魔法の世界で、砲が轟く
第三十五話 原因調査⑤
「何で、私がアンタの案内なんかしなくちゃなんないのさ!」
森の中を歩きながらコノミがぶつくさと文句を言っている。
案内されているのは、もちろん新庄である。
目的地は即応軍とみられる部隊が駐留していたとされる場所である。
森の中は北のまっすぐ4kmと言われてもそう簡単にたどり着けるものではない。道などがない場合、勘などもってのほかであるが、方位磁石を持っていても富士樹海のように磁鉄鉱が埋まっていて使い物にならない場合もあるから、土地勘のある人物をつけなければ危険である。
その土地勘のある人物として抜擢されたのがコノミである。
しかし、コノミは先日、新庄に向かって泣きながら罵倒をしたために二人の間には気まずい雰囲気が漂っていた。
「お前は黙って俺を現場まで案内しろ。それ以上でもそれ以下でもない。ただ、それだけを完遂しろ」
「はぁ!あんた、何勝手にシム爺と話進めて私に指示を出してんだよ!私は、まだアンタのことを許したわけじゃないし、仕事を請け負ったわけでもないぞ!」
コノミは半ギレしながら、怒鳴った。
「最悪、アンタのことをここに置いてけぼりにして帰ることもできるんだぞ!」
「そんなことをすれば、シム爺になんて言われるか分かっているのか?それに、それをしたらお前はお前を差別した奴らとやっていることは大して変わらなくなるぞ?この森に慣れない人間が一人残されたら、どうなるかは分かっているよな。分かっているのにやると言うことは人殺しと同じだ」
なかなか、論理の飛躍を感じるが、それに気づけるほどコノミは年を重ねていない。
新庄の大人気ない言い返しに黙るしかなかった。
「それに女性ならもっときれいな言葉遣いをしなさい」
「アンタに言われる筋合いはないね!」
言い合いをしつつ、新庄は先日の話を思い出していた。
「シム爺よ、取引をしないか?」
静かに新庄はそう言った。
「取引……?」
シム爺は何をするんだと言わんばかりに不思議そうに繰り返す。
「ああ、取引だ。私はこれでも軍人だ。人情で人を助けることは許されない。常に仕えている人のために動くことを求められる。故に、あなたたちが私たちに何かしらの利益になるような事をしてくれれば、我々もあなた方を助けることができるかもしれない」
そこまで、言い終えたときシム爺の目には光がともった。
「わしらを助けてくれるのか!」
「助けるのではない。取引だから、こちらもそれ相応の見返りを求める」
「金か?」
「違う。情報とあんたらの能力」
そう言ってから、家の庭側を指しつつ
「あの機械だ」
と言った。
「お主。まさか、あれを軍事兵器にしようとしているのではあるまいな!だったら否じゃ!」
シム爺はそう怒鳴った。
あれは人が幸せになれるように作った物で、断じて殺めるためのものではない。
そう言いたげだった。
「そうか。なら勝手にするが良い。そう言って、自分の面子のために彼女を犠牲にするが良い」
そう言い放ち、その場を去ろうとした。
すると、シム爺がドアの前で立ちはだかった。
「お主に人情というものはないのか!何とも思わんのか!」
「さっきも言ったように私は軍人であり、あなた方の家族でも何でもない。軍人は国のために動くのであって慈善団体ではないのだよ。心苦しいが、協力できないというのであれば、こちらから援助することは何もない」
「……」
淡々と正論を言う新庄にシム爺は、黙り込むしかできなかった。
「分かったら、そこをどいてくれ。私は暇な身ではない」
そう言って、通ろうとする新庄に静かにシム爺は言った。
「分かった。その条件を飲もう」
「……っ!…いっ!おいっ!」
コノミが怒鳴る声ではっと我に返った新庄の目の前にはちょっとした広場のような物が広がっていた。
「しっかりしろよ!調査に来てんだから、ぼおっとしてんじゃねえ!」
そう言いつつ、目の前の広場を指しながら話し始めた。
「ここがアンタの目的地だよ!」
「ここか……」
そこは明らかに人工的に作られた空間であった。
丸く広場は広がっており、全周はおよそ500mほどであろうか。
その周りはうっそうと木が生い茂っており、広間は元々木が生えていたのであろう。
斧のような物で切り倒されたときにできたと思われる切り株が数多く点在している。
「日が暮れるまでまだかなり時間がある。それまで調査をすると良い。終わったら声を掛けてくれ」
そう言って、コノミは木に登りちょうど良い大きさの枝を見つけるとその上で寝始めた。
落ちないものかと内心、冷や冷や見ていた新庄であるが、コノミの身体能力はかなり高いらしい。全く落ちる気配がない。
そこで、新庄は調査を開始することにした。
しばらくは外周を回って異常がないかを見てみたが特に何も見当たらなかった。
そこで、広場の内部を捜索することにした。
しばらく、地面を探していると、あちこちに人の足跡らしい物が点在しているのが分かる。それは、シム爺から聞いたように甲冑の靴底らしい先の尖ったブーツのような物であった。
それ以外の物がないものかと探していると、広間の中央付近で不思議な物を見つけた。
それはイヤリングのような物で豪華な装飾があしらっており、中央に剣に絡みつく蛇の彫刻が描いてある物であった。
新庄はこの紋章をどこかで見たことがあるような気がしていた。
どこで見たのであろうか。
それを思い出そうと躍起になっていると後ろからコノミの声がした。
「お~~い!まだ、終わらないのか!」
気付くと周りが大分薄暗くなっていた。
急いでコノミと一緒に森を抜けていった。
