魔法の世界で、砲が轟く
第五十八話 クルスクの雪辱
敵の動きを見ていた司馬懿はすぐに敵の動きの変化に気付いた。
「これは敵は完全に防御の用意を固めていますね。おそらくは長期戦の構えを用意していると思われます。これは下手に攻撃をせずに迂回するのがよろしいかと」
将軍のミンシュタインに献策を行った。
ミンシュタインは歩兵出身であるが戦車の知識も豊富で、戦車の指揮官をやったことはないもののその見識の深さから今回の作戦の指揮を執ったのだ。
「司馬懿殿、確かにその手はありますがもしここを攻略しなければ、我が軍は後方を脅かされるだけでなく兵站も襲撃されます」
司馬懿の意見にミンシュタインが反論した。
実はこのバラーの町は魔国の王都に続く道の重要な拠点であり、ここを攻略しなければ兵站が途切れることは間違いなかった。
「しかし、このまま攻撃を続けていてはじり貧の戦いとなります。ここは何かしら策を巡らせるべきかと」
司馬懿がそうミンシュタインに提案した。事、戦車戦に関してはミンシュタインの理解の深さは司馬懿の上をいっていた。
「ふむ。第一独立師団のグデーリアン閣下を呼んでくれ。彼と策を練りたい」
「分かりました」
ミンシュタインは経験豊富なグデーリアンの力を借りることを考えたのだ。
グデーリアンが前線から引き上げてきてミンシュタインと合流し前線を一望できる地点まで向かった。
「この陣形をどのように突破するか、意見を聞かせて欲しい」
ミンシュタインは率直にグデーリアンに告げた。
「この陣はかつて話を聞いたことがあります。ただその時、敵はこちらと同じ戦車や榴弾砲を装備した部隊でしたので、はたしてその時と同じように行くかは……」
「では、その時の説明と対処方法をお聞きしたい」
「ですが、我が軍団はその時、敗れたのです」
「え、そうなのですか?」
いかにも信じられんとでも言うかのようにミンシュタインは目を丸くする。
「我が軍とは言えど無敵ではございませんよ」
グデーリアンは自嘲気味に呟く。
「その戦闘は我が世界ではクルスク機甲戦と言われた戦いです。あちらに見えるように兵士や兵器の籠もる塹壕をあちこちに張り巡らし作り出した防御陣地を敵は張り巡らし、我が方の戦車隊からの防御を整えた防衛戦です。その重厚な守りのせいで我が方の戦車隊は突破までに多くの時間と犠牲を要したのです。この戦いの結果、我が国はその被害を立て直すことが出来なくなり、我が国は敗北したのです」
「何と……。ではあの陣を突破する方法はないのですか?」
「無いわけではございませんが、果たして付け焼き刃でどうにかなるか……」
「構わない。教えてくれ」
「分かりました。では……」
そう言って、グデーリアンは説明を始めた。
「今回は大勝利でしたな!」
グレイが、スーザンに言う。
「いや、これから先に敵は策を講じてくるわ。間違いなくね。その時に我々が対抗できるかどうかそこが勝負所よ」
現在、ジーマン軍は魔王軍の防御の堅牢さから一時的に攻撃を取りやめていた。しかし、ジーマン軍の戦車に動きがあり、攻撃の準備を開始していることは明白であった。
今回のジーマン軍の指揮官はミンシュタインであり、攻防共に出来るジーマン軍の名将と名高い人物である。そのような人物が指をくわえて待っているとは思えなかった。
しかも、ミンシュタインの副官には司馬懿という人物が付いている情報は掴んでいる。彼女は前回の魔王軍が連敗した作戦の考案者であり、スーザンがミンシュタインの次に警戒している人物であった。
「敵がこれからどのような策を用いると思われますか?」
「それは分からない。おそらくはこちらの防御能力を使えないようにする物と思われるけど……」
「具体的な策までは話からないと?」
「ええ」
スーザンはその鋭い眼光でジーマン軍を睨む。
その目で何を読んでいるのか。
それはスーザンにしか分からないものであった。
「まさかこの世界に来て、この戦法をとるとわな」
リットンの頬は完全に緩みきっている。今回の戦闘はかつてソ連と戦闘時にその圧倒的な兵力差から敗れたクルスク機甲戦を彷彿させる展開となっている。敵はバラーの町を中心とする縦深陣地を築いており、それはかつてソ連軍が用いた縦深陣地とうり二つだ。
この戦いはただ単なるジーマンと魔王軍の戦闘ではなく、かつてドイツ軍が敗れたクルスク戦の雪辱を果たす戦いでもある。
とあらば、第一独立師団が用いる戦法は一つしか無かった。
「Panzer vor!」
全戦車の無線にミンシュタインからの指示が飛んだ。
その瞬間、一気に数百という大量の戦車が一斉にエンジンを猛らせ、魔王軍の陣へと突撃する。
「敵が攻撃を再開した模様です!」
見張りの兵士の言葉を聞き、すぐに飛び出したグレイは、突進してくる敵の戦車隊を見た。
そして何者かが呟く声が聞こえた。
「戦車の楔だ」
