イクス✖ラグナ -いつでも突然、異世界Days!-

五百川 光

プロローグ

カーテンの隙間から陽が差し込む部屋にケータイのアラームが鳴り響く。その音に〝俺〟こと水凪 秋七みずなぎ あきなは布団の中でモゾモゾしながら、震えるそれに手を伸ばした。
いくら春とはいえ、朝方は少し肌寒い。小さく身震いをしつつも、ケータイの液晶へと視線を向かわせる。
まだ脳がハッキリしてないからか、目の前がボヤッとする。しかしいつまでもこうしているのも何なので、眠け眼をこすりながら画面に映し出されているデジタル時計を凝視した。
現在、8時03分をまわったところだ。その数字を見た瞬間、俺の頭は一気に覚醒した──。

「うぉぉぉぉぉ!!8時ってマジか!?ちょ!ヤバイ、遅刻する!!!」

昨日、夜遅くまで起きていたのが原因だろう。おかげで新学期が始まって、次の日からさっそくやらかしちまった!
これからは無遅刻、無欠席で通そうとしたのにもうその決意が潰えようとしている・・・・・・。

(だって見たいアニメあったし、ネット検索で情報をだな──って今はそうじゃねぇ!!セーフかアウトの瀬戸際だろうがーーーー!!とにかく急いで支度しねぇと!)

自分でも驚くほどの早さでハミガキ、着替えをこなしていく。こういう時の人間ってすごいよなー、どこにこんな力があったのか・・・・・・。
『俺はまだ本気出してないだけ』とかいうけどホントだな~。

「それはさておき、準備完了だ!あとはパンを片手に走り抜けるのみ!」

普通ならば起きると食卓に朝食が用意されていたりするのだが、残念ながら俺は一人暮らしだ。両親は仕事の関係で世界を飛び回っている。一応、妹もいるのだが全寮制の学校に通っているため帰ってくることはほとんどない。
まあ帰ってきたら、それはそれでうっとうしいのでいいのだが・・・・・・。

「よっしゃ鍵も閉めたし全速力だ!チャイムがなるまであと15分か・・・・・・ちとキツいかな?」

とにかく今は走るのみ!俺は風になるぜーーーーー!!!

そうして俺は学校へ向けて足を踏み出した。




◇◆◇◆◇◆◇




チャイムがなるまで、あと2分。
残りの体力を振り絞り、一気に階段を駆け上がる。自分のクラスは3階にあるため、普通に上がるのも地味に体力を消費する。
うむ、俺も年かな・・・・・・。もうこの階段がエスカレーターだったら最高なのに。
そんなことをいっててもどうにもならないので、滑り込みセーフのことだけに意識を集中する。

(よっしゃ、3階!もう自分のクラスは目の前だぜーーーー!!)

3階の踊り場へ到着し、すぐさま自分の教室のあるほうへと方向転換する。
もう目的地は目の前だ!最後の力を出しきり、クラスの入り口へと手を掛ける!

「よっしゃーーーー!!ぎりぎりセーーーーーーフ!!!」

そう叫びドアを思い切り開け放つ。

(到着!俺、よくやった!!)

やりきった感をだしながら回りに目をやるとそこには──

「へ?」

薄暗いうっそうとした森が目の前に広がっていた・・・・・・。

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