魔法の世界で、砲が轟く
第六十四話 激突! 第一独立師団とフィーリア隊
「何度もしつこい!」
戦車内で思わず、真一が叫ぶ。
彼は本来であれば、後方で待機しているはずの要員であるが今回は、大きな戦闘になると言うことで味方の士気を上げるために前線まで出てきたのだ。
しかし、スーザンの罠にはまって現在、苦戦中であった。
「それにしても何でこうも敵は頻繁に出てくるんだ!」
「おそらくは敵の罠にはまったのでしょう」
横にいた車長が冷静に言う。
「かつての独ソ戦においては双方とも敵の部隊を包囲殲滅するように戦っていましたから、この程度の規模の包囲であれば、そう難しくはありません。それに敵はそれほど強いわけではありませんし」
「それほどの激しい戦闘だったのか」
「ええ。一回の作戦で互いに何百両という戦車がぶつかり合うことはざらにありましたから。あれに比べれば、まだまだですよ」
話をしていると、右横にいた戦車が魔法が直撃。その瞬間、爆発し動きを止めた。
「敵さん、思ったよりやるようですね。こちらの装甲を貫通してくるとは……」
車長が呟く。今までで敵の魔法でこちらの装甲を抜くようなものは存在しなかった。
しかし、今の目の前で起きた爆発は明らかに敵の魔法によるものだ。
「こちら四号車より中隊長車へ。敵の魔法がこちらの装甲を貫通することを確認した。普段は弾くことから当たり所によっては撃破される可能性があるため、十分注意されたし」
「中隊長車より四号車、報告ご苦労」
上層部に今起きたことを報告し、部隊全隊に注意喚起を行う。
「それにしても真一閣下は驚かないのですね」
「何がだ?」
「目の前で戦闘が起こっていると大体の新兵は皆、精神的にショックを受けるものです。しかし、あなたにはそれがない。それが不思議に思いましてね」
「ああ。以前、戦闘に巻き込まれたことがあってな。ショックはあの時にしたから、今はあまり受けないんだ」
「そうでしたか」
車長はそれ以降黙り、戦車の指揮を執り続ける。
「砲手、十一時方向にいる敵兵を狙え」
「了解」
「操縦手は一切、止まらなくて良い。止まると敵に狙い撃ちにされる上、部隊から孤立する」
「了解」
その指示に従い、敵兵に向かって砲撃を行う。この時、主砲に装填されていたのは徹甲弾ではなく榴弾だ。
当然事ながら、走りながら撃ったため敵兵には命中はしなかった。しかし、その近くに着弾し敵兵がその破片を喰らい、朱に染まって倒れる。
「この調子であれば、突破まではそれほど掛からないでしょう」
車長はそう言い、指揮を続けた。
「思ったより敵の攻勢はありませんな」
グデーリアンは呟く。実際、敵の魔法によって撃破された戦車はほとんど無く、突進を続けている。
フィーリア隊の旗が見えたときはどうするかと考えたが、予想以上の敵の弱さにあっけなさを感じている。
「そうですね。あのフィーリア隊を恐れていたことは思い違いだったようですね」
司馬懿もその考えに同意した。当初は諸葛亮の罠を疑ったが、このよう場で手抜きをするような者ではないことは重々承知だ。と言うことは、こちらの戦力を測り違えたと言うことが、原因であろう。
諸葛亮ほどの人物がそのような単純な間違いをすることは不思議に思うかもしれないが、実際部下の能力を読み切れず、配置を行ったせいで要地を奪取され、撤退した戦いがある。
「泣いて馬謖を斬る」で有名な第一次北伐である。
諸葛亮はこのように部下の能力を時折見誤る事があるため、今回の過ちも決して不自然なこととは言えなかった。
「おそらくは後数分ほどで包囲を抜けることが出来るでしょう。そうなれば、味方の本隊とは目と鼻の先です」
「ええ。だが、本隊への敵の攻撃はかなり激しいと聞いています。気を引き締めて掛かりましょう」
そう言って二人は車外の様子を双眼鏡で見始めた。
「それにしてもフィーリア自身はどこにいるのでしょうかね?」
グデーリアンがふと気になって尋ねる。
「そう言えばフィーリア自身を見かけておりませんな。この戦場のどこかにいることは確かですが……」
司馬懿は嫌な予感がした。
「グデーリアン殿、先鋒の戦車隊に通達。前方警戒厳とされたし」
「了解」
すぐに通信兵に無線で伝えさせる。
「司馬懿殿、勘ですか?」
「ええ。勘です」
この時、リットンは先鋒で突破口を開く役目を担っていた。
「指揮車より通達! 前方警戒厳となせ!」
「了解!」
リットンは通信兵の言葉に返事をして、持っていた双眼鏡をのぞき込んだ。
「おそらくはかなり強力な奴がこの先にいるな」
「車長、分かるんですか?」
「ああ。今までの敵が弱すぎる。これではここに伏兵を配置した意味が分からん」
リットンがそう返答した瞬間、周囲に土煙が上がった。その頂は以前、勇者達と戦闘を行ったときほどの高さに匹敵した。
「これは予想以上の奴だぞ! 通信兵、指揮車に連絡! 我、強力な敵の攻撃を受く! これより我が隊は敵の撃破殲滅をせんとす、だ! 送れ!」
「了解!」
「敵はどこだ!」
「前方の丘の上です!」
リットンが双眼鏡を向けると、砲手の言ったとおり敵兵が数人、こちらに向け魔法を放ってくるのが見える。
その中央には敵の指揮官らしい豪華な鎧をまとった敵兵がいる。
「やつらか。各車に通達! 一号車は右の、二号車は左の警戒をせよ。他の車両は我に続き、丘の上の敵を撃破する!」
こうしてリットンとフィーリアの死闘は始まった。