「これは敵は完全に防御の用意を固めていますね。おそらくは長期戦の構えを用意していると思われます。これは下手に攻撃をせずに迂回するのがよろしいかと」
将軍のミンシュタインに献策を行った。
ミンシュタインは歩兵出身であるが戦車の知識も豊富で、戦車の指揮官をやったことはないもののその見識の深さから今回の作戦の指揮を執ったのだ。
「司馬懿殿、確かにその手はありますがもしここを攻略しなければ、我が軍は後方を脅かされるだけでなく兵站も襲撃されます」
司馬懿の意見にミンシュタインが反論した。
実はこのバラーの町は魔国の王都に続く道の重要な拠点であり、ここを攻略しなければ兵站が途切れることは間違いなかった。
「しかし、このまま攻撃を続けていてはじり貧の戦いとなります。ここは何かしら策を巡らせるべきかと」
司馬懿がそうミンシュタインに提案した。事、戦車戦に関してはミンシュタインの理解の深さは司馬懿の上をいっていた。
「ふむ。第一独立師団のグデーリアン閣下を呼んでくれ。彼と策を練りたい」
「分かりました」
ミンシュタインは経験豊富なグデーリアンの力を借りることを考えたのだ。
グデーリアンが前線から引き上げてきてミンシュタインと合流し前線を一望できる地点まで向かった。
「この陣形をどのように突破するか、意見を聞かせて欲しい」
ミンシュタインは率直にグデーリアンに告げた。
「この陣はかつて話を聞いたことがあります。ただその時、敵はこちらと同じ戦車や榴弾砲を装備した部隊でしたので、はたしてその時と同じように行くかは……」
「では、その時の説明と対処方法をお聞きしたい」
「ですが、我が軍団はその時、敗れたのです」
「え、そうなのですか?」
いかにも信じられんとでも言うかのようにミンシュタインは目を丸くする。
「我が軍とは言えど無敵ではございませんよ」
グデーリアンは自嘲気味に呟く。
「その戦闘は我が世界ではクルスク機甲戦と言われた戦いです。あちらに見えるように兵士や兵器の籠もる塹壕をあちこちに張り巡らし作り出した防御陣地を敵は張り巡らし、我が方の戦車隊からの防御を整えた防衛戦です。その重厚な守りのせいで我が方の戦車隊は突破までに多くの時間と犠牲を要したのです。この戦いの結果、我が国はその被害を立て直すことが出来なくなり、我が国は敗北したのです」
「何と……。ではあの陣を突破する方法はないのですか?」
「無いわけではございませんが、果たして付け焼き刃でどうにかなるか……」
「構わない。教えてくれ」
「分かりました。では……」
そう言って、グデーリアンは説明を始めた。
「今回は大勝利でしたな!」
グレイが、スーザンに言う。
「いや、これから先に敵は策を講じてくるわ。間違いなくね。その時に我々が対抗できるかどうかそこが勝負所よ」
現在、ジーマン軍は魔王軍の防御の堅牢さから一時的に攻撃を取りやめていた。しかし、ジーマン軍の戦車に動きがあり、攻撃の準備を開始していることは明白であった。
今回のジーマン軍の指揮官はミンシュタインであり、攻防共に出来るジーマン軍の名将と名高い人物である。そのような人物が指をくわえて待っているとは思えなかった。
しかも、ミンシュタインの副官には司馬懿という人物が付いている情報は掴んでいる。彼女は前回の魔王軍が連敗した作戦の考案者であり、スーザンがミンシュタインの次に警戒している人物であった。
「敵がこれからどのような策を用いると思われますか?」
「それは分からない。おそらくはこちらの防御能力を使えないようにする物と思われるけど……」
「具体的な策までは話からないと?」
「ええ」
スーザンはその鋭い眼光でジーマン軍を睨む。
その目で何を読んでいるのか。
それはスーザンにしか分からないものであった。
「まさかこの世界に来て、この戦法をとるとわな」
リットンの頬は完全に緩みきっている。今回の戦闘はかつてソ連と戦闘時にその圧倒的な兵力差から敗れたクルスク機甲戦を彷彿させる展開となっている。敵はバラーの町を中心とする縦深陣地を築いており、それはかつてソ連軍が用いた縦深陣地とうり二つだ。
この戦いはただ単なるジーマンと魔王軍の戦闘ではなく、かつてドイツ軍が敗れたクルスク戦の雪辱を果たす戦いでもある。
とあらば、第一独立師団が用いる戦法は一つしか無かった。
「Panzer vor!」
全戦車の無線にミンシュタインからの指示が飛んだ。
その瞬間、一気に数百という大量の戦車が一斉にエンジンを猛らせ、魔王軍の陣へと突撃する。
「敵が攻撃を再開した模様です!」
見張りの兵士の言葉を聞き、すぐに飛び出したグレイは、突進してくる敵の戦車隊を見た。
そして何者かが呟く声が聞こえた。
「戦車の楔だ」
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