森の中を歩きながらコノミがぶつくさと文句を言っている。
案内されているのは、もちろん新庄である。
目的地は即応軍とみられる部隊が駐留していたとされる場所である。
森の中は北のまっすぐ4kmと言われてもそう簡単にたどり着けるものではない。道などがない場合、勘などもってのほかであるが、方位磁石を持っていても富士樹海のように磁鉄鉱が埋まっていて使い物にならない場合もあるから、土地勘のある人物をつけなければ危険である。
その土地勘のある人物として抜擢されたのがコノミである。
しかし、コノミは先日、新庄に向かって泣きながら罵倒をしたために二人の間には気まずい雰囲気が漂っていた。
「お前は黙って俺を現場まで案内しろ。それ以上でもそれ以下でもない。ただ、それだけを完遂しろ」
「はぁ!あんた、何勝手にシム爺と話進めて私に指示を出してんだよ!私は、まだアンタのことを許したわけじゃないし、仕事を請け負ったわけでもないぞ!」
コノミは半ギレしながら、怒鳴った。
「最悪、アンタのことをここに置いてけぼりにして帰ることもできるんだぞ!」
「そんなことをすれば、シム爺になんて言われるか分かっているのか?それに、それをしたらお前はお前を差別した奴らとやっていることは大して変わらなくなるぞ?この森に慣れない人間が一人残されたら、どうなるかは分かっているよな。分かっているのにやると言うことは人殺しと同じだ」
なかなか、論理の飛躍を感じるが、それに気づけるほどコノミは年を重ねていない。
新庄の大人気ない言い返しに黙るしかなかった。
「それに女性ならもっときれいな言葉遣いをしなさい」
「アンタに言われる筋合いはないね!」
言い合いをしつつ、新庄は先日の話を思い出していた。
「シム爺よ、取引をしないか?」
静かに新庄はそう言った。
「取引……?」
シム爺は何をするんだと言わんばかりに不思議そうに繰り返す。
「ああ、取引だ。私はこれでも軍人だ。人情で人を助けることは許されない。常に仕えている人のために動くことを求められる。故に、あなたたちが私たちに何かしらの利益になるような事をしてくれれば、我々もあなた方を助けることができるかもしれない」
そこまで、言い終えたときシム爺の目には光がともった。
「わしらを助けてくれるのか!」
「助けるのではない。取引だから、こちらもそれ相応の見返りを求める」
「金か?」
「違う。情報とあんたらの能力」
そう言ってから、家の庭側を指しつつ
「あの機械だ」
と言った。
「お主。まさか、あれを軍事兵器にしようとしているのではあるまいな!だったら否じゃ!」
シム爺はそう怒鳴った。
あれは人が幸せになれるように作った物で、断じて殺めるためのものではない。
そう言いたげだった。
「そうか。なら勝手にするが良い。そう言って、自分の面子のために彼女を犠牲にするが良い」
そう言い放ち、その場を去ろうとした。
すると、シム爺がドアの前で立ちはだかった。
「お主に人情というものはないのか!何とも思わんのか!」
「さっきも言ったように私は軍人であり、あなた方の家族でも何でもない。軍人は国のために動くのであって慈善団体ではないのだよ。心苦しいが、協力できないというのであれば、こちらから援助することは何もない」
「……」
淡々と正論を言う新庄にシム爺は、黙り込むしかできなかった。
「分かったら、そこをどいてくれ。私は暇な身ではない」
そう言って、通ろうとする新庄に静かにシム爺は言った。
「分かった。その条件を飲もう」
「……っ!…いっ!おいっ!」
コノミが怒鳴る声ではっと我に返った新庄の目の前にはちょっとした広場のような物が広がっていた。
「しっかりしろよ!調査に来てんだから、ぼおっとしてんじゃねえ!」
そう言いつつ、目の前の広場を指しながら話し始めた。
「ここがアンタの目的地だよ!」
「ここか……」
そこは明らかに人工的に作られた空間であった。
丸く広場は広がっており、全周はおよそ500mほどであろうか。
その周りはうっそうと木が生い茂っており、広間は元々木が生えていたのであろう。
斧のような物で切り倒されたときにできたと思われる切り株が数多く点在している。
「日が暮れるまでまだかなり時間がある。それまで調査をすると良い。終わったら声を掛けてくれ」
そう言って、コノミは木に登りちょうど良い大きさの枝を見つけるとその上で寝始めた。
落ちないものかと内心、冷や冷や見ていた新庄であるが、コノミの身体能力はかなり高いらしい。全く落ちる気配がない。
そこで、新庄は調査を開始することにした。
しばらくは外周を回って異常がないかを見てみたが特に何も見当たらなかった。
そこで、広場の内部を捜索することにした。
しばらく、地面を探していると、あちこちに人の足跡らしい物が点在しているのが分かる。それは、シム爺から聞いたように甲冑の靴底らしい先の尖ったブーツのような物であった。
それ以外の物がないものかと探していると、広間の中央付近で不思議な物を見つけた。
それはイヤリングのような物で豪華な装飾があしらっており、中央に剣に絡みつく蛇の彫刻が描いてある物であった。
新庄はこの紋章をどこかで見たことがあるような気がしていた。
どこで見たのであろうか。
それを思い出そうと躍起になっていると後ろからコノミの声がした。
「お~~い!まだ、終わらないのか!」
気付くと周りが大分薄暗くなっていた。
急いでコノミと一緒に森を抜けていった。
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