朝起きたら妹が魔王になってました

猫撫こえ

第12話「生きる運命」

「今日も晴天!!! どうかなにも起こりませんように!」


 今日は買い出しとお金を取りに行くついでに冒険者ギルドに立ち寄ってみようかと思っている。


「なにかあっても私が倒してやるのです」


 ミクが部屋の外から安心する言葉をかけてくれる。待って、これってもしかして…


(鍵乃を守ってる俺がミクに守られるのか…)


「俺いらねぇじゃん!!!」


 着替えを済ませ、朝食を食べる。


「今日は冒険者ギルドに行ってみようかと思うんだ」


「街で指名手配されてないといいけどね」


「それフラグだから」


 手早く朝食を済ませ、街に繰り出す。というかここまで馬車で来たのに、街までは徒歩で歩かなければならないのが少し辛い。引きこもりだったし。


「じゃあ今日は先にギルドに行ってみるか」


「ダンジョンとかモンスターとかいるのかな?」


「いるのですよ。むしろいない方がおかしいのです」


 ちょっとワクワクしてたのに…なんだろうこのネタバレされた気分は。


「さぁ、さっさと歩くのです。こんなのでへばってちゃモンスターなんて到底倒せないのですよ」


「へばってねぇよ! てか、お前微妙に浮いてんじゃねぇか!!」


「チッ、バレましたか」


「浮いてる方が疲れるんじゃないのか?」


「一般人なら魔力切れで疲れるのですが、神の魔力は無限に供給されるのです。でも、そのかわりに使える魔法は限られるのです」


 コイツは何が使えるんだろう。最近大活躍だけど実際死神ってことしか知らないし。死神にしては真っ白だけど。


 ーーーーー
 ーーーー
 ーー


「疲れた。とっても疲れた。ミク、おぶってくれ」


「鍵乃ちゃんに見られてもいいのですか? それに、そろそろ着くのですよ」


「あっ、見えてきたよ! クソザコお兄ちゃん!」 


「クソザコ言わないでくれよ…」


 街の広場が見える。とても賑わっていて、踊る人、歌っている人や、曲芸師などみんな楽しそうにしている。


「来たけど、ギルドってどこだろ」


「神様サーチしてやるのです、ピピッ見えました! こっちなのです」


「すげぇなそれ」


 ミクに着いていくとそこは果物屋さんだった。


「神様サーチの精度悪すぎないか」


「私はフトウが食べたいのです」


「フトウってなんだよ」


 ミクはおもむろに沢山の丸い果実が房になっている緑色の果物を持ち上げた。


「ブドウじゃん…」
「ブドウだね」


 よく見るとリンコ、ハナナ、ハイナッフル、オレンシ、ナシ。


「ナシはそのままなんだ…」


「買ってください。お願いします。燈矢さま。」


「いや、買ってやるけどさ…異世界って案外適当なのかもな。おじさん、これひとつ下さい」


「あいよ!」


 フトウを手に入れ、嬉しそうにしているミク。


「あーん。んぐんぐ。おいしかったのです」


「……お前今どうやって食ったんだ」


 ミクは一口で茎を残し完食した。普通ブドウって一個ずつ食べるんじゃないの? 俺の食べ方が間違ってたのか? 顎外れてないのか?


