魔王LIFE

フーミン

50話 チョロイ友人

「はい。自己紹介」
「僕はサハル。ルトと一緒に魔王をしている」
「私は王女様に雇ってもらっているメイドよ。チヒロって気軽に呼んで」
「初めまして。私は勇者のミシェルです」


3人が自己紹介をすると、アキは固まった。


「……アキ?」
「マジで異世界から来たのか……正直、いま確信したわ」
「え……さっき確信したんじゃないの」


つまり今まで少しだけは疑っていたという事か。なんじゃそりゃ。


「えっと……俺は……」
「……ルト……」
「ルトの友人してるアキです……」
「ルト。この方はルトの……」
「ただの友人だよ。別にそういう関係じゃない」


ミシェルが嫉妬しそうだったので、否定した。


「この子が協力者……? 頼りなさそうね」
「まあそう言わないであげて。こう見えても計画を練るのは得意だから」
「こう見えて……」


確かに見た目は頼りないな。


「早速だけど、アキ。家に上げてくれる?」
「え、なんでだよ」
「だって私帰る家ないんだし……お願い!」
「うっ……分かったよ」


俺がちょっと色気を出せば、すぐにお願いを聞いてくれた。ちょろいちょろい。


「ルトは悪い人だねぇ」


サハルがニコニコしながら言ってきた。


「なんのことかなぁ〜?」


ーーーーー


「た、ただいま〜……」
「あらおかえ……その方達は……?」


アキの家に行くと、さっそくアキ母が現れた。


「アキ君と仲良くさせてもらってます、ルトです」
「あら可愛いわね。外人さん? にしては流暢な日本語……ハーフ?」
「ま、まあそんな感じです。で、この3人も同じ友達です」


怪しまれないように笑顔で対応。ま、俺は本当の友達なんだけどな。


「アキ、あんたこんな友達がいたなら紹介しなさいよ」
「ご、ごめん」
「それにしても美人さんね〜ルトちゃん。私の若い頃にそっくり」


イラッ……。俺の美しさにお前が勝てる訳ないだろう。
ㅤいくら友達の母親だからって美少女に失礼だぞ。


「すぐにお茶とお菓子を持ってくるわね」
「いいよ……別に」
「おもてなしの心が大事よ」
「はぁ……行こう」


ーーーーー


「随分と狭い部屋だね。生きづらくない?」
「男子の部屋ってこんな感じなのね」
「不思議な素材だな……」


サハルとチヒロを見慣れた部屋だろう。ミシェルにとってはこっちが異世界、慣れるまで大変だぞ。


「そこ適当に座ってください」
「ソファは?」
「無いです……」
「サハル。お城じゃないんだから贅沢言わない」
「まあいいや」


床に体育座りに座った。そこは子供なんだな。
ㅤチヒロとミシェルも、礼儀正しく正座で座っている。


 ㅤ俺はいつも壁際だ。昔からアキの家で遊ぶ時は壁際で本を読んでいた。


「にしても、この子が協力者って頼りないわね」
「ごめん……」
「ルト……なんでお前が謝るんだよ。俺が本当に頼りないみたいじゃないか」
「そんなことないよ」


アキは昔から俺を助けてくれるからな。今回も色々と助けになるだろう。


「ちょっとテレビ付けてくれる?」
「あ、はい」


俺以外には敬語を使うようだ。
ㅤテレビを付けると、緊急速報のニュース。


『速報です。今日昼頃、太平洋上空に謎の巨大物体が出現しました。……え、映像があるそうです』
「まさか撮られてたなんてね……」
「な、なんで箱の中に人間が!? なんだこれは……!」
「テレビ。人が入ってるわけじゃないよ」


次に画面に現れたのは空を映した映像。


『謎の巨大物体は、しばらく浮遊を続けた後に何かに包み込まれるように消えていきました。
ㅤこの不思議な現状に専門家達は、"これはUFOの母船。近い内に大量の宇宙人が攻めてくる" との事。
ㅤ新しい情報が入り次第、随時報告していきます』


なんだか大きな騒動になったなぁ……。


コン「入るわよ〜」


アキ母がお茶とお菓子を持ってきた。


「あ、そのニュース私も見たわ。どうせCGよ」
「ですよね……あはは」


まあ下から映された映像だから良かったものの。上から映されていたら……城も建物も。もしかすると国民も映ってしまっていたかもしれない。


「ルトちゃん。ゆっくりしていってね〜」


お茶とお菓子を置いて、俺の頭を撫でると部屋から出ていった。どうやら気に入られたようだ。


「今のニュースって、チヒロさん達と関係があるんですか?」
「ええ、あの上に私達の国があるの。……言ってよかったかしら」
「大丈夫だよ」


ニュースでは消えた。なんて言われてるけど、本当は見えないようにしただけだから、もしヘリなんかで近づかれたら即バレだ。


「えっと……アキに協力してもらいたい事っていうのは……地上での拠点をこの家にしたいんだけど」


上空の大地にも拠点はある。しかし地上に転移する時に場所を選ばないといけない。そこでアキの部屋に転移して、そこを拠点にする事を決めていきたいのだ。


「別に良いけど……ここで寝泊りはしないんだな?」
「うん。来るだけ」
「分かった。それ以外にも何か協力出来ることならするぞ」
「今のところは大丈夫かな。ありがとう」
「おっ……おう……」


とりあえず転移拠点は決まったし、ちょっとゆっくりするか。
ㅤチョコのお菓子を一つ取って、パクリ。


「ん〜っっ……久しぶりに食べたけど美味しいっ……」
「ルト……それ……美味しいのか?」
「うん。チョコっていうだけど、食べる? ほら」
「い、頂きます」


それから皆でお菓子やチョコを食べまくった。
ㅤ折角出されたんだ。完食してやらないと失礼だよなぁ?


ーーーーー


「えっと〜……とりあえず今日はありがとう」
「そんな礼なんていらねぇって。姿は変わったけど、友達だろ?」
「うん。じゃあまた明日来るから何かニュースであったら教えて」
「分かった。それじゃ」


俺達は転移して城に戻った。
ㅤとりあえず会うべき人にはあった。チヒロも途中、家に転移して元気な姿を見せてきたしな。


「良いヤツだったね」
「唯一の友人だけどね」


しかし、アキもすぐに話を分かってくれて助かったな。
ㅤ簡単に詐欺に会いそうな奴だから心配だ……。

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