シルバーブラスト Rewrite Edition
4-2 久しぶりの里帰り 4
「モテモテだな。マーシャ」
「シデン。面白がってるだろう?」
「悪いか? あんたも俺の用務員姿を面白がるつもりなんだろう?」
「嫌ならトリスと引き離してPMCに放り込むけど?」
「ドSめ……」
「何か言ったか?」
「いいえ、何も」
ギロリと睨み付けてくるマーシャ。
とても逆らえそうにない雰囲気だった。
「しかしいいのか? あの二人を同じ環境に置いても。仲が悪いんだろう?」
「仲良くなって欲しいから同じ環境に置くんだよ。それにトリスにこの仕事は適任だし、ちびトリスにとっても普通の子供として過ごす時間は必要なんだ。お互いにとってここが最善だという意見は変わらないよ」
「それは俺も同感だが、二人のトリスに関しては問題が残るだろう?」
「それは私達がどうにか出来る問題じゃないからなぁ。それに、問題があるからこそ、向き合うべきだと思う」
「逃げるのは無しか?」
「逃げて楽になれる問題ならそれでもいいと思う」
「………………」
「でも、逃げたら余計に辛くなるだけの問題なら、今は辛くても向き合った方がいい。私はそう思うよ」
「……まあ、正論だな」
逃げるだけでは救われない。
トリスも、ちびトリスも、お互いに辛くなるだけだ。
だったら今は辛くてギスギスしていても、お互いが納得出来るまで向き合って、ぶつかりあった方が将来的にはいい関係を築けるだろう。
マーシャはそう考えている。
「まあそこまで心配はしていないけどな。私から見てもトリスとちびトリスは全然違うんだから。外見はとにかく、中身はあんまり似てないよ」
「そうなのか?」
「少なくともトリスはあんなに積極的じゃなかったからな」
「モテモテの件か。いつかレヴィに挑んだら面白いことになりそうだな」
「その前に可愛い女の子が見つかると思うけどな」
「それもそうか。見つからなかったとしても、レヴィには勝てない気がするけど」
「そうか? 戦闘機操縦なら無敵だが、対人格闘ならレヴィはそんなに強くないぞ」
「それは普通の対人格闘の場合だろう?」
「え?」
「もふもふがかかっていたら、レヴィは無敵だと思えるのは気のせいか?」
「………………」
気のせいではない。
根拠は無いのに確信は出来てしまうという、嫌な感じだった。
「もふもふのマーシャを奪い取られると分かったら、レヴィは絶対に負けないと思うな」
「……確かに」
「更に言うともふもふのちびトリスが挑んでも、もふもふへの執念から、レヴィは尻尾に触りまくって結果的に勝利してしまうような気がする」
「否定出来ない……」
勝負など関係無しに、ちびトリスが自分に突進してきたら、間違いなく攻撃だけ避けて尻尾を触りまくるだろう。
そして弱いところを撫でまくられて、ちびトリスの敗北。
結果が目に見えている。
しょーもない結果だが。
「まあその辺りのことはマーシャ達の問題だから、俺は高みの見物でもさせてもらうが」
「………………」
「あの二人、ちゃんといろいろと上手くいくといいな」
「上手く行くといいな、じゃないだろ」
「は?」
「お前もサポートするんだよ。その為に同じ環境で働かせるんだから」
「うぐ……。しかしトリスならまだしも、ちびトリスにはジジイ呼ばわりされたからなぁ。ちょっと嫌われているような気も……」
「ちびトリスは結構素直だからな。ちゃんと優しくしてやれば打ち解けてくれるさ」
「そうか?」
「私はそう思う」
「ならまあ、俺に出来る範囲でやってみるさ」
「よろしく」
荒んでいたトリスの表情は、子供達と接する内に和らいできている。
やはりここに連れてきて正解だった。
これならば、昔のトリスに戻ってくれるのもそう遠い話ではないだろう。
二人にとって新しい人生を始めるのには、いい場所だと確信出来た。
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