魔王LIFE

フーミン

56話 魔物出現

「大変ですルト様!」
「大変だルト!」


朝からリアンとミシェルが騒がしいな。まだ寝ていたいというのに……。
ㅤ重い体を起こし、テンションの高い2人の話を聞くことにした。


「……何……」
「魔物だ!」
「魔物です!」
「……そっ……おやすみ」


俺はまた眠りについた。


「おい! この世界に魔物が出る事は異常なんだろ!?」
「ルト様の故郷が襲われますよ!」
「ん〜……じゃあ2人で戦ってきて……まだ眠い……」


段々と2人の声は鮮明になっていき、故郷、魔物、のワードが脳内に流れ込んでくる。


「…………それってマズくない?」
「だから最初から言ってるんだ! 行こう!」
「ルト様! 今こそ地上の人々を救って有名になるチャンスです!」


俺は起き上がって、すぐに寝癖を整える。
ㅤそして横のテーブルにある白い剣、これを使うのは久しぶりだな。それを手に取り、アキの部屋に転移した。


「……おっ、おぉルト。ニュース見てみろ」


いつもの様子でアキがテレビを見ていた。


『凶暴な未確認生物が一般人を傷付ける事件が発生しています。警察や自衛隊で何とかしますので、外出は控えてください。
ㅤ繰り返します。ーー』


随分と混乱した様子で、ニュースキャスターの後ろでも人々が走り回っている。


「私、戦ってくる」
「僕も行く」
「私も行きます!」


今戦えるのは、俺とミシェルとリアン。他の奴らは何をしているのだろう。


「ま、待て! 何か食べる物を持っていかないと魔力切れを起こす!」
「何かある?」
「えぇっと……おにぎり作ってくる!」
「えぇそれじゃ遅いよ……」


しかし、それ以外の食料がない為にアキがおにぎりを作るのを待つしかない。


ミシェルが窓の外を覗く。


「ここらへんはまだ大丈夫なようだな」
「多分、どこかで魔素が溜まってるんだと思う。そこを潰さないと魔物達は無限湧きしてくるよ」
「あまり魔力は使いたくありませんが……探知してみます」


リアンが辺り一帯に自らの魔力を行き渡らせて、大量の魔素がある位置。近くの魔物の位置を調べる。


「……だ、ダメです。魔物は4体程見つけましたが、それ以外は……」
「4体見つけただけでも十分だよ。魔力は大丈夫?」
「今ので半分は消費しました……」


まあ大丈夫だろう……。まだ俺とミシェルは魔力があるし、いざとなれば "おにぎり" があるからな。


ーーーーー


アキが親にバレないように作ったおにぎりは5つ。


「足りないと思うけど……」
「大丈夫、無いよりはマシだよ。ありがとう」


リアンとミシェルに2つずつ。俺には1つで十分だ。


「それじゃあ行ってくる!」


アキの部屋の窓を開けて、そこから外に出る。


「リアン、魔物はどこらへんにいた?」
「丁度この先を真っ直ぐ行ったところです!」
「分かった。先に行ってるよ」


ミシェルとリアンよりも速く動ける俺は、先に魔物の場所へ向かった。


ㅤそして視界に入ったのは、ゴブリン。丸裸のゴブリンが4体一緒に行動している。手には石や包丁。
ㅤ魔力量はかなり少ないようだ。魔素が無いからだろう。


ㅤバレないように近づいて、包丁を持った2体の首を切り落とす。
ㅤすぐに気づいたゴブリンが石を投げてきたので、魔法でバリアを作って防いだ後、残りの2体も殺した。


「この程度なら楽勝かな」


すると、後ろから付いてきていたミシェルとリアンも追いついたようだ。


「人間達はこんな魔物にも勝てないのか……」
「そうですね……!? ルト様、大量の魔物が迫ってきています!」
「!? どういうこと?」
「多分、魔法を使ったことで魔素が生まれた。その魔素を求めて来ているのだろう」


これは気軽に魔法使えないな……。


「少し広い場所……公園に移動するよ」


ミシェルとリアンに触れて、いつもの公園に転移した。


ーーーーー


その公園には、警察や自衛隊が集まっていた。
ㅤそうか人がいないと思ったが、こいつらはいるのか。転移した瞬間を見られてしまったが……今はそんな事を考えてる暇はない。


「お、お前は宇宙人……動くな!」


あれ、バレてる?
ㅤとりあえず手を上げた。


「ミシェルもリアンも手を上げて」
「わ、分かった」
「はい」


まさか見ただけでバレたとはな……。いや宇宙人ではないんだけども、あながち間違ってない。


「この騒ぎはお前達の仕業か!」
「……」


これ、喋っていいの?


「言え!」
「あ、はい。私達はあの空中に浮かぶ都市の人間で間違いありません。ですが、この魔物達は我々の敵です」


まあ魔物が現れたのは俺達が魔法を使ったっていうせいでもあるんだけど。
ㅤ警察や自衛隊が銃をこちらに向けてくるから怖いな。

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