朝起きたら妹が魔王になってました
第8話「お隣さんとお祭りと神様」
「あのー、すみませんー、昨日引っ越してきた弓形ですがー!」
俺達はご近所付き合いも大事だと思い、こうして挨拶して回っている。次はリンド家。お隣さんだ
「はーい!」
「あのーっ! ぶっ!」
勢いよく開いたドアが鼻の頭を容赦無く叩き潰す。鼻血が出ていないか確認してから、顔を上げるとそこには頭の上に耳を付け、せわしなくぶんぶんと尻尾を振り続けている少女が一人。
「ネコミミ少女…だと…」
この世界って属性充実しすぎじゃね。
「あ、あの、お嬢さん。お母さんかお父さんはいるかな?」
「お嬢さんだなんて、照れるわねぇ〜」
「母さん〜? 誰〜?」
異世界転移してから耳を疑うことが増えた気がする。いま母さんって聞こえたんだけど。
「昨日引っ越してきた弓形さんよ」
「あー! どうもご丁寧にありがとうございます」
好印象な青年が対応してくれる。こちらもネコミミが生えている。
「あの、ちょっと聞きたいことが」
「この耳のことですか? 僕達、獣人族なんですよ〜」
「あ、そこじゃないです」
「あの〜、こちらの方がお母様でいらっしゃりますでござりまするか」
動揺が隠せず、言葉もおかしくなってくる。「ござる」という異世界語に相手の頭にハテナマークが浮かんでるのが見える。
「母ですか? ここにいるのが僕の母です」
「うん、聞き間違いじゃなかった」
ネコミミ+ロリババアかよ…属性はなんでも付けりゃいいってもんじゃねぇぞ…
「お父さん、弓形さんが来てくれましたよ〜! 挨拶して下さい!」
すると家の奥から虎のような風貌をした全身マッチョな男が歩いてくる。その目つきは鋭く、血に飢えているのかと思うくらいの威圧感があった。
「私、ラウニと申します」
「あ、僕、リューズっていいます」
「私の名前はティアードっていうの。よろしくね〜」
思い出したかのように一気に自己紹介が始まった。
「弓形 燈矢です。宜しくお願いします」
「妹の鍵乃です!」
「ミクトランテクトリ。ミクって呼ぶのです」
「いや〜、これからよろしくお願いしますね、弓形さん!昨日私も儀式を眺めていましたが、大きな家ですねぇ。これほどの魔力に満ちた建築魔法を見るのは久しぶりでした」
嬉嬉として語る姿は風貌とは全く異なる柔らかい性格。
めちゃくちゃいい人だこの人。
「たまたま作ってもらった人が腕利きの魔法使いだったのかもしれないです」
「へぇ、誰に建ててもらったんですか?」
「扉屋ってところのリーゲルさんですよ」
「扉屋ですか? あそこは去年無くなったはずですよ」
「え、でもここは実際に扉屋さんに建ててもらったんですよ?」
「たしか、ご主人が亡くなったとかで」
一気に血の気が引いていくのを感じる。
思えばあの店には誰もいなかったし、これだけのことができるなら繁盛していておかしくない。でもそんなことってあり得るのか? リーゲルさんは幽霊だったのか? 幽霊はお金が必要なのか?
色々な疑問が頭の中をビュンビュン飛び回る。
「じゃあつまりリーゲルさんは幽霊だったってことだね!」
「お前怖くないのかよ…」
「だってリーゲルさんはこんなに立派なお家を建ててくれたんだよ? 仮に幽霊さんだったとしても、いい幽霊さんだよ」
確かに。壊れたりしたときはまた行ってみようと思う。幽霊かどうかも確かめたい。
「そうだな」
「あっ、そうだ弓形さん! 近々この辺りでお祭りがあるのを知ってましたか?」
「いえ、どんなお祭りなんですか?」
「見てもらうと分かるように、ここは花がとても多いですよね。それはこの地が植物の神、ユミス様の恩恵を受けているからなのですよ。」
「へぇ、そうなんですか。それって具体的には…」
「ユミスなら今下界にいるのです。何しろ私とケンカしたのはそのユミスなのですよ。」
「は?」
お前何言っちゃってんの? 自分が神様だってバレてもいい感じなの?
「ハッハッハ!! なかなか面白いお嬢ちゃんだね」
大笑いしてますけどそれ多分本当です。すみません。
「なんなら今連れてきてやるのです。今の私にはアイツがどこにいるのか1発で分かるのです」
「どこにいるんだよ」
「あの辺なのです」
ミクはおもむろに湖を指差した。
それって何、もしかしてユミス様下界に降りてくる時に湖に沈んじゃったの? ドジっ子極めてらっしゃるのかな?
