朝起きたら妹が魔王になってました
第23話「お祭りと踊りと魔女の果実」
村人の努力もあって、祭りの準備が無事整った。こちらの世界に来てからというもの、時間がイマイチ分からない生活を送ってきていたが、日は沈み、辺りは暗くなっていた。
王都からの観光客も多く、なかなか祭りの雰囲気がある。
「賑わってるなぁ、日本の祭りを思い出すな……ん? これ何だ?」
「えーっとこれは光魔法の一種なのです」
リージュ一帯に謎の光の玉がゆらゆらと浮かんでいる。どうやらこれが照明代わりになっているようだ。
「ねぇねぇ! お兄ちゃん! 出店もあるよ!」
「へぇ、マジで日本みたいだな」
すると気になる文字を見つけた。どことなく、強烈に既視感のあるワードだった。
「がぎ氷……こっちはチョコハナナ」
この世界は日本を参考にして作られてるんじゃないかと思うレベルだ。濁点付けたり取ったりしたらいいってもんじゃないだろ……
「お〜兄〜ちゃ〜ん〜。チョコハナナ食べたいなっ♡」
「いいぞ、俺はがぎ氷が気になるな…」
とりあえず買ってみたものの…
 
「チョコバナナだね」
「かき氷だな」
「お兄ちゃんのそれ何味なの?」
「スライム味」
スライムと聞くと、以前ダンジョンで鍵乃が焼き尽くしたモンスターを想像するが、実際あいつらは食べられるらしい。ちなみにソーダ味やイチゴ味など、色によって変わるそうだ。
「ユミス、楽しい?」
「うん、最っ高に楽しいよ、ありがとねっ!」
「そっか、なら良かった」
すると猛スピードで二人の大男がこちらに走ってきているのが見えた。しかもしきりに俺とユミスを呼んでいる。
「お二人共、早くしてください! 踊っていただくって言ったじゃないですか」
踊る? 初耳なんだけど。ユミスはどうやら知ってたっぽい。あれ、どうすんのこれ、俺踊れないけど。
「うおっ!?」
突然後ろに引っ張られ、転びそうになる。その瞬間、周囲の空気が変わった。
「おま、シャスティ、何でここにいるんだよ!」
「何でとは冷たいな。私だって祭りを楽しみたいじゃないか」
「あんだけ意味深な別れ方しといてここで会うのかよ、しかもまた謎結界の中に入れられてるし」
「まぁ、そう怒るでない。踊れないのだろう? 私が助けてあげようと思ってな」
「えっ、マジすか」
「マジ。ほら、後ろ向いて」
「俗語使えんのかよ……」
後ろを向くと背中に杖が当てられた。
「そなたに、女神の加護を」
「女神ってやっぱお前……神様だろ」
「加護があればいいなってことさ。まぁ、私のまじないはよく効くらしいからな」
そう言うと、シャスティは姿を消し、結界も消えていた。
「さぁ、行こっか燈矢」
「オッケー。なんか、今ならなんでもできる気がする」
用意されていたステージに上がり、二人で踊る。
「燈矢、大丈夫?」
「ちょっと裏ワザ使ったから大丈夫だ」
音楽が流れると、体が勝手に動いた。ユミスの動きを一切邪魔することなく、リードできている。
「燈矢すごいっ」
「すごいだろ〜」
すると踊りながらユミスが小声で囁いた。
「今回は私が下界に降りてきてるから踊っているのは私だけど、毎年、村一番の美少女が踊るんだって」
「相手の男は?」
「それがその……女の子が好きな男の子を指名するんだって」
なるほど、この村はユミスの乙女な部分を凝縮してるんだな。ロマンチックボンバーだな。
「それで俺と一緒に踊りたかったと」
無言で頷くユミス。こりゃ大抵の男はイチコロですな。マジでときめくもん。
「そろそろ曲も終わりだね。終わったら一緒に色々食べたり、遊んだりしよ?」
「あんまり食べると太るぞ」
「うるさいなぁ、今日は良いでしょ」
観客席には笑顔の鍵乃とふくれっ面のミクがいた。どちらもなんだかんだ幸せそうで、祭りを開いて本当に良かったと思う。
「そうだな、今日はめいっぱい楽しもうか」
踊り終わると、多くの拍手が聞こえてきた。ちょっとだけ恥ずかしかったが、達成感の方が強い。にしても、シャスティに感謝だな。
「おっ、見てくれたのか……」
遠くの方で、風になびく白銀の髪が見えた。
ーーーーーーー
「「「はい、あ〜ん」」」
「いや、一度に三人分は無理だから。俺口三つないから」
鍵乃からはチョコハナナ、ユミスからはがぎ氷、ミクは得体の知れない何かをもっていた。
「二人はともかく、ミクのそれは一体何なんだ」
「マンドラゴラですよ、一切れだけあげます。」
マンドラゴラは前にリューズと一緒に採りに行って、デビルウルフに殺されかけた時のやつか。確か気が狂うほど美味いとか。
「ミク、それくれ」
「あ〜ん、なのです」
これはヤバイ。食感はリンゴ? に近いのかもしれないが、味がヤバイ。形容しがたいほど甘味、爽やかさ、濃厚さ、どれをとっても他の果物では味わえない感覚が、舌の上で暴れている。
「一切れでこれは……確かに気が狂うな」
「あーむっ」
「お前、また一口で食いやがったな」
「あぁ〜全身がとろけそうなのです。はふぅ……」
脱力しきった顔はだらしなく、まさに魔女の果実と言うべきか。