「俺も食べたかったんだけど…」
「私も…」


 しょうがないのでもう一つ買うことにする。


「おじさんフトウもうひとつ下さい」
「あのお嬢ちゃん、今一口で食べなかったか?」


 困惑してらっしゃる。よかった、俺の食べ方間違ってなかった。


「いやぁ~、食欲旺盛なんですよ…ハハ」


 俺と鍵乃はフトウを一粒口に放り込む。


「うん、ブドウだな」
「そこそこ美味しいブドウだね」


 ミクが食べたそうにしていたので一粒ずつ投げてみる。


「…ほれ」


「あむっ」


「ほいっ」
「ぱくっ」
「そいやっ」
「ぱくっ」


 どこに投げても必ず口でキャッチしている。その姿はまるで犬のようだ。


「もうこれやるよ」


「嬉しいのです。さすがは燈矢くん。あむっ。わらひのあるひににゃるおほこはほへふ」


「食べながら喋るな!」


 おっと、当初の目的を忘れかけていた。冒険者ギルドを探していたんだった


「おじさん、この街に冒険者ギルドってある?」


「君たち冒険者なのかい? ギルドならリシア像の前にあるよ。リシア像は広場を右に曲がってそのまままっすぐさ。頑張ってね!」


「ありがとうございます!」


 正直、お金には困ってないし冒険やクエストをこなす必要もあまり無いのだが…やっぱり異世界来たら冒険したくなるじゃん。少なからず憧れあるじゃん。


 この街では指名手配などはされていないみたいだ。それも時間の問題かも知れないが。王国は一体なにをしているんだ?


ーーー


「ここが冒険者ギルドか…」


「早く入ろうよ! 私可愛い装備とか欲しい!」


「装備はちゃんと武器屋とかあるだろ」


「へ? そういうものなの?」


 下らない話をしながらギルドの扉を開ける。


「お、おじゃましまーす」


 中には屈強な男達やエルフ、魔導士のお姉さんなど強そうな人が沢山いた。


「なんだ? お前ら、ここはガキの来る場所じゃねえよ! さっさと帰れ」


 屈強な男Aが話しかけてきた。かなり高圧的で苛立ってるようにも見える。


「いや、俺たち冒険者になりたくて来たんですよ」


「うるせぇ! ならこれに耐えてみろよ!」


 ものすごい速さでグーパンチが飛んでくる。だが今の俺は恐れを知らない。


「…守護バルゴ


「硬ってえええ!!! なんだよそれ! 俺の拳が守護バルゴなんかに負けるわけがねえ!」


 そう、守護バルゴとは最下級の防御魔法である。昨日ミクにこっそり教えて貰っていたのだ。ただの守護バルゴならば破られていることだろう、だが使用者が俺である以上簡単な攻撃はすべて弾くことができる。


