魔王LIFE

フーミン

47話 生命の誕生

次の日も、その次の日も皆が働いた。
ㅤ皆も理想の国を作りたい。俺とサハルの為に働きたい。そういった感情で動いているのだろう。
ㅤこうして、人に必要とされるという事は実に嬉しい。今も、初日より大分増えた人数で街を作っている。


ㅤ最初は魔物や魔族、俺とサハルの友人や知り合いくらいだった。今では大勢の人々が、魔物達と協力しあっている。同じ目標を持つ者同士、仲良くやっている。
ㅤ既に理想は完成に近づきつつある。


「ルト、いるか?」


自分の部屋でゴロゴロしていると、ミシェルの声が聞こえた。
ㅤこの前の一件からも、いつも通り接している。


「いるよ〜」
「ちょっと入るぞ」


ミシェルが持ってきたのは、丸い鏡だ。


「……? これは?」
「子供達が森で遊んでいた時に見つけたらしい」


一見ただの鏡にしか見えないな。魔眼を使ってみるか。
ㅤ魔力を集中させて鏡を見つめる。すると、モヤモヤとした魔力が鏡に集まっている。


「ちょっと見せて」
「ああ。その為に来た」


裏面を見ると、何やら不思議な模様が描かれている。
ㅤ白い横線、その上にはオークの顔。その下にただの豚の顔が描かれていた。


「オークは分かるんだが、その下が何なのか分からないんだ。何かのヒントだとは思う」


ん〜……この世界には豚は存在していないしな。
ㅤもし豚を知っている人がこれを作ったとしたら……サハル、フェンディア、チヒロ、ミソラ。の誰かだろう。
ㅤしかしただの鏡が魔力を持つなんて不思議だな。


「この鏡はルトに預けるよ。何か分かったら教えてくれ」
「分かった」


とりあえずこの鏡は普通に使うことにしよう。
ㅤ棚の上に飾っておくことにした。


「そういえば、また何か新しい建物出来たらしいぞ」
「あ、じゃあ行かないとね」


ーーーーー


大地の上は、かなり充実してきた。
ㅤしっかりとした道が作られ、建物もそれなりに増えてきた。


「ここだ。何やらハンターギルドにするらしい」
「ハンターギルド?」
「盗賊や悪い事をする魔物を捕まえる為にハンターを雇うんだとか」


ん〜、それなら良いけどな。
ㅤまさか魔物を狩って素材で防具を作るとかはしないだろうか。なんて考えてしまった。


「じゃあ人が住めるような建物、もっと増やさないとね」
「一応最初に出来た宿屋、三階建てになっている。重さを無視できるルトの魔法のお陰だ」


大きな建物も、二階からは重さを消している。少しでも効率的にする為だ。


「っと、そろそろチヒロさんに呼ばれてるから行かないと。それじゃあまた」
「チヒロに?」
「剣術を教えてほしいそうだ」
「なるほど。またね」


一瞬別の事を考えて妬きそうになったが、ミシェルにそういう事は有り得ないだろう。
ㅤ俺は何を考えてるんだか。


ㅤ今でも街はどんどん発展していっている。
ㅤ作物を育てる農場。料理を作って食べさせてくれるレストラン。小さな部品などを作る工場。人が住む宿屋等。
ㅤまだ全員が住めるような環境ではない為、ほとんどの人は1度地上に戻ってもらっている。
ㅤ何故か、資材も勝手に集めてきてくれる始末。こうなると俺とサハルの仕事が無くなる。


ㅤ何か働こうと動き始めると、


「王女様に働かせるなんて失礼」
「私達に任せてください」


と、俺の事が大好きな女性集団が集まってくるのだ。
ㅤアイドル気分で嬉しいけど、いつまでも無職は嫌だな。


ーーーーー


そんなある日の事だ。イシールさんとミソラさんの子供が産まれたと、リアンから報告があった。
ㅤすぐに地上にある二人の家に駆けつけると、ミソラさんが赤ちゃんを抱えて横になっている。


「お、おめでとうございます!!」


その場には既に何人かの人が集まっている。皆祝いに来たのだろう。勿論ミシェルも居た。


「元気な女の子だ」
「ついに……産まれたんですね!」


俺は本来、子供は苦手な人間だった。それでも、ついさっき産まれた子供というのは、なんだか感動するな。嫌いになれない。


「今は?」
「眠っているわ」
「王女様って俺より喜んでねぇか?」
「あら? イシールなんて涙を流しながら笑ってたじゃない」
「はっはっはっ」


いいなぁ……家族って。
ㅤこの家族を守るのも俺の仕事だ。


「安心して子育てが出来る国、頑張って作りますね」
「王女様ならきっと出来るさ」
「期待しています」
「ああああ〜〜」
「あ、起きちゃったわ」


俺達は外に出た方が良さそうだな。


「で、では失礼します」
「僕達も失礼します」
「はい。またいつか暇ができたら是非来てください」


ーーーーー


「感動したぁ〜……」
「ルトは子供作ろうって考えた事はあるか?」


子供……俺が……!?


「な、ないないない! だってそんな……」
「ルトだって作れるんだよ?」


ま、まあ……。それなりに性知識は持ってるけど。


「未だに生理来ないんだけど……」
「……病院行ってみる?」
「い、いやいいいい! 大丈夫っ!」


生理こない? 俺なんかが子供産んだって生活が大変になるだけだ! 嬉しいじゃないか!
ㅤそれに子供産むのって痛いんだろ? んなの体験したくねぇ!


「行ったほうがいいよ……」


しかし、とてつもなく心配そうな顔で言ってくるミシェルに、俺まで焦りがやってきた。


「だ、だだ、大丈夫だから……問題ないし……」
「それ結構重大な事だよ……」
「子供作りたくないし……」
「病院行った方が良い」
「うっ」


そう言われても……いままで問題なく生活してたんだし。別に良いと思うけどなぁ……。


「行こう」
「い……」
「行く?」
「い……かない!!」


俺は自分の部屋に、逃げるように転移した。
ㅤ月経なんて必要ない。そんなの生活が面倒になるだけじゃないか。今のままが幸せだ。子供なんて誰とも作らない!


ㅤそれでも少しだけ気になるので、布団の中に潜って軽くお腹を押してみた。


「……ま、いいか」


分からないし分かりたくもない。俺はこのままで大丈夫だ。

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