紫陽花の咲く庭で

ラテリ

夏合宿!-8-


朝が来た。
今日は帰る日。
途中で海岸によって、遊ぶらしい。
寝癖を直したりしてから朝食に向かう。
すでに切くんたちは来てた。

「あそこ座ろうか」

彩が指差したのは、切くんの隣。
都合よく空いてる。
あ、私が座るために空いてるのか!

「おはよ〜」
「おはよう!」

切くんはウキウキしてる。
たぶん、私が来たから。

「今日は海岸かー、切、勝負するか?」
「いいな、受けてたつ」

仁くんと切くんが泳ぎで勝負するらしい。
・・・切くん応援したら勝つかな?

「2人とも泳ぐのもうまいんだね」
「え?砂浜ダッシュじゃないの?」

そっち!?
そっか、陸上部だもんね。

「俺はどっちでもいいぜ。切が
泳げるか次第」
「泳げるって!でも、陸上部らしく
陸勝負でどう?」

頷く仁くん。
スポーツを見るのは好きだけど、
身体弱くてできないからなぁ。
ちょっと2人がうらやましい。

「がんばれ〜切くん」
「負けられないね、切」

私の応援を受けて、
早くも気合いを入れる切くん。
対して、仁くんは少しガッカリしてる。

「俺も応援されたいわー」
「じゃあ、真紀、どうぞ」

自分には関係なさそうに読書してた
真紀ちゃん。いきなり彩に振られる。

「また私ですか・・・!」

あ、昨日もこの展開あった。

「・・・頑張ってください」

すごい棒読み!
それでも、仁くんは嬉しそうに

「おう!」

と、返した。

その後、朝食も終わって部屋に戻る。
撤収準備!忘れ物がないようにしないと。
読みかけの本とか枕もとに
置いてないよね?

「咲、行くよ」
「え!?準備はやくない?」

彩の真紀ちゃんも、もう準備できてる。
・・・事前にやっておけばよかった!

「じゃ、待ってる。
そういえば、咲は水着、着るの?」
「き、着ないよ!?泳げないし」
「切先輩、残念」

来る前にそれ知ってれば
準備して・・・ないか。
結構高いし、それに・・・

「喜ぶかなぁ、私の水着姿で」

スタイルだって、自信ない。

「そりゃもう。鼻血だすくらい」

・・・切くんがどう見られてるか
わかるなぁ。

「ふ、2人はどうなの?」
「あたし?着ないよ。髪濡れたら
乾かすのめんどくさいし」
「日陰で読書しようかと・・・」

彩はともかく、真紀ちゃんは
予想通りの答えが返ってきた。

「いやー、見せてあげたかったなー、
咲の水着姿」
「も〜、切くんだって、そんな単純じゃ
ないでしょ」
「・・・単純な気がします」

そんな話をしてたら、帰りのバスが
出る時間になってた。
急いで外に出る。
バスに乗り込むとやっぱり、
切くんの隣は空いてた。
・・・ここまで徹底されてると、
2年生の連携が怖くなってくる。
みんなの期待に答えて、
切くんの隣に座り、バスは発進。
海岸に向かった。


思ってたよりも早く到着。
夏の海岸。といっても、人気の
海水浴場とかじゃないから、
人はあまりいない。

「よーし、切、早速、勝負といくか!」
「おし」

切くんたちは早速、
裸足になって戦闘モード。

「あっつ!」
「スタートとゴールどこにする?」

思ってたよりも、
砂浜が熱かったらしく、
切くんがちょっとバタバタしてる。
なんかかわいい。
それでも、すぐに慣れたみたいで、
準備運動を始めた。

「2人とも、あの辺なら日陰だから、
見物しやすいんじゃない?」
「さすさや!」
「読書、捗りそうです」

彩の指差した場所の上には、
道路があって、ちょうど日陰になってる。
コンクリートの大きな
ブロックによっかかる。
・・・日陰だからか砂は熱くない。
真紀ちゃんも座ると同時に本を開く。
・・・絵になるなぁ。読書娘。

「そこからここまでなー」
「おっけー」

仁くんがゴール地点らしいとこに
落ちてたらしい木の枝を立てた。
切くんの位置がスタートだとすると、
100メートルぐらい。

「これを先に取った方が勝ちだから!」
「よーし」

切くんはスタート地点らしいとこで
気合いを入れた。

「切くんがんばれ〜」

そう言うと、切くんはこっちを向いて、
よく分からないポーズを取った。
・・・喜んでるよね?

「じゃ、あたしが審判するから」
「頼む」

ゴール地点から戻ってきた仁くん。
すぐにスタートの構え。
切くんも同じ構え。
彩が落ちてた木の枝を拾って
上に掲げて・・・

「よーい・・・どん!」

思いっきり振り降ろした!
それと同時に走り出す2人。
砂浜ということもあってか、
2人とも苦戦してるように見える。
あ、わずかに切くんが
リードしてる気がする!
あと少し!2人とも飛び込んだ!
・・・切くんが勝った!

「おし!」
「くそー、足取られたな」

切くんが枝を掲げながら、こっちを向く。
小さく手を振ってあげると、
ガッツポーズした。嬉しいみたい。

「もう1回だ!」
「よーし、何度でもいいぞ」

切くんは木の枝を砂浜に立てて、
スタート地点に戻った。
その後、一進一退の攻防が
繰り広げられ、6勝4敗で切くんが
勝利した。2人とも疲れたのか、
倒れてぜーはーぜーはーしてる。

「はぁ、はぁ・・・俺の勝ちだな、仁」
「くっそ・・・来年もやるぞ!
今日はもう無理だ・・わ・・・」

きつそうだけど来年もやるんだ・・・。
・・・来年。
忘れてた・・・というより、
考えないようにしてたけど。

この夏合宿。
切くんの想いを知って。
反応が面白くて、嬉しくて、
いろいろしたけど。
そうだ。私は来年いないんだ。
切くんの想いを知っちゃっただけに、
悲しませたくない。
もしも。もしも、あの七夕の言葉。
今度切くんがちゃんと言えたとき。
私はどうすればいいんだろう。
なんて、言えばいいんだろう。

みんなが楽しそうにしてる中で、
私は急に孤独を感じた。

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