「そこ、通してもらっていいですか?」


「クソッ…勝手にしろ」


 俺たちはギルドカウンターへ行き、パーティ登録をすることにした。


「あの、すいません。俺たち冒険者になりたいんですけど」


「パーティ登録ですか? ならここにパーティメンバーの名前、使える魔法などを書いてください」


「意外と事務的なんですね。もっと自由なのかと思ってた」


「まぁ、決まりですから」


 氏名
【弓形燈矢】


 使える魔法
守護バルゴ
聖煌矢レイストラヴァル


 使い魔
【ミクトランテクトリ】


 氏名
【弓形鍵乃】


 使える魔法
【いっぱい】


 鍵乃の魔法はミクによると沢山あるらしいからこれでいいだろう。


「これでお願いします」


「はい、確かに受け取りました。これは固有魔法ですか? 今まで見たことがない魔法ですね。あと鍵乃さんの魔法の欄…これなんですか?」


「いっぱいです」


「わからないんですか?」


「いえ、俺の使い魔によるとこの紙じゃ書ききれないほどあるそうです」


「はぁ…こちらがギルドカードになります。新しい魔法や、クエストの記録、討伐報酬などはこれに全て記録されますので、くれぐれも無くさないようにしてくださいね」


「早速クエストを受けたいんですけど、簡単なやつありませんか?」


「なら、ダンジョン採取ツアーなんてどうでしょうか」


「簡単そうないい響きですね。じゃあそれで」


「それでは、契約金の五十リシアを頂きます。ダンジョンまでは竜車をお使い下さい。それでは良い冒険を」


 五十リシアを支払い、俺はダンジョンという響きに心を震わせていた。


「よっしゃー! さぁ、冒険だ!」
「どんなのが採れるのかな?」
「食べられるものがいいのです」


 ーーーーー


「ベリアル様。魔王と勇者を見つけました。奴ら、ダンジョンに行くそうです。」


「ーーダンジョンか、そいつはいいですねぇ。勇者…楽しい楽しい冒険にしてあげましょう!!…ーー」


 ーーーーー


「竜車の中にはピッケルと大きな袋と松明か。まさしく採取ツアーだな。時間経ったらチケットとか送られてくるのかな」


「お兄ちゃん! ダンジョンってアレのことだよね! 大きいね!」


 鍵乃が指をさす方向を見ると、一つの塔がそびえ立っていた。その塔は高く、雲の上まであるようだ。


「すげぇな…」


 近くに行くとその凄さがよく分かる。塔の形は上に行くほど広がっていて壁には茨の様なものが巻きついている。とてもじゃないが外側から登れない。上層の空にはドラゴンが数匹飛んでいる。


 俺はクエスト内容を読んでみることにした。ギルドカードってめっちゃ便利だな。


「なになに…? 採取ツアーは三層までの探索が認められています。思わぬ掘り出し物が見つかるかも! だそうだ。」


「なんでもいいから見つかればいいなっ」


 俺たちはピッケルを担ぎ、ダンジョンの中に入った。第一階層はモンスターとか出ないんだろうか。


「ゲコッ、ぐじゅるるる」
「くきゅるるる、ゲコッ」
「ゲコッ、じゅるる」


「おっ、モンスターじゃねえか! ってカエル…? 無理無理無理無理無理!!!! 助けて鍵乃、ホンット無理。虫とかスライムは大丈夫だけどカエルだけは無理」


 俺は小さい頃に巨大なカエルに食べられる夢を見て以降トラウマで小さなカエルですら触ることが出来なくなってしまったのだ。しかもこのカエル型モンスター。空気清浄機と同じくらいの大きさだ。食べられちゃうじゃん!!


「カエルだぁ…可愛い!」


「ペッ」
「ペッ」
「ペッ」


 近づいた鍵乃にカエルの口から一斉に粘液が飛ばされる。俺なら失神してるだろう。しかもちょっと生臭い。


「燃えろ、爆炎イフリート


 カエルが紅くなる。内側から燃やし尽くされてるのだろう。


 鍵乃さんキレてる?もしかしてベトベトにされてキレてらっしゃる?