「おーい、ユミスー出てくるのです。出てこないとお前の恥ずかしい話みんなに教えちゃうのですよ」
すると突然湖が渦を巻き始め、中から長い金髪を輝かせたスタイル抜群の女の子が現れた。
その容姿はどことなく花に囲まれた女神像に似ている。
「な、何言ってるのよ!! バカ! そんなんだから下界に降ろされちゃうのよ!」
「出てきたのです」
「いや、出しちゃダメだろ…」
ユミスさんやばいなんか激おこだ。ほらミクさん謝った方がいいって、察しろ、早く。
「決着をつけるのですよ」
「ス、ストップ! 待て待てここで暴れるつもりか? そもそもなんでケンカしてるんだよ!」
「この乳袋が私の慎ましやかなプロポーションをバカにしたのです。」
「し、してないわ!」
「いや、たしかにいい体つきしてるけどさ」
「してないわ! えっ、し、してるの…?」
ふと、にゃんこファミリーの方を向くと三人とも呆然としていた。
「ユミス様、ですか? 本当に?」
「ええ、私が正真正銘本物のユミスですよ!」
えっへんと言わんばかりに大きな胸を張る。
「リージュは私の故郷みたいなものなのよ、なんなら神様の魔法、見せてあげよっか?」
ユミスは一輪の花に手をかざすと呪文を唱え始めた。
「鳴動する大地よ、我が名はユミス。この儚き一輪の花に希望あれ」
唱え終わると花が青く光り始めた。次の瞬間、湖の上に幾千もの花が重なった橋が作られた。周囲には花びらが舞い、神秘的にも感じる。
「す、すごい! 本当に神様なんですね!」
「ところで私家が無いんです。どこか泊まれるところはないかな〜」
チラチラとミクに視線を送るユミス様。素直になればいいのに。
「なら、俺のところで…」
「却下なのです。こんなヤツと一緒にいたくないのです」
「はうあっ…」
ユミス様すげーガッカリしてる。さすがにちょっと可哀想だ。
「なら私達のところに来てください! 歓迎しますよ!」
「いいんですかっ! ありがとうございます!!」
ユミス様すげー嬉しそう。良かったね。
「あ、燈矢さん。明日祭りに必要なものを夫と一緒に取りに行ってほしいんだけど…大丈夫かしら?」
「全然大丈夫ですよ、なにが必要なんですか?」
「デビルウルフとマンドラゴラなんだけど…」
「あ、やっぱナシで」
デビルウルフってなんだよ、マンドラゴラは聞いたことあるぞ。モ〇ハンで秘薬作る時に使うやつだ。どちらにせよ危なそうだ。
「お兄ちゃんダサい…」
「ダサいのです」
「うっ…わ、分かったよ! 行けばいいんだろ!」
まぁ、ラウニさんは虎っぽいしガチムチだし。何とかなるだろ。いざとなったら逃げよう。
「じゃあ、また明日」
「また明日〜」
家に帰り一息つく。窓の外ではミクとユミス様が何だか言い争ってる。
明日もまた忙しくなりそうだ。
俺達はご近所付き合いも大事だと思い、こうして挨拶して回っている。次はリンド家。お隣さんだ
「はーい!」
「あのーっ! ぶっ!」
勢いよく開いたドアが鼻の頭を容赦無く叩き潰す。鼻血が出ていないか確認してから、顔を上げるとそこには頭の上に耳を付け、せわしなくぶんぶんと尻尾を振り続けている少女が一人。
「ネコミミ少女…だと…」
この世界って属性充実しすぎじゃね。
「あ、あの、お嬢さん。お母さんかお父さんはいるかな?」
「お嬢さんだなんて、照れるわねぇ〜」
「母さん〜? 誰〜?」
異世界転移してから耳を疑うことが増えた気がする。いま母さんって聞こえたんだけど。
「昨日引っ越してきた弓形さんよ」
「あー! どうもご丁寧にありがとうございます」
好印象な青年が対応してくれる。こちらもネコミミが生えている。
「あの、ちょっと聞きたいことが」
「この耳のことですか? 僕達、獣人族なんですよ〜」
「あ、そこじゃないです」
「あの〜、こちらの方がお母様でいらっしゃりますでござりまするか」
動揺が隠せず、言葉もおかしくなってくる。「ござる」という異世界語に相手の頭にハテナマークが浮かんでるのが見える。
「母ですか? ここにいるのが僕の母です」
「うん、聞き間違いじゃなかった」
ネコミミ+ロリババアかよ…属性はなんでも付けりゃいいってもんじゃねぇぞ…
「お父さん、弓形さんが来てくれましたよ〜! 挨拶して下さい!」
すると家の奥から虎のような風貌をした全身マッチョな男が歩いてくる。その目つきは鋭く、血に飢えているのかと思うくらいの威圧感があった。
「私、ラウニと申します」
「あ、僕、リューズっていいます」
「私の名前はティアードっていうの。よろしくね〜」
思い出したかのように一気に自己紹介が始まった。
「弓形 燈矢です。宜しくお願いします」
「妹の鍵乃です!」
「ミクトランテクトリ。ミクって呼ぶのです」
「いや〜、これからよろしくお願いしますね、弓形さん!昨日私も儀式を眺めていましたが、大きな家ですねぇ。これほどの魔力に満ちた建築魔法を見るのは久しぶりでした」
嬉嬉として語る姿は風貌とは全く異なる柔らかい性格。
めちゃくちゃいい人だこの人。
「たまたま作ってもらった人が腕利きの魔法使いだったのかもしれないです」
「へぇ、誰に建ててもらったんですか?」
「扉屋ってところのリーゲルさんですよ」
「扉屋ですか? あそこは去年無くなったはずですよ」
「え、でもここは実際に扉屋さんに建ててもらったんですよ?」
「たしか、ご主人が亡くなったとかで」
一気に血の気が引いていくのを感じる。
思えばあの店には誰もいなかったし、これだけのことができるなら繁盛していておかしくない。でもそんなことってあり得るのか? リーゲルさんは幽霊だったのか? 幽霊はお金が必要なのか?