戦車内で思わず、真一が叫ぶ。
彼は本来であれば、後方で待機しているはずの要員であるが今回は、大きな戦闘になると言うことで味方の士気を上げるために前線まで出てきたのだ。
しかし、スーザンの罠にはまって現在、苦戦中であった。
「それにしても何でこうも敵は頻繁に出てくるんだ!」
「おそらくは敵の罠にはまったのでしょう」
横にいた車長が冷静に言う。
「かつての独ソ戦においては双方とも敵の部隊を包囲殲滅するように戦っていましたから、この程度の規模の包囲であれば、そう難しくはありません。それに敵はそれほど強いわけではありませんし」
「それほどの激しい戦闘だったのか」
「ええ。一回の作戦で互いに何百両という戦車がぶつかり合うことはざらにありましたから。あれに比べれば、まだまだですよ」
話をしていると、右横にいた戦車が魔法が直撃。その瞬間、爆発し動きを止めた。
「敵さん、思ったよりやるようですね。こちらの装甲を貫通してくるとは……」
車長が呟く。今までで敵の魔法でこちらの装甲を抜くようなものは存在しなかった。
しかし、今の目の前で起きた爆発は明らかに敵の魔法によるものだ。
「こちら四号車より中隊長車へ。敵の魔法がこちらの装甲を貫通することを確認した。普段は弾くことから当たり所によっては撃破される可能性があるため、十分注意されたし」
「中隊長車より四号車、報告ご苦労」
上層部に今起きたことを報告し、部隊全隊に注意喚起を行う。
「それにしても真一閣下は驚かないのですね」
「何がだ?」
「目の前で戦闘が起こっていると大体の新兵は皆、精神的にショックを受けるものです。しかし、あなたにはそれがない。それが不思議に思いましてね」
「ああ。以前、戦闘に巻き込まれたことがあってな。ショックはあの時にしたから、今はあまり受けないんだ」
「そうでしたか」
車長はそれ以降黙り、戦車の指揮を執り続ける。
「砲手、十一時方向にいる敵兵を狙え」
「了解」
「操縦手は一切、止まらなくて良い。止まると敵に狙い撃ちにされる上、部隊から孤立する」
「了解」
その指示に従い、敵兵に向かって砲撃を行う。この時、主砲に装填されていたのは徹甲弾ではなく榴弾だ。
当然事ながら、走りながら撃ったため敵兵には命中はしなかった。しかし、その近くに着弾し敵兵がその破片を喰らい、朱に染まって倒れる。
「この調子であれば、突破まではそれほど掛からないでしょう」
車長はそう言い、指揮を続けた。
「思ったより敵の攻勢はありませんな」
グデーリアンは呟く。実際、敵の魔法によって撃破された戦車はほとんど無く、突進を続けている。
フィーリア隊の旗が見えたときはどうするかと考えたが、予想以上の敵の弱さにあっけなさを感じている。
「そうですね。あのフィーリア隊を恐れていたことは思い違いだったようですね」
司馬懿もその考えに同意した。当初は諸葛亮の罠を疑ったが、このよう場で手抜きをするような者ではないことは重々承知だ。と言うことは、こちらの戦力を測り違えたと言うことが、原因であろう。
諸葛亮ほどの人物がそのような単純な間違いをすることは不思議に思うかもしれないが、実際部下の能力を読み切れず、配置を行ったせいで要地を奪取され、撤退した戦いがある。
「泣いて馬謖を斬る」で有名な第一次北伐である。
諸葛亮はこのように部下の能力を時折見誤る事があるため、今回の過ちも決して不自然なこととは言えなかった。
「おそらくは後数分ほどで包囲を抜けることが出来るでしょう。そうなれば、味方の本隊とは目と鼻の先です」
「ええ。だが、本隊への敵の攻撃はかなり激しいと聞いています。気を引き締めて掛かりましょう」
そう言って二人は車外の様子を双眼鏡で見始めた。
「それにしてもフィーリア自身はどこにいるのでしょうかね?」
グデーリアンがふと気になって尋ねる。
「そう言えばフィーリア自身を見かけておりませんな。この戦場のどこかにいることは確かですが……」
司馬懿は嫌な予感がした。
「グデーリアン殿、先鋒の戦車隊に通達。前方警戒厳とされたし」
「了解」
すぐに通信兵に無線で伝えさせる。
「司馬懿殿、勘ですか?」
「ええ。勘です」
この時、リットンは先鋒で突破口を開く役目を担っていた。
「指揮車より通達! 前方警戒厳となせ!」
「了解!」
リットンは通信兵の言葉に返事をして、持っていた双眼鏡をのぞき込んだ。
「おそらくはかなり強力な奴がこの先にいるな」
「車長、分かるんですか?」
「ああ。今までの敵が弱すぎる。これではここに伏兵を配置した意味が分からん」
リットンがそう返答した瞬間、周囲に土煙が上がった。その頂は以前、勇者達と戦闘を行ったときほどの高さに匹敵した。
「これは予想以上の奴だぞ! 通信兵、指揮車に連絡! 我、強力な敵の攻撃を受く! これより我が隊は敵の撃破殲滅をせんとす、だ! 送れ!」
「了解!」
「敵はどこだ!」
「前方の丘の上です!」
リットンが双眼鏡を向けると、砲手の言ったとおり敵兵が数人、こちらに向け魔法を放ってくるのが見える。
その中央には敵の指揮官らしい豪華な鎧をまとった敵兵がいる。
「やつらか。各車に通達! 一号車は右の、二号車は左の警戒をせよ。他の車両は我に続き、丘の上の敵を撃破する!」
こうしてリットンとフィーリアの死闘は始まった。
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