「最悪…生臭い女の子とか、誰が得するのよ!!」


「鍵乃、もうちょっと離れてくれ」


「うぅっ… お兄ちゃんのバカ! ポンコツ! 意気地無し!」


「いやー、カエル臭いのはちょっと…」


「うわあぁぁぁぁん!!」


 鍵乃がダッシュで二層まで上がる。めちゃくちゃ速い。世界記録取れるんじゃないのかってくらい速い。


「あっ、待てって!」


「燈矢くん、ここに武器が埋まってるのです。掘るのです」


「お前今日犬なの? ここほれわんわんって言ってみろ」


「ここほれわんわん、なのですよ」


 低階層のモンスターならまだ鍵乃一人でも大丈夫だろう。採取ツアーだし、たっぷり持って帰らないとな。


 ーーーーーー


「女の子…? ねぇ、君! どうしたの?」


「転んじゃって足をけがしちゃったの…」


「お姉ちゃんに見せてみて」


「うん、ありがとう『鍵乃』お姉ちゃん」


「えっ…?」


 ーーーーーー


「よし、そろそろ二層に行くか、鍵乃も待ってるだろうし」


「この剣、カッコいいのです」


「それ折れてんじゃん」


 他愛ない話をしながら二層に上がる。少し鍵乃を待たせてしまったな。


「もう! 遅いよ兄さん!」


「あぁ、ごめ… お前、誰だ?」


 そこに居たのは鍵乃だ、だが違和感を感じる。そもそも生まれてから一度も鍵乃に『兄さん』なんて呼ばれたことがない。


「何言ってるの兄さん? 私の名前忘れちゃったの?」


「俺の知ってる鍵乃は俺のことを『兄さん』とは呼ばないぞ」


 鍵乃もどきの顔が歪む。


 姿を現したのは頭に大きな角の生えた男だった。


「せーいかーい! すごいですねぇ! すぐバレちゃったぁぁ」


「鍵乃はどこにいる」


「鍵乃? あぁコレのことですか」


 男の後ろには腹を剣で突き刺された鍵乃の姿があった。


「鍵乃!!!」


「お兄…ちゃん、わた、し…ごめん…ね…」


「喋るな!!」


「あら、妹さんでしたかぁぁ! これは失礼。突然話しかけられたものですから、つい刺しちゃいましたぁ! まさか魔王にこんな所で出くわすとは思いもしなかったものですから」


 コイツ…かなり狂ってやがる。笑ってこんなことが出来るのか。王国はこんなヤツがいるってのか。


「大丈…夫。わた、しは…死なない…から…」


「あ? うるせぇよ、黙ってろゴミが。拘束バインド」 


「あっ…がっ…」


 鍵乃が固まる。言葉も発せず、苦しそうにしている。


「貴様ぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


 激情した俺の前にミクが立つ。その視線は氷のように冷たく、死の匂いを漂わせていた。


「ミク、どけ。俺はコイツを…」


「我が名はミクトランテクトリ。早く鍵乃ちゃんを返してもらおうか」


「申し遅れました、私の名前はベリアル。偽りの悪魔です。 それにしても死神の使い魔とは! 傑作ですねぇ! 人の命を奪う死神が、人に仕えるなんて」


「黙れ外道、殺すぞ」


「ひいっ、怖い。今まで何人殺してきたんですかぁぁ? 百人? 千人? もっとですかぁ? 何の罪もない人の命を奪っている死神が僕のことを悪く言えるんですかぁ? それに私はまだこのゴミを殺してないですよぉ?」


 ーーーーーー


「リシア様、私は何故人の命を奪わなければいけないのですか?」


「ミクトランテクトリ、それは貴女が死神だからです。それが貴女の生きる意味、存在する意味なのです」


「生きる…意味…」


 ーーーーーー


「何人殺してきたっていいだろう、それが私の生きる意味なのだから」


「生きる意味ですか、簡単でとっても良い言い訳ですねぇ。ハハッ、虚偽ベリアルアイ


 黒い魔法陣が現れる。それはとても異質で、底なし沼の様な恐怖を感じる。


「あぁっ! 貴女、とってもとっても絶望を溜め込んでいますねぇぇ。最高ですぅぅ…なになに? なんと! 貴女はこれまでに五千七百三十二万四千十二人の尊い命を奪ってきたのですね、あぁ、なんとむごい…」


「うるさい」


「赤子から老人まで、容赦ないですねぇ…」


「うるさいっ!! 私は死神だ、死神が命を奪って何が悪い!」


「アハハハハハハハッ! ヒィーッ! ハハハッ! ハァ……貴女も私達と同じじゃないですか。人を殺すことしか頭に無い。流石死神、生きる為に殺すなんて、尊敬しますよぉぉっ」


