朝起きたら妹が魔王になってました
第9話 「感謝の気持ち」
お隣さんと物騒な約束を交わし、楽しく夕食をとっていた時。ドアをめちゃくちゃに叩く音が聞こえる。
「助けて助けてーっ!!! お願い! 」
ユミスさんだった。
「あ、今留守なんであとからにしてもらってもいいですか?」
「留守か…っているじゃないの!」
「はいはい、なんですかーっと」
扉を開けると泣きじゃくっているユミスさんがいた。
「あの家おかしいのよ! しょ、植物を食べてるのよ!!」
「あ、なら俺の家でご飯食べていきますか?」
「え、ホント?」
ユミスさんをテーブルに案内する。ちなみに今日のメニューはサラダ、野菜炒め、ロールキャベツの再現レシピだ。
「うひゅうぅぅ…」
ユミスさんが白目を向いてぶっ倒れた。さすがにやりすぎたと反省。ソファに寝かせておく。
こうしてみるとさすが神様、めちゃくちゃ肌綺麗だ。ふとももの辺りをまじまじと見ていると尾てい骨に衝撃が走る。
「見すぎなのです」
「お、おう、すまん」
「弓形さーん! ユミス様が来てないですか?」
外から声が聞こえる。迎えに来たみたいだ。
「あ、ユミスさんならここで寝てますよ。というかそもそもなんで家出を?」
「それが、夕食に出たサラダを見た途端に顔色が変わって家を飛び出したんですよ」
「俺の家でもサラダとか見た瞬間に倒れましたね」
なんにせよ、ユミス様が起きないことには話が進まない。どうにかして起こせないものだろうか。
「ユミスさん生きてますかー? 起きないといろんなことしちゃうぞぉー! いいのかなぁぁ?」
(起きない。え、しちゃっていいんですか。これ御褒美とかですか。)
「え、いろんなことしちゃっていいんですか? とか考えてる顔してるよ?」
「心読むなよ」
妹に心を読まれすごく恥ずかしい。だがしかし、俺は今とてつもなく良い案を考えた。
「なぁ、ちり紙とってくれ」
ちり紙を使うとなればすることは一つしかない。そう、こよりを作るのである。俺は手早く先を尖らせ、こよりを装備し、そのまま右手をユミスさんの鼻穴に近づける。
「っ…くしゅん! ふぁ!?なになになに!?」
「起きましたかユミスさん。あなたに聞きたいことがあります」
「え、突然なんなのよ」
「なんで野菜食べられないんですか?」
どストレートに聞いてやった。そんな大したことじゃないだろうし。
「野菜を…食べる?」
頭がついていかないのか場に沈黙が訪れる。
「はぁぁぁあ!? 野菜を食べるですって? あの子達はみんな私の子供みたいなものなのよ? そんなの…そんなの食べられるわけないじゃない!!!」
俺は話を聞きながらサラダを目の前で貪る。
「あー美味しい」
「あ…あ…」
「あのねユミスさん、この世は弱肉強食とも言いますし、弱いものが強いものに食べられるのは自然の摂理なんですよ」
「でも、そんなのひどい!! かわいそうじゃない!」
「少なくとも僕は食べて、食べられる覚悟を持っています。だからこそこうして野菜を食べられることに感謝しているんですよ。お前のおかげで今日も元気に生きてますよって伝えたいくらいに。」
「それでも命を奪っていることには変わりない!」
髪の毛が揺らぐ。地面が震えているようにも感じる。
「違う! なんでこんなに喋っても分からないんだよ! 俺たちは命を奪っているんじゃない、貰っているんだ。ここにある植物はみんなもう死んでる。だけど、僕たちに食べられて人の役に立つことこそが親孝行だと思いますよ」
こんなの屁理屈でしかない。恩の押し売りだ。だがあながち間違っているわけでもない。日々食べ物に感謝するのは当然のことなのだから。
「口、開けてください。お願いします。」
「嫌だ!」
「昔の鍵乃かよ! ほら、早く!」
俺はユミスさんを押し倒す。口に手を当て無理やり野菜を押し込む。
「んむっ……お、美味しいっ」
初めて食べたかのようなリアクションの裏には涙さえ浮かんでるように見える。
「どうですか? 美味しいでしょう?」
これで落ち着いてくれると嬉しい。最悪バトルまで見えてたからな。なんだろうこの好き嫌いの究極系みたいなケンカは。
「ごめんね、ごめん。今まで私何もわかってなかった。すごいねみんな」
盛り付けられた野菜に話しかける女の子は傍から見ればとてもシュールだが、本人にとっては大事なことなのだ。
そういえば、あまり皆のこと知らないんだよな。
好きなものとか嫌いなもの。
年齢とか、ティアードさんに至ってはアレで年上だし。神様ってめちゃくちゃ生きてたりするんだろうか。
「あ、全然関係ない話するけどユミスさんって何歳なんだ?」
「え? 今は十四歳だよ」
「はぇ?」
「十四歳だよ」
「でも、ずっと前からユミスさんっているんじゃないの?」
「神様は百年に一度生まれ変わるんだよ。だから今は十四歳。生まれ変わると昔の記憶もなくなっちゃうんだけどね」
「年下だったのかよ!!!」
身体とてもそうは見えないけど。
「ミクは何歳なんだ?」
「私も十四歳なのです。神族は皆リシア様によって生み出されたので同い年なのですよ。」
「鍵乃と同じじゃねぇか、お前らどこまで似れば気が済むんだよ… ミク、お前髪伸ばせ。その方が多分似合うよ」
「燈矢くんがそう言うなら地の果てまで伸ばしてやるのです」
「重いわ。せめて腰位にしてくれ」
ミクってヤンデレ属性ついてるのかな?時々怖い。
「ねぇお兄ちゃん! 私は?」
「鍵乃はそうだな…俺のこと好きになってくれ」
「ふぇっ!? それはあのもぅ…ごにょごにょ」
「なんか言ったか?」
「言ってないよ! もう!」
異世界来てからこんなやりとりが増えた気がする。異世界最高。
「てか、明日早いし疲れそうだし早く寝たいんだけど」
なんだか女子三人でコソコソ話してる。正直寂しい。
「あ、寝ていいよお兄ちゃん。おやすみ」
「お、おう。おやすみ」
布団に入ったもののなかなか寝付けない。明日の不安とさっきのコソコソ話も気になるし。
「寝てる?」
「寝てるのです」
「寝てるわね」
ゴソゴソと足元に気配を感じる。布団の中から甘い匂いがする。とてつもない既視感がある。
「左側いただくのです」
「お兄ちゃんの隣…ふへへ」
「じゃ、じゃあ上で…お、重くないかな?」
ユミスの胸が押し付けられる。このままでは理性が保てない。身体は正直だし、抜け出そうと変に動くと気付かれる。
「お前らはまだ分かるけどなんでユミスまでいるんだよ」
「あのこれはそのミクと鍵乃ちゃんにのせられて…って起きてる!?」
起きていることを知った途端、両隣からの圧力が強くなる。残念ながら胸の膨らみはあまり感じない。
「もう…いいや」
俺はそのまま考えることをやめ、全く寝付けないまま朝を迎えた。
とても幸せで最悪な夜だった。
「助けて助けてーっ!!! お願い! 」
ユミスさんだった。
「あ、今留守なんであとからにしてもらってもいいですか?」
「留守か…っているじゃないの!」
「はいはい、なんですかーっと」
扉を開けると泣きじゃくっているユミスさんがいた。
「あの家おかしいのよ! しょ、植物を食べてるのよ!!」
「あ、なら俺の家でご飯食べていきますか?」
「え、ホント?」
ユミスさんをテーブルに案内する。ちなみに今日のメニューはサラダ、野菜炒め、ロールキャベツの再現レシピだ。
「うひゅうぅぅ…」
ユミスさんが白目を向いてぶっ倒れた。さすがにやりすぎたと反省。ソファに寝かせておく。
こうしてみるとさすが神様、めちゃくちゃ肌綺麗だ。ふとももの辺りをまじまじと見ていると尾てい骨に衝撃が走る。
「見すぎなのです」
「お、おう、すまん」
「弓形さーん! ユミス様が来てないですか?」
外から声が聞こえる。迎えに来たみたいだ。
「あ、ユミスさんならここで寝てますよ。というかそもそもなんで家出を?」
「それが、夕食に出たサラダを見た途端に顔色が変わって家を飛び出したんですよ」
「俺の家でもサラダとか見た瞬間に倒れましたね」
なんにせよ、ユミス様が起きないことには話が進まない。どうにかして起こせないものだろうか。
「ユミスさん生きてますかー? 起きないといろんなことしちゃうぞぉー! いいのかなぁぁ?」
(起きない。え、しちゃっていいんですか。これ御褒美とかですか。)
「え、いろんなことしちゃっていいんですか? とか考えてる顔してるよ?」
「心読むなよ」
妹に心を読まれすごく恥ずかしい。だがしかし、俺は今とてつもなく良い案を考えた。
「なぁ、ちり紙とってくれ」
ちり紙を使うとなればすることは一つしかない。そう、こよりを作るのである。俺は手早く先を尖らせ、こよりを装備し、そのまま右手をユミスさんの鼻穴に近づける。
「っ…くしゅん! ふぁ!?なになになに!?」
「起きましたかユミスさん。あなたに聞きたいことがあります」
「え、突然なんなのよ」
「なんで野菜食べられないんですか?」
どストレートに聞いてやった。そんな大したことじゃないだろうし。
「野菜を…食べる?」