色々な疑問が頭の中をビュンビュン飛び回る。
「じゃあつまりリーゲルさんは幽霊だったってことだね!」
「お前怖くないのかよ…」
「だってリーゲルさんはこんなに立派なお家を建ててくれたんだよ? 仮に幽霊さんだったとしても、いい幽霊さんだよ」
確かに。壊れたりしたときはまた行ってみようと思う。幽霊かどうかも確かめたい。
「そうだな」
「あっ、そうだ弓形さん! 近々この辺りでお祭りがあるのを知ってましたか?」
「いえ、どんなお祭りなんですか?」
「見てもらうと分かるように、ここは花がとても多いですよね。それはこの地が植物の神、ユミス様の恩恵を受けているからなのですよ。」
「へぇ、そうなんですか。それって具体的には…」
「ユミスなら今下界にいるのです。何しろ私とケンカしたのはそのユミスなのですよ。」
「は?」
お前何言っちゃってんの? 自分が神様だってバレてもいい感じなの?
「ハッハッハ!! なかなか面白いお嬢ちゃんだね」
大笑いしてますけどそれ多分本当です。すみません。
「なんなら今連れてきてやるのです。今の私にはアイツがどこにいるのか1発で分かるのです」
「どこにいるんだよ」
「あの辺なのです」
ミクはおもむろに湖を指差した。
それって何、もしかしてユミス様下界に降りてくる時に湖に沈んじゃったの? ドジっ子極めてらっしゃるのかな?
「おーい、ユミスー出てくるのです。出てこないとお前の恥ずかしい話みんなに教えちゃうのですよ」
すると突然湖が渦を巻き始め、中から長い金髪を輝かせたスタイル抜群の女の子が現れた。
その容姿はどことなく花に囲まれた女神像に似ている。
「な、何言ってるのよ!! バカ! そんなんだから下界に降ろされちゃうのよ!」
「出てきたのです」
「いや、出しちゃダメだろ…」
ユミスさんやばいなんか激おこだ。ほらミクさん謝った方がいいって、察しろ、早く。
「決着をつけるのですよ」
「ス、ストップ! 待て待てここで暴れるつもりか? そもそもなんでケンカしてるんだよ!」
「この乳袋が私の慎ましやかなプロポーションをバカにしたのです。」
「し、してないわ!」
「いや、たしかにいい体つきしてるけどさ」
「してないわ! えっ、し、してるの…?」
ふと、にゃんこファミリーの方を向くと三人とも呆然としていた。
「ユミス様、ですか? 本当に?」
「ええ、私が正真正銘本物のユミスですよ!」
えっへんと言わんばかりに大きな胸を張る。
「リージュは私の故郷みたいなものなのよ、なんなら神様の魔法、見せてあげよっか?」
ユミスは一輪の花に手をかざすと呪文を唱え始めた。
「鳴動する大地よ、我が名はユミス。この儚き一輪の花に希望あれ」
唱え終わると花が青く光り始めた。次の瞬間、湖の上に幾千もの花が重なった橋が作られた。周囲には花びらが舞い、神秘的にも感じる。
「す、すごい! 本当に神様なんですね!」
「ところで私家が無いんです。どこか泊まれるところはないかな〜」
チラチラとミクに視線を送るユミス様。素直になればいいのに。
「なら、俺のところで…」
「却下なのです。こんなヤツと一緒にいたくないのです」
「はうあっ…」
ユミス様すげーガッカリしてる。さすがにちょっと可哀想だ。
「なら私達のところに来てください! 歓迎しますよ!」
「いいんですかっ! ありがとうございます!!」
ユミス様すげー嬉しそう。良かったね。
「あ、燈矢さん。明日祭りに必要なものを夫と一緒に取りに行ってほしいんだけど…大丈夫かしら?」
「全然大丈夫ですよ、なにが必要なんですか?」
「デビルウルフとマンドラゴラなんだけど…」
「あ、やっぱナシで」
デビルウルフってなんだよ、マンドラゴラは聞いたことあるぞ。モ〇ハンで秘薬作る時に使うやつだ。どちらにせよ危なそうだ。
「お兄ちゃんダサい…」
「ダサいのです」
「うっ…わ、分かったよ! 行けばいいんだろ!」
まぁ、ラウニさんは虎っぽいしガチムチだし。何とかなるだろ。いざとなったら逃げよう。
「じゃあ、また明日」
「また明日〜」
家に帰り一息つく。窓の外ではミクとユミス様が何だか言い争ってる。
明日もまた忙しくなりそうだ。
コメント