 ミクが黙る。その瞳には涙を浮かべ、拳は強く握られている。


 久しぶりに異世界に失望した。守るって誓ったばっかりなのに、このザマだ。だけど


「黙れクソ悪魔。お前にミクの何が分かるって言うんだ。そんな薄っぺらい言葉並べて分かった気になってんじゃねぇよ」


「いきなりなんなんですかぁぁ? 正義のヒーロー気取りですかぁ?」


「まず、ミクは人を殺したいとは思っていない。そう思ってるならとっくの昔に俺は死んでる。でもミクは人を殺さなきゃ生きていられないんだ」


「うるさいですねぇ… 殺しますよ?」


「やってみろよ雑魚が。ミクは可愛くて、無邪気でとっても素直ないい子だ。使い魔としても優秀だしこれからも生きてもらわなくちゃ困る。」


 ベリアルの周りの空間が歪む。黒い瘴気を放ち、魔法陣が幾つも創られる。


「嘘には死を、悪徳に輝きを、虚偽を、偽りに悦びを。天に罰を与えよ。我が名はベリアル。閉ざせ、虚飾ヴァニト審判トライヴニル


 俺を黒い箱が包む。闇は心を捻じ曲げ、壊そうとしてくる。


「来い、アイギス」


 頭に流れ込んできた名を呼ぶ。
 俺の前に盾が現れる。その光は煌めいていてとても眩しい。


 瞬間、ベリアルの魔法が一瞬で剥がれ落ちる。辺りは光で満たされ、物体と影の境界線が消える。


「…だから、だからこそ、ミクには俺を殺してもらわないといけないんだ!!!!」


「馬鹿なっ…こんなの…嘘だぁっ!!」


「嘘つきはお前だろ、クソ悪魔。 聖煌矢レイストラヴァル


 幾重にも重なる光の矢がベリアルの体を貫く。


「ぐうっ…この程度の光で、俺が死ぬかぁぁぁぁぁぁあっ!!! んなっ!?」


 ベリアルの眼前にはミクの姿が。


「ベリアル、私の主に手を出した罪を虚無の中で償いなさい」


 ミクがベリアルに手をかざす。その手からは何も感じない。あるのはただの虚無である。


「虚無よ、生と死を別つ境界よ、今汝を解き放ち、存在を与えよう、偽りを超越し、消えろ。 虚無エンプティネスとのデス


「クソがっ!!! 俺が、こんな所でっ!!」


 ベリアルは真っ白な棺桶に閉じ込められ、その存在を消された。棺桶は光の粒となり、誰の目にも触れられない虚無へと誘われた。


「鍵乃っ!!!」


「お、兄ちゃ…ん」


「くそっ、どうすればいい!?」


 死なないとは分かっているものの、これ以上苦しがっている鍵乃を見ていられない。


「ユミスなら、鍵乃ちゃんを救えるのです」


「ユミスさんが? すぐに行こう」


 俺は夢中で鍵乃を抱え、竜車まで戻った。幸い、ダンジョンはリージュの村に近い所にある。


「待ってろ、鍵乃。すぐに助けてやる」


「う…ん…」


 予想より早くリージュに着いた。竜が心を読んでくれたのだろう。


「ユミスさん!!!」


 リンド家のドアを叩き、ユミスさんを呼ぶ。


「はいは~い、どうしたの? って鍵乃ちゃん!?」


「鍵乃を助けて下さい!! お願いします!」


 剣を引き抜いたその傷口はただの刺し傷ではなく、抉られていた。おそらく、刺された後にもっと痛めつけられていたのだ。


「ごめん、鍵乃…っ」


「天よ、私に力を。セレスティア治癒ヒール


 みるみるうちに傷が塞がっていく。青白い肌も血色が戻り、表情も落ち着きを取り戻した。


「お兄ちゃん…ごめんなさい。 私が一人で先に行っちゃったから、こんなことに…」


「すぐに追いかけなかった俺が悪いよ、守るって誓ったのに…」


「でも、お兄ちゃんは助けてくれた。これからは私も勝手なことしない。ずっとお兄ちゃんの傍にいるよ」


「鍵乃…もう、もう二度とお前を傷つけさせない。お前が笑っていられるように俺が護る」


 俺は鍵乃を抱きしめながら、深く、深く胸に誓った。


 ーーーーーー
 ーーーー
 ーー


「燈矢くん、ちょっといいですか?」


「ミクか、なんだ?」


 寝ようとしていた時にミクが突然やって来た。


「さっき、殺してもらわないと困るって…」


「あぁ、あれか。ミクには俺を殺してもらうよ」




「俺の寿命が尽きる直前にね」




「寿命…? ふっ…それじゃあ仕方ないですね。燈矢くんは私が責任をもって殺してあげましょう」


「任せたぞ。ふあぁ…お前も早く寝ろよ、おやすみ。」


 命を奪ってもらう約束をした。


 俺の頼りになる相棒に。


「あっ! 買い物するの忘れてた!!!」

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