楽しむ異世界生活

フーミン

33話 : ただいま

懐かしい家の前へ転移してきた。
 ケルミアをつれて、ドアをノックする。


「は〜い」


懐かしい母メリアの声と共に、ドアが開かれる。


「なんでし……レム!? 帰ってきたの!?」
「お母さんっ!!」


久しぶりに母と会って、涙が溢れ出る。
 ケルミアがいるというのに、俺は母に抱きついてワンワン泣いた。


「よしよし……お帰りレム……。大きくなったわね……」


母も涙を流して、俺が帰ってきたのを喜んでいる。
 しばらく泣いて抱き合った後、なんとか落ち着きを取り戻して家の中に入る。


「その子は友達?」
「そう、ケルミアって言うんだよ。
 ケルミアちゃん、この人が僕のお母さん」
「よ、よろしくお願いします……」
「うふふふ。そんなに畏まらなくて良いわよ。
 あんなに人が苦手だったレムが、成長して友達をつれてくるとはね……」
「お父さんは?」
「お父さんは、街に買い物に言ってるわ。夜には帰ってくるから、ゆっくりしてなさい」


懐かしい家の匂いで、ケルミアと母と俺は、色んなことを話した。
 家に帰ってきた理由。ケルミアの事。そして俺が小さかった頃の話を、母が勝手に話した。
 ケルミアも、母とは仲良くなれたようだ。


「レムの部屋。綺麗にしてあるから久しぶりに行ってきなさい」
「分かった!」


俺は幼少期に戻った感覚で、ケルミアをつれて俺の部屋へ入る。


「うわぁ〜! レムお姉ちゃんの匂いだ!」


ケルミアは俺のベッドに潜って、はしゃぎだした。
 懐かしい部屋。俺は冒険者なんかにならないで、ずっとこの家で暮らしたくなった。
 でも、それじゃダメだ。自立するために学園に行ったんだ。
 しばらく家で暮らすとしても、しばらくしたら冒険者として生活しないとな。


 俺もケルミアが暴れてるベッドに横になって、しばらく戯れた。
 レインもネロも。この部屋はしっかりと覚えていて、俺とケルミアとネロは、ベッドで睡眠を取った。
 ケルミアと触れてるので、夢の中でレインの紹介をしたり。暴れたりした。


 久しぶりの家、家族。そこに大事な友達、ケルミアも入って、俺はいま幸せだ。
 目を覚ますと、既に夜になっていたようだ。
 下からは母と父の話し声が聞こえる。俺はケルミアとネロを起こさないように部屋から出ていって、両親の元へと行く。


「お父さん!」
「レム!! おかえりっ!!」


俺と父は、一瞬で目を合わせて抱き合った。
 父も相当嬉しいようで、涙を流している。


「レム! 無事に成長して帰ってきたなぁ!!」
「ただいま!」
「レムの髪は、俺のお守りになってたぞ」


その情報はいらないぞ。
 俺は、久しぶりに両親と話した。学園での思い出。ヤンキー達との演技。
 敢えてソルナントの事は話さなかった。


「本当に。立派に成長したなぁ……」
「約束しましたから。胸張って帰ってこれるよう頑張るってね。
 張れる胸も出来ましたし」


といっても、胸のサイズは中の下くらいだけどな。


「俺達はレムが無事に帰ってきてくれただけで、嬉しい。
 更に友達まで連れてくるとはな。レム、しばらく家でゆっくりしていっても良いんだぞ?」
「元からそのつもりですよ」


俺がそういうと、両親は本当に嬉しそうに笑顔になった。
 やはり家族の愛というのは、人を幸せにしてくれる。

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