に適したバラーの町に大規模な敵の部隊が立て込んでいるのです! そう簡単には陥落は無理です! しかも指揮をするのは名将と名高いミンシュタインですよ!」
「確かに。ただ~、本当に無理ならスーザン殿は我々に攻撃をさせるかな~?」
「それは……」
「よ~く考えてみよう。現状は前方に~、籠城する敵の主力。後方には~、敵の精鋭。我が軍は挟まれているわけだね~」
「ええ」
「だけど~、敵は通信が取れないから攻めあぐねていると~」
「はい」
「となればやることは一つしかないね~」
そう言って戦場全体が描かれた地図の自軍を示す青いコマを動かした。
「後方の敵を各個包囲、撃破をすれば良いんだよ~」
「このままではただ時間が過ぎるだけですよ! 攻撃命令を出しましょう!」
「敵情もよく分からずに攻撃は愚の骨頂! ここは敵情を探るべき!」
「いや、そのような時間はありません! 敵はこの今の瞬間も本隊に攻撃を行っているのですよ!」
「本隊を率いているのはミンシュタイン殿以下歴戦の猛将達であり、あっという間には陥落しない上、兵力も強大! むしろ、虎の子であるこの部隊を失った方がジーマン軍としてのダメージは計り知れない!」
第一独立師団内では現在、意見の対立が起きていた。
司馬懿達少数派は、攻撃をするのではなく少数による念入りな偵察をして通信妨害の原因を探ると同時に味方との合流地点がないかを探る慎重派。
一方の多数派は、現状では一刻の猶予もならず味方と合流をすべきと考え、多少の被害は覚悟の上で敵に突撃すべきという攻撃派。
彼らは互いに意見に一長一短の節があり、決めあぐねていた。
第一独立師団の師団長であるグデーリアンは、沈黙を保っており双方の意見を黙って聞いていた。
「師団長、このままでは埒があきません! どうかご決断を!」
「グデーリアン殿」
双方から諭され、ようやくグデーリアンは閉じていたまぶたを開き、一言一言噛みしめるように言った。
「双方共に主張は間違ってはおらず、実に迷うところだ。正直、私としてもかなり悩んでいる」
だが、とグデーリアンは一言付け加え、話を続ける。
「師団長という立場上、軍の指揮は私の采配に掛かっており、私が決断をしないとならん。よってここで私の意見を言おう。私は……」
その直後のことであった。
突然司令部の無電がなり、近くの兵士が無電のヘッドフォンに耳を押しつける。
そして、すぐに後ろを振り替えり、グデーリアン達に叫んだ。
「前線から報告です! 敵の大部隊がこちらに向け前進を開始! 先鋒の部隊と戦闘が行われている模様です! 敵の数は大規模すぎるために分かりませんが、我が軍の前線一帯が激しい攻撃を加えられており、生半可な兵力ではないようです!」
司令部に駆け込んできた伝令の兵士が司馬懿に報告を挙げる。
「さすがは孔明。抜かりはありませんね」
司馬懿は諸葛亮に半ば苛立ちながらも賞賛の言葉を贈った。
「それで、敵はどれほどの規模?」
「詳細は分かりませんが、対戦車壕があることから戦車での攻撃は難しいようです」
「となれば、正面からの攻撃は無理な上、回り込んで攻撃という行為も通信が出来ない上は各個包囲撃破の可能性があり、厳しいですね」
「どうなされますか? もたもたしていてはジーマン軍本隊が敗走します!」
「となれば、あれを使いますか」
そう言って、司馬懿は幸一の方を見た。
「あれを使うのか? まだ量産体制に入ったばかりで、数は揃っていない。さらに言えば、要員の技量は高くは無いぞ」
「構いません。どうせ襲われる危険は少ない上、運が良ければ敵に心理的な動揺が与えられます。それに今は一刻を争います。出し惜しみしている暇はありません」
「分かった」
そう言って近くの無線機を取った。これはジーマン本国と直接通信が取れるようなもので各師団に一つずつしかない。
「こちら第一独立師団、至急バタフライの発信をお願いしたい。目的はバラー周辺の敵情の偵察だ」
それから二言三言言ってから、無線を切った。
「数時間後には敵情が分かる。それまで敵に細かな攻撃を仕掛け続けよ。敵に休みを与えるな」
「敵は未だに抵抗を続けているのかい~?」
グレイの代わりに副官に付いた仕官にニックは尋ねた。
彼は現在、バラーに籠城しているジーマン軍本隊攻撃の指揮を執っていた。
「はい。敵の指揮官は名将ミンシュタインです。そう簡単には突破させてくれません」
「報告によれば、後方からスーザン殿を攻めていたジーマン軍が攻撃を仕掛けているらしい~。もたもたしていると敵の突破を許すよ~。何せ、今の通信妨害はそう長くは持たないのだから」
そう言って、上を見た。彼が籠もっている天幕の上には気球のようなものがあり、それが今回の電波妨害の要因であった。元々は通信設備の充実していたジーマン軍に対抗するためにかなり以前から研究されていたものであったが、今回の作戦に伴い開発中であったが、急遽使用が決定されたのだ。しかし、開発段階ながけあり、使用期間などがあり、それが半日であった。
ここに到着し、戦闘を始めたのが数時間前のこと。
つまり残された時間はあまりないのだ。
「しかし、敵は何せ防御に適したバラーの町に大規模な敵の部隊が立て込んでいるのです! そう簡単には陥落は無理です! しかも指揮をするのは名将と名高いミンシュタインですよ!」
「確かに。ただ~、本当に無理ならスーザン殿は我々に攻撃をさせるかな~?」
「それは……」
「よ~く考えてみよう。現状は前方に~、籠城する敵の主力。後方には~、敵の精鋭。我が軍は挟まれているわけだね~」
「ええ」
「だけど~、敵は通信が取れないから攻めあぐねていると~」
「はい」
「となればやることは一つしかないね~」
そう言って戦場全体が描かれた地図の自軍を示す青いコマを動かした。
「後方の敵を各個包囲、撃破をすれば良いんだよ~」
「このままではただ時間が過ぎるだけですよ! 攻撃命令を出しましょう!」
「敵情もよく分からずに攻撃は愚の骨頂! ここは敵情を探るべき!」
「いや、そのような時間はありません! 敵はこの今の瞬間も本隊に攻撃を行っているのですよ!」
「本隊を率いているのはミンシュタイン殿以下歴戦の猛将達であり、あっという間には陥落しない上、兵力も強大! むしろ、虎の子であるこの部隊を失った方がジーマン軍としてのダメージは計り知れない!」
第一独立師団内では現在、意見の対立が起きていた。
司馬懿達少数派は、攻撃をするのではなく少数による念入りな偵察をして通信妨害の原因を探ると同時に味方との合流地点がないかを探る慎重派。
一方の多数派は、現状では一刻の猶予もならず味方と合流をすべきと考え、多少の被害は覚悟の上で敵に突撃すべきという攻撃派。
彼らは互いに意見に一長一短の節があり、決めあぐねていた。
第一独立師団の師団長であるグデーリアンは、沈黙を保っており双方の意見を黙って聞いていた。
「師団長、このままでは埒があきません! どうかご決断を!」
「グデーリアン殿」
双方から諭され、ようやくグデーリアンは閉じていたまぶたを開き、一言一言噛みしめるように言った。
「双方共に主張は間違ってはおらず、実に迷うところだ。正直、私としてもかなり悩んでいる」
だが、とグデーリアンは一言付け加え、話を続ける。
「師団長という立場上、軍の指揮は私の采配に掛かっており、私が決断をしないとならん。よってここで私の意見を言おう。私は……」
その直後のことであった。
突然司令部の無電がなり、近くの兵士が無電のヘッドフォンに耳を押しつける。
そして、すぐに後ろを振り替えり、グデーリアン達に叫んだ。
「前線から報告です! 敵の大部隊がこちらに向け前進を開始! 先鋒の部隊と戦闘が行われている模様です! 敵の数は大規模すぎるために分かりませんが、我が軍の前線一帯が激しい攻撃を加えられており、生半可な兵力ではないようです!」
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