楽しむ異世界生活

フーミン

22話 可愛い猫に

俺が変身と言うと、体が光を発して、だんだんと視線が低くなる。遂には、ネロと同じ大きさになり、体の形や感覚が慣れない物へと変わった。


「成功…したのか?」
「成功だね。そこの鏡を見てみなよ」


4本の足で、鏡が置いてある場所へ飛び移る。跳躍力も随分と高いようだ。
 鏡には茶色い毛の可愛い子猫が写っている。
 俺が右手を上げると、目の前の猫も同じ手を上げる。


「おぉ……おお!おお!!
成功か! ついに俺も可愛い猫になれたのか!」


興奮すると、お尻の上に付いている尻尾がブンブンと横に動く。


「猫の中では可愛い方だね」


やっぱり、猫にも可愛い可愛くないってのがあるのか。
 それにしても、俺の体フカフカしてるな。


「……くっ…あと少し……。だぁぁ〜無理だ」


なんとか、体を触ろうとしたが骨格的に無理なようだ。
 自分の体を好き放題モフモフする事は不可能なようだ。
 ならば、モフモフされる側の気持ちになる為に、ネロに1つお願いしよう。


「ネロ。できたら人型になって、いつも俺がしてるようにモフってくれる?」
「良い……のですか?」


ネロの耳がピーンと立って、猫目が大きく開かれる。


「うん。猫の気持ちをしらないとね」
「では遠慮なく」


ネロは人型になってベッドの上に座ると、俺を抱えて膝の上へと乗せる。
 座り心地はなかなか良いな。
 俺は体を丸めて、いつでもこいという雰囲気を醸し出す。


「行きますよ……」
「おう」


なにやらネロが躊躇しているようだが、問題ない。
 次の瞬間、ネロの手が俺の頭の上へとやってきて、コリコリとマッサージのように動かす。


「あぁ〜……なんだこれ気持ち良い……」


猫なだけあって、気持ち良い場所というのを分かっているのだろう。
 だんだんと体の方に手が行き、尻尾の根元を触り始めた。


「気持ち良いぃぃ〜〜……」


まさに夢心地といった感じだ。
 こんなに気持ち良い事を体験できる猫って羨ましいな。今俺も猫なんだけど。
 すると突然、体をひっくり返されて、綺麗なお腹が丸見えになった。
 普段、ネロの腹を触っているから、俺が体験するとどうなるのだろうか。
 ネロの細い指がお腹へとやってきて、さわさわ……


「あ、ちょっ擽ったい! やばいそれはやばいって!」


一気に体勢を戻して、ネロの膝上から逃れる。
 あの擽ったさは異常だ。いや、気持ちよかったんだけど、耐えられない。
 いつもネロはアレを耐えていたのか。


「ふっふっふっ……猫の気持ちが分かりましたか?」


嫌らしい目付きで、ネロは猫の姿に戻った。


「今度からネロを撫でる時は頭と尻尾にするよ……」


俺は元の姿へと戻って、ベッドで横になり、ネロを頭の上へと乗せる。
 別に撫でなくても、お腹を堪能することはできるのだ。
 ネロの良い匂いと気持ち良いお腹が、最高だ。


「それでも息が擽ったいんだけどね。仕方ないか」


ネロは俺の頭の上で丸まった。
 しばらく俺はお腹を楽しんだが、だんだんと熱くなってきたので、結局ネロを体の横に置いた。


そこから、俺は眠りについた。
 夢の中では戦闘訓練して、万全の状態で目を覚ます。
 昨日の騒動があったが、俺は翌日から授業に出ることにした。
 制服に着替えて、配布されたノートを持って授業を受ける。今受けている授業は魔物の生態についてだ。
 ゴブリンなんかは集団で行動するらしい。持っている武器で相手を気絶させて、その間に子供を産むらしい。
 そういった情報をノートにメモしていく。レインにも記憶してもらっているが、ノートに書くことは大事だ。
 他にも授業を受けている生徒が沢山いて、チラチラと俺の方を向いては注意される生徒もいた。
 昨日の1件があってから、俺は男を警戒するようになった。


 なるべく人とは関わらないように、孤独に授業を受けていた。
 そんな俺を見た生徒が、《沈黙の美少女》なんて名前を付けて俺の話をしているようだ。
 俺は毎日、魔物の生態や、植物の授業を受けた。
 昔からレインのお陰である程度の知識は揃っていたので、テストの点数も上位に入っている。
 そうして、学園内では。


"男子生徒に襲われて、性格が暗くなった美少女"


という噂がどんどん広まった。
 確かにそれは事実ではある。しかし性格は明るいほうなのだ。
 アキヒトとは、よく俺の部屋で仲良く笑って話している。
 常に脳内ではレインとネロと俺で、お笑いのような会話をして、授業にニヤッとすることもあった。
 そうして俺は、学園では有名な生徒になった。

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