魔王LIFE
44話 好感度
その後、休憩時間半分経過の鐘の音で意識を取り戻したリアンと、観客席に座ってダラダラしていた。
ㅤ飲み物。果物ジュースや川の水、何かのジュースなどを飲みながらダラダラしていると、周りに人が集まってきた。
「王女様〜!」
「決勝頑張ってください!」
「こっち来てくれ〜〜!!!」
ここは待機室からしかこれない観客席なため、女性以外は入ってこれない。それでも男達の声が遠くから聞こえる。
ㅤどれだけ人気者なんだ……。王女ってだけでこんなに囲まれるか?
「ルト様、モテモテですね」
あぁ、《モテモテ》のせいか。モテるのも辛いな。
ーーーーー
《決勝戦が始まります。決勝に進出した2人は準備をしてください》
暑苦しい人混みの中を耐えていると、救いの声が響いた。
「行こう」
「はい」
酸素の薄い空間にいたせいで、既に若干疲れている。何が休憩だ畜生。
ㅤ俺とリアンが場に出ると、観客席も盛り上がった。
ㅤこのイベントの間に俺の好感度はグングン上昇しているようで、嬉しい限りだ。
ㅤ対峙する2人の手には一本の剣。お互いに剣と魔法を駆使しながら戦っていくバトル。
ㅤ力の差は歴然だが、すぐに勝つのも面白くない。しばらく手を抜こう。チヒロのように負けたりはしないけどな。
『始めっ!』
「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!!」」
歓声が心臓に響く。ビビビビビという振動音に、俺とリアンも興奮してきた。
「ふっ……ふっ……ふっ……」
動物というのは、かなりの興奮状態になってから狩りを行うらしい。リアンもまた、獣人族の中では狩りの種族、狼。
ㅤ全身の血液の流れを速くしている。目も充血しているのか、赤く見える。
「精一杯戦わせていただきます」
これがリアンの限界なのだろう。
「無理しない程度に頑張って」
本気で戦ってくれるのは嬉しい。
ㅤ常に攻撃が始まってもいいように、剣を構える。
ㅤリアンはゆっくりと、こちら側に歩いて距離を詰める。相手との距離が短いほど狩りの成功確率は高い。
ㅤそれが俺に対して通用するかは分からないが、少しは緊張した方が良いだろう。
「……」
俺との距離、約5m。いつでも攻撃出来る状態だ。
ㅤさぁ……いつくる。
「…………」
リアンも攻撃のタイミングを見計らっている。
ㅤ俺がほんの少しでも気を抜いたら攻撃してくるだろう。だが、俺は気を抜かない。
ㅤそのまま、体感ではかなりの時間が流れた。
ㅤ戦闘についての知識が無い者は、この時間に飽き飽きしている。戦闘について経験のある者は、まだかまだかとドキドキしている。
ㅤこのまま静かに待つのも良いが、そろそろ行動しないとな。
ㅤ俺が剣を持つ手の小指を、ほんの少しピクッと動かした。それを確認したリアンが、すぐに動き出した。
ㅤ一瞬で5mの差を無くし、俺の目の前にはリアンの剣が今当たろうとしている瞬間。
「っ!?」
まさかの速さに驚き、咄嗟にしゃがんでリアンの身体を蹴った。
ㅤそのまま蹴り飛ばされたリアンの身体は、横の壁へと打ち付けられる。
「あぶね……」
まさかリアンの限界が、あれほどにも速いなんて思わなかったな。もうちょっと手を抜いていたら負けたいただろう。
「……やっぱり無理でしたか」
リアンはまた、ゆっくりと俺に近づいてくる。
ㅤ闘技場での戦闘は、サハルの作り出した結界によって身体は傷つかないようになっている。
ㅤさっきの蹴りも、本来なら身体を真っ二つにしている威力だ。そんな蹴りを咄嗟に出してしまったという事は、俺は不注意で人を殺してしまうという事。
ㅤもっと集中して、力を抑えて戦うか。
「今度は私から行くよ」
《透明化》の技能を使い、リアンの視界から消える。
ㅤしかし狼は鼻が利く。すぐに俺の居場所を特定して、その一点を見つめている。
ㅤ俺は透明化したまま、左手から氷の弾丸を作り出した。
ㅤ魔法によって、高速回転、空気抵抗無しの状態を作り出し。透明の弾丸をリアンの手に飛ばす。
バチィンッ!!
「!?」
リアンが突然の出来事にビックリしているが、手から剣は離れていない。流石だな。
ㅤしかし、リアンがビックリしている隙に後ろへと回り込んでいる。すぐに決着を付けるためだ。
ㅤこのまま本気のリアンと遊んでいるのも悪くはない。しかし、俺はリアンとの力の差をハッキリ分からせる為に、今決着を付ける。
「っ!!」
透明化を解いて、迫ってくる俺の気配に気づいたリアンが剣で防御の構えをとる。
ㅤしかし、遅かった。
ㅤ既に俺の剣はリアンの首に触れている。
「があっはっっ!!」
終わった。
『勝者ルト!』
まあ力の差が大きいからな、あっさり終わるのも仕方がない。
ㅤリアンを起こして、観客席に戻ろうとした時だ。
「ルト、お疲れ」
サハルが降りてきた。
「終わったね」
「まだ、最後に言うことがあるでしょ」
「?」
最後に……?
「今言わないで、いつ言うのさ」
「な、何を?」
「理想郷。作るんなら、着いてくる人がいるか聞かないといけないでしょ」
「あぁ〜……私疲れてるからサハルお願い」
久しぶりに一日中運動したしな。
「はぁ…………ミシェル!」
どこかにいるミシェルに声をかける。
『あっ……最後に国民の皆さんにお知らせがあります』
どうやらミシェルが伝えてくれるようだ。サハルとミシェル、仲良くなったよな。
『明日から、サハル様とルト様が新たな国を作る計画が始まります。
ㅤ新たな国、理想郷に移住したい方は今のうちにお知らせください』
随分と適当な言葉選びだな。
ㅤだが、次の瞬間観客席の全員が手を上げた。
「着いていきます!」
「一生着いていきます!」
「王女様〜!!」
このイベントでの好感度上昇は無駄にはならなかったようだな。
「どうやら全国民が移住したいらしいね」
「そうだね……明日から忙しくなるなぁ……」
「……ルト様?」
一日の疲れと、安心感からなのか分からないが、眠気に襲われた俺はその場で眠ってしまった。
ㅤ飲み物。果物ジュースや川の水、何かのジュースなどを飲みながらダラダラしていると、周りに人が集まってきた。
「王女様〜!」
「決勝頑張ってください!」
「こっち来てくれ〜〜!!!」
ここは待機室からしかこれない観客席なため、女性以外は入ってこれない。それでも男達の声が遠くから聞こえる。
ㅤどれだけ人気者なんだ……。王女ってだけでこんなに囲まれるか?
「ルト様、モテモテですね」
あぁ、《モテモテ》のせいか。モテるのも辛いな。
ーーーーー
《決勝戦が始まります。決勝に進出した2人は準備をしてください》
暑苦しい人混みの中を耐えていると、救いの声が響いた。
「行こう」
「はい」
酸素の薄い空間にいたせいで、既に若干疲れている。何が休憩だ畜生。
ㅤ俺とリアンが場に出ると、観客席も盛り上がった。
ㅤこのイベントの間に俺の好感度はグングン上昇しているようで、嬉しい限りだ。
ㅤ対峙する2人の手には一本の剣。お互いに剣と魔法を駆使しながら戦っていