紫陽花の咲く庭で

ラテリ

夏合宿!-1-


切が惨敗した七夕から
数日立ったある日の昼休み。
あたしは悩んでた。
悩みはもちろん、切との約束。
誕生日という絶好の
告白チャンスを逃した切。
次はどのタイミングで
告白させる・・・か。

(もうすぐ夏休みだしなぁー)

そうなると、学校では会わなくなる。
夏休み中に何かイベントが
あるかといえば何にもない。
仁も誘って、みんなでプールでも?と
思ったけど、咲の身体的に運動系は
避けた方が良さそう。暑いし。

(ああはいったけど、どうしようかなぁ)

悩みながら机に手を置いて、腰かける。
置いた手に、紙の感触が伝わる。

(ん?)

机を見るとプリントが置いてあった。
何かと思って見てみると、そこには

「運動部夏合宿のお知らせ」

ああー、去年もやってた気がする。
・・・切ってこれ行くのかな。
お泊りイベントかぁ。
あ、肝試しとかやるって書いてある。
・・・乗るしかない。このイベントに。

あたしは丁度、
近くにいた仁に、声をかける。

「ひ・と・し!」
「ん?なんだ、彩か」
「これなんだけどさぁ。
文芸部も出ていい系?」

仁はあたしの持ってたプリントを
奪って内容をサラッと見たあと、

「あー。運動部って書いてあるけど、
ほとんど避暑旅行みたいなもんだから、
大丈夫じゃね?」
「ほんとに!?」
「一応、文芸部らしいことは
向こうでしといた方がいいかもな」

するする、と頷きながらプリントを
奪い返す。それがわかったなら
橋渡先生辺りに話をつけに行かなきゃ。
たしか、陸上部の顧問だったはず!
・・・あ。

「一応さ、確認だけど、切も来るよね?」

そういうと、仁は意図を
察してくれた感じで

「もち!」

と、グーサインを出した。

「サンキュー!」

と言いながら、あたしは教室を後にした。

さて、やることは3つ。
1つめは橋渡先生の許可を貰うこと。
文芸部は文化部だろうし。
2つめはあたしが
肝試しの実行委員的なものをやること。
これも橋渡先生に言おう。
3つめは咲たちを誘うこと。
これは放課後の部活の時に言えばいっか。

考えがまとまったところで、
早速、目の前にある
教職員スペースにいた
橋渡先生に突撃した。

「先生!これ!
文芸部も参加していいですか?」

単刀直入にプリントを突きつける。
橋渡先生はプリントを見ながら

「別に問題ないよー、おいでおいで」

と、軽いノリで答えた。

「やったー!
ついでにここに書いてある肝試し、
あたし、裏方してもいいですか!?」
「お!彩がやってくれるなら大歓迎!
怖くなりそうだ」

こっちも特に問題なく許可してもらった。

「文芸部で・・・ってことは、
咲を連れて行くんだろう?
最近、切とよく話してるから
上手くいくといいな!」
「あー、バレてましたか」

先生ももちろん、知ってる。
2人でニヤリと笑いながら、
あたしはどうやって
咲を誘おうか考えていた。
・・・それにしても、
ずいぶんあっさりと許可が取れたなぁ。
仁の言ってた避暑旅行ってのは
ほんとだったみたい。

放課後。文芸部の部室に入ると、
すでに2人がいた。

「さっきぶりー」
「遅かったね、彩。
あれ、そのプリントなに?」

あたしの手にあるプリントに気づく咲。
あたしはゴホンと咳をした。

「これはねー、
これから言う夏休みの計画!」
「え、何かやるの!?」

あれ、ひょっとして、
咲は都合が悪い・・・?
少しどきどきしながら2人に
プリントを渡す。

「運動部の夏合宿?」
「これに参加するんですか?・・・あっ」
「真紀ちゃん、あっ、てどうかした?」
「いえ、何でもないです」

真紀はなんとなく察した様だった。
まぁ、せっかくだし来てほしいけど、
最悪、真紀は来れなくても大丈夫。
問題は咲。

「先生の許可も取れてる。
仁いわく、避暑旅行みたいなものって
言ってたから行ってみない?」
「・・・行って何するの?
は、走ったり?」
「うーん、文芸部的には、
本読んで感想文書く辺りかなぁ」

許可はもらっているとはいえ、
一応、部としての活動はして
おかないとまずいだろし。

「ま、気分変えてさ。
ひょっとして都合悪い?」
「私は大丈夫です。
読書ができるならどこでも」
「私も大丈夫!この日程なら、
まだ始まってないから!」

始まってない?
・・・ああ、高校野球かぁ。
咲、観るの大好きだなぁ。
でも、真紀が
参加してくれるのは正直意外。
結構、内気な性格だと思うのに。
文芸部に馴染んできたのかな?
それとも、咲と切のことが
気になるのか・・・。

「じゃ、各自、必要事項とか書いて、
先生に渡しておいて。
話はこれでおしまい」
「はーい」
「はい」

話はまとまった。
さて、次は合宿中や肝試しで
咲と切をどうやって2人きりに
するか考えないと。

当日、切が驚く顔が目に浮かぶ。
ま、咲が切に話していなければだけど。
・・・それもそれで驚くか。
文芸部が運動部の
合宿に参加するんだから。


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