頭がついていかないのか場に沈黙が訪れる。
「はぁぁぁあ!? 野菜を食べるですって? あの子達はみんな私の子供みたいなものなのよ? そんなの…そんなの食べられるわけないじゃない!!!」
俺は話を聞きながらサラダを目の前で貪る。
「あー美味しい」
「あ…あ…」
「あのねユミスさん、この世は弱肉強食とも言いますし、弱いものが強いものに食べられるのは自然の摂理なんですよ」
「でも、そんなのひどい!! かわいそうじゃない!」
「少なくとも僕は食べて、食べられる覚悟を持っています。だからこそこうして野菜を食べられることに感謝しているんですよ。お前のおかげで今日も元気に生きてますよって伝えたいくらいに。」
「それでも命を奪っていることには変わりない!」
髪の毛が揺らぐ。地面が震えているようにも感じる。
「違う! なんでこんなに喋っても分からないんだよ! 俺たちは命を奪っているんじゃない、貰っているんだ。ここにある植物はみんなもう死んでる。だけど、僕たちに食べられて人の役に立つことこそが親孝行だと思いますよ」
こんなの屁理屈でしかない。恩の押し売りだ。だがあながち間違っているわけでもない。日々食べ物に感謝するのは当然のことなのだから。
「口、開けてください。お願いします。」
「嫌だ!」
「昔の鍵乃かよ! ほら、早く!」
俺はユミスさんを押し倒す。口に手を当て無理やり野菜を押し込む。
「んむっ……お、美味しいっ」
初めて食べたかのようなリアクションの裏には涙さえ浮かんでるように見える。
「どうですか? 美味しいでしょう?」
これで落ち着いてくれると嬉しい。最悪バトルまで見えてたからな。なんだろうこの好き嫌いの究極系みたいなケンカは。
「ごめんね、ごめん。今まで私何もわかってなかった。すごいねみんな」
盛り付けられた野菜に話しかける女の子は傍から見ればとてもシュールだが、本人にとっては大事なことなのだ。
そういえば、あまり皆のこと知らないんだよな。
好きなものとか嫌いなもの。
年齢とか、ティアードさんに至ってはアレで年上だし。神様ってめちゃくちゃ生きてたりするんだろうか。
「あ、全然関係ない話するけどユミスさんって何歳なんだ?」
「え? 今は十四歳だよ」
「はぇ?」
「十四歳だよ」
「でも、ずっと前からユミスさんっているんじゃないの?」
「神様は百年に一度生まれ変わるんだよ。だから今は十四歳。生まれ変わると昔の記憶もなくなっちゃうんだけどね」
「年下だったのかよ!!!」
身体とてもそうは見えないけど。
「ミクは何歳なんだ?」
「私も十四歳なのです。神族は皆リシア様によって生み出されたので同い年なのですよ。」
「鍵乃と同じじゃねぇか、お前らどこまで似れば気が済むんだよ… ミク、お前髪伸ばせ。その方が多分似合うよ」
「燈矢くんがそう言うなら地の果てまで伸ばしてやるのです」
「重いわ。せめて腰位にしてくれ」
ミクってヤンデレ属性ついてるのかな?時々怖い。
「ねぇお兄ちゃん! 私は?」
「鍵乃はそうだな…俺のこと好きになってくれ」
「ふぇっ!? それはあのもぅ…ごにょごにょ」
「なんか言ったか?」
「言ってないよ! もう!」
異世界来てからこんなやりとりが増えた気がする。異世界最高。
「てか、明日早いし疲れそうだし早く寝たいんだけど」
なんだか女子三人でコソコソ話してる。正直寂しい。
「あ、寝ていいよお兄ちゃん。おやすみ」
「お、おう。おやすみ」
布団に入ったもののなかなか寝付けない。明日の不安とさっきのコソコソ話も気になるし。
「寝てる?」
「寝てるのです」
「寝てるわね」
ゴソゴソと足元に気配を感じる。布団の中から甘い匂いがする。とてつもない既視感がある。
「左側いただくのです」
「お兄ちゃんの隣…ふへへ」
「じゃ、じゃあ上で…お、重くないかな?」
ユミスの胸が押し付けられる。このままでは理性が保てない。身体は正直だし、抜け出そうと変に動くと気付かれる。
「お前らはまだ分かるけどなんでユミスまでいるんだよ」
「あのこれはそのミクと鍵乃ちゃんにのせられて…って起きてる!?」
起きていることを知った途端、両隣からの圧力が強くなる。残念ながら胸の膨らみはあまり感じない。
「もう…いいや」
俺はそのまま考えることをやめ、全く寝付けないまま朝を迎えた。
とても幸せで最悪な夜だった。
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