魔法の世界で、砲が轟く
第五十三話 スーザンの策
先の戦闘で大惨敗を喫した魔王軍であったが、魔王軍全体に対してのダメージはそれほど大きくはなかった。しかし、精神的なダメージは計り知れないものがあった。
前線に出されていたものは魔王軍でも精鋭の部類に入る部隊であるし、何度も戦闘を経験している。さらに言えば、今回の戦いは豊富な穀倉地帯を確保するための本作戦の前段階であった。つまり魔王軍側としては当初の予定ではそれほどこの戦いにおいて、激しい戦闘になるとは誰も予測していなかった。
しかし、現実は違った。激しい戦闘になるどころか魔王軍は殲滅され、這々の体で逃げ帰った。
その原因究明をするべく、今、魔王軍参謀部で緊急の対策会議を開いているところであった。
集められたのは次代を担う魔王軍の幹部や現役の指揮官達だ。
「先日の戦闘において我が軍は惨敗を喫した。この理由についてまず当時の現場の指揮官から話を伺いたい」
参謀長のケルンが魔王軍第二軍の指揮官であるニックに尋ねた。
「はい。本官が考えますに様々な理由が考えられますが、大きな要因は我が軍の慢心にあると言えましょう」
「慢心だと?」
一瞬、ピックとケルンの眉が動く。
「はい。我が軍は本作戦を今後の魔国を維持していくための広大な穀倉地域を奪うことにあると考え、戦闘を開始しました。しかし、今までの戦闘と違いジーマン国をそれほど強力な敵と考えず、相対した事は否めません。ジーマン軍が装備する武器ではこちらの使う防御魔法の突破は難しいと考えられ、それほど激しい戦闘になるとは考えていませんでした」
実際、参謀部もそれほどのことは考えていなかった。まさか、敵に勇者、それも防御魔法を突破そるだけの強力な戦車を召喚できる人間がいるとは誰も考えられないであろう。
だが、現実としての起きたのは正しく想定外の事態であった。
「確かに。その点は納得できよう。しかし、敵はそれほど強力な敵であったのか? こちらの戦術次第では崩れるような相手ではなかったのか?」
ケルンが質問を重ねる。
「今回、もちろん策は練ったわ~。だけど敵は予想以上にその対処が早かったの」
スーザンがその質問に答える。
「どういうことだ?」
「こちらはその目の戦闘で撃破された敵の戦車を見て、向こうの弱点を探ったの。その結果はどうもエンジン部分が燃えやすいとのことだったわ。そこで私たち例の部隊を出撃させて、敵の後方に回る策を考えて対処したの。最初こそ上手くいったのだけれどもすぐに敵は後方を狙われることに警戒を初めて止まることが少なくなったわ」
「動き回っているようじゃ、敵はなかなかこちらの兵士を仕留められんだろう」
「そ・れ・が、敵は簡単に仕留めてきたのよ。それも凄く手慣れた様子でね。まるでかつてそんな戦闘をやったことがあろうようだったわ」
「しかし、ジーマン国の戦車はそんな戦闘訓練をしていることは見たことがないと情報部は言っているぞ」
この情報部とは敵の軍を探るスパイのようなもので、敵の国に行きその軍隊の様子などを探っていた。
「ええ。そこが分からないのよ」
「この中で何か分かるものはいないか?」
その瞬間、勇者達の代表として会議に参加していた佐藤昌之が手を挙げた。
「少しその軍に関してよろしいでしょうか? 私は詳しくは知りませんが概要程度であれば分かりますので……」
「何と! どういうことなのだ!」
「あの軍は恐らく私のいた世界の昔の軍隊です。この軍を説明するには簡単に我が世界の歴史を説明する必要があります。私の世界ではかつて世界中を巻き込んだ大戦争がございました。それが二回起こっており、二回目の第二次世界大戦という戦争で登場したのがあの軍です。あの軍はナチスドイツという国の陸軍です。戦車を集中運用し、世界の大国と戦争をしていましたが数の力に屈し、敗れた軍です」
「この軍が良く行った戦車同士の戦闘の際には敵の戦車をいかに早く発見し撃破するかが鍵になったそうです。ですから敵と遭遇すれば敵の戦車の砲弾を交わしつつ戦闘を行う必要があるのです」
「そうか! そのような戦闘を行っていた軍だから敵は動きながらも少し停止をし、こちらの兵士に攻撃を命中させることができたのか!」
グレイが成る程と言った具合に頷く。
「では、その軍への対策はあるのですか?」
「ええ。先ほども述べたとおり、彼らの使っている戦車はエンジン部分が燃えやすいのが弱点です。ですからその部分を狙えば良いでしょう」
「しかし、それを動いているところを狙うのは至難の業だ。さらに言えば、停止している時間もわずかしか無いとなると攻撃を当てられるのは……」
「ならば、大規模魔法で一帯を吹き飛ばすしか対処するしかないでしょう。これならば、敵は逃げられません」
「大規模魔法は撃てる者が限られるし、その者が戦死すれば我が軍に計り知れないダメージが出る。その作戦は採用できない」
「では、他に策はありますか?」
「それは……」
「あるわよ」
一人だけ肯定する者がいた。それは次期参謀長と謳われるスーザンだった。
「策はあるわ」
「ほう。ではスーザン述べてみよ」
「はい。では……」