「あ、二人もあ〜ん」
「「あ〜ん」」
「うん、チョコバナナとかき氷って合わねぇわ」
二度と一緒に食べないと、心に刻んだ。
王都からの観光客も多く、なかなか祭りの雰囲気がある。
「賑わってるなぁ、日本の祭りを思い出すな……ん? これ何だ?」
「えーっとこれは光魔法の一種なのです」
リージュ一帯に謎の光の玉がゆらゆらと浮かんでいる。どうやらこれが照明代わりになっているようだ。
「ねぇねぇ! お兄ちゃん! 出店もあるよ!」
「へぇ、マジで日本みたいだな」
すると気になる文字を見つけた。どことなく、強烈に既視感のあるワードだった。
「がぎ氷……こっちはチョコハナナ」
この世界は日本を参考にして作られてるんじゃないかと思うレベルだ。濁点付けたり取ったりしたらいいってもんじゃないだろ……
「お〜兄〜ちゃ〜ん〜。チョコハナナ食べたいなっ♡」
「いいぞ、俺はがぎ氷が気になるな…」
とりあえず買ってみたものの…
 
「チョコバナナだね」
「かき氷だな」
「お兄ちゃんのそれ何味なの?」
「スライム味」
スライムと聞くと、以前ダンジョンで鍵乃が焼き尽くしたモンスターを想像するが、実際あいつらは食べられるらしい。ちなみにソーダ味やイチゴ味など、色によって変わるそうだ。
「ユミス、楽しい?」
「うん、最っ高に楽しいよ、ありがとねっ!」
「そっか、なら良かった」
すると猛スピードで二人の大男がこちらに走ってきているのが見えた。しかもしきりに俺とユミスを呼んでいる。
「お二人共、早くしてください! 踊っていただくって言ったじゃないですか」
踊る? 初耳なんだけど。ユミスはどうやら知ってたっぽい。あれ、どうすんのこれ、俺踊れないけど。
「うおっ!?」
突然後ろに引っ張られ、転びそうになる。その瞬間、周囲の空気が変わった。
「おま、シャスティ、何でここにいるんだよ!」
「何でとは冷たいな。私だって祭りを楽しみたいじゃないか」
「あんだけ意味深な別れ方しといてここで会うのかよ、しかもまた謎結界の中に入れられてるし」
「まぁ、そう怒るでない。踊れないのだろう? 私が助けてあげようと思ってな」
「えっ、マジすか」
「マジ。ほら、後ろ向いて」
「俗語使えんのかよ……」
後ろを向くと背中に杖が当てられた。
「そなたに、女神の加護を」
「女神ってやっぱお前……神様だろ」
「加護があればいいなってことさ。まぁ、私のまじないはよく効くらしいからな」
そう言うと、シャスティは姿を消し、結界も消えていた。
「さぁ、行こっか燈矢」
「オッケー。なんか、今ならなんでもできる気がする」
用意されていたステージに上がり、二人で踊る。
「燈矢、大丈夫?」
「ちょっと裏ワザ使ったから大丈夫だ」
音楽が流れると、体が勝手に動いた。ユミスの動きを一切邪魔することなく、リードできている。
「燈矢すごいっ」
「すごいだろ〜」
すると踊りながらユミスが小声で囁いた。
「今回は私が下界に降りてきてるから踊っているのは私だけど、毎年、村一番の美少女が踊るんだって」
「相手の男は?」
「それがその……女の子が好きな男の子を指名するんだって」
なるほど、この村はユミスの乙女な部分を凝縮してるんだな。ロマンチックボンバーだな。
「それで俺と一緒に踊りたかったと」
無言で頷くユミス。こりゃ大抵の男はイチコロですな。マジでときめくもん。
「そろそろ曲も終わりだね。終わったら一緒に色々食べたり、遊んだりしよ?」
「あんまり食べると太るぞ」
「うるさいなぁ、今日は良いでしょ」
観客席には笑顔の鍵乃とふくれっ面のミクがいた。どちらもなんだかんだ幸せそうで、祭りを開いて本当に良かったと思う。
「そうだな、今日はめいっぱい楽しもうか」
踊り終わると、多くの拍手が聞こえてきた。ちょっとだけ恥ずかしかったが、達成感の方が強い。にしても、シャスティに感謝だな。
「おっ、見てくれたのか……」
遠くの方で、風になびく白銀の髪が見えた。
ーーーーーーー
「「「はい、あ〜ん」」」
「いや、一度に三人分は無理だから。俺口三つないから」
鍵乃からはチョコハナナ、ユミスからはがぎ氷、ミクは得体の知れない何かをもっていた。
「二人はともかく、ミクのそれは一体何なんだ」
「マンドラゴラですよ、一切れだけあげます。」
マンドラゴラは前にリューズと一緒に採りに行って、デビルウルフに殺されかけた時のやつか。確か気が狂うほど美味いとか。
「ミク、それくれ」
「あ〜ん、なのです」
これはヤバイ。食感はリンゴ? に近いのかもしれないが、味がヤバイ。形容しがたいほど甘味、爽やかさ、濃厚さ、どれをとっても他の果物では味わえない感覚が、舌の上で暴れている。
「一切れでこれは……確かに気が狂うな」
「あーむっ」
「お前、また一口で食いやがったな」
「あぁ〜全身がとろけそうなのです。はふぅ……」
脱力しきった顔はだらしなく、まさに魔女の果実と言うべきか。
「あ、二人もあ〜ん」
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