ケルンに促され、スーザンはある作戦を話し始めた。
前線に出されていたものは魔王軍でも精鋭の部類に入る部隊であるし、何度も戦闘を経験している。さらに言えば、今回の戦いは豊富な穀倉地帯を確保するための本作戦の前段階であった。つまり魔王軍側としては当初の予定ではそれほどこの戦いにおいて、激しい戦闘になるとは誰も予測していなかった。
しかし、現実は違った。激しい戦闘になるどころか魔王軍は殲滅され、這々の体で逃げ帰った。
その原因究明をするべく、今、魔王軍参謀部で緊急の対策会議を開いているところであった。
集められたのは次代を担う魔王軍の幹部や現役の指揮官達だ。
「先日の戦闘において我が軍は惨敗を喫した。この理由についてまず当時の現場の指揮官から話を伺いたい」
参謀長のケルンが魔王軍第二軍の指揮官であるニックに尋ねた。
「はい。本官が考えますに様々な理由が考えられますが、大きな要因は我が軍の慢心にあると言えましょう」
「慢心だと?」
一瞬、ピックとケルンの眉が動く。
「はい。我が軍は本作戦を今後の魔国を維持していくための広大な穀倉地域を奪うことにあると考え、戦闘を開始しました。しかし、今までの戦闘と違いジーマン国をそれほど強力な敵と考えず、相対した事は否めません。ジーマン軍が装備する武器ではこちらの使う防御魔法の突破は難しいと考えられ、それほど激しい戦闘になるとは考えていませんでした」
実際、参謀部もそれほどのことは考えていなかった。まさか、敵に勇者、それも防御魔法を突破そるだけの強力な戦車を召喚できる人間がいるとは誰も考えられないであろう。
だが、現実としての起きたのは正しく想定外の事態であった。
「確かに。その点は納得できよう。しかし、敵はそれほど強力な敵であったのか? こちらの戦術次第では崩れるような相手ではなかったのか?」
ケルンが質問を重ねる。
「今回、もちろん策は練ったわ~。だけど敵は予想以上にその対処が早かったの」
スーザンがその質問に答える。
「どういうことだ?」
「こちらはその目の戦闘で撃破された敵の戦車を見て、向こうの弱点を探ったの。その結果はどうもエンジン部分が燃えやすいとのことだったわ。そこで私たち例の部隊を出撃させて、敵の後方に回る策を考えて対処したの。最初こそ上手くいったのだけれどもすぐに敵は後方を狙われることに警戒を初めて止まることが少なくなったわ」
「動き回っているようじゃ、敵はなかなかこちらの兵士を仕留められんだろう」
「そ・れ・が、敵は簡単に仕留めてきたのよ。それも凄く手慣れた様子でね。まるでかつてそんな戦闘をやったことがあろうようだったわ」
「しかし、ジーマン国の戦車はそんな戦闘訓練をしていることは見たことがないと情報部は言っているぞ」
この情報部とは敵の軍を探るスパイのようなもので、敵の国に行きその軍隊の様子などを探っていた。
「ええ。そこが分からないのよ」
「この中で何か分かるものはいないか?」
その瞬間、勇者達の代表として会議に参加していた佐藤昌之が手を挙げた。
「少しその軍に関してよろしいでしょうか? 私は詳しくは知りませんが概要程度であれば分かりますので……」
「何と! どういうことなのだ!」
「あの軍は恐らく私のいた世界の昔の軍隊です。この軍を説明するには簡単に我が世界の歴史を説明する必要があります。私の世界ではかつて世界中を巻き込んだ大戦争がございました。それが二回起こっており、二回目の第二次世界大戦という戦争で登場したのがあの軍です。あの軍はナチスドイツという国の陸軍です。戦車を集中運用し、世界の大国と戦争をしていましたが数の力に屈し、敗れた軍です」
「この軍が良く行った戦車同士の戦闘の際には敵の戦車をいかに早く発見し撃破するかが鍵になったそうです。ですから敵と遭遇すれば敵の戦車の砲弾を交わしつつ戦闘を行う必要があるのです」
「そうか! そのような戦闘を行っていた軍だから敵は動きながらも少し停止をし、こちらの兵士に攻撃を命中させることができたのか!」
グレイが成る程と言った具合に頷く。
「では、その軍への対策はあるのですか?」
「ええ。先ほども述べたとおり、彼らの使っている戦車はエンジン部分が燃えやすいのが弱点です。ですからその部分を狙えば良いでしょう」
「しかし、それを動いているところを狙うのは至難の業だ。さらに言えば、停止している時間もわずかしか無いとなると攻撃を当てられるのは……」
「ならば、大規模魔法で一帯を吹き飛ばすしか対処するしかないでしょう。これならば、敵は逃げられません」
「大規模魔法は撃てる者が限られるし、その者が戦死すれば我が軍に計り知れないダメージが出る。その作戦は採用できない」
「では、他に策はありますか?」
「それは……」
「あるわよ」
一人だけ肯定する者がいた。それは次期参謀長と謳われるスーザンだった。
「策はあるわ」
「ほう。ではスーザン述べてみよ」
「はい。では……」
ケルンに促され、スーザンはある作戦を話し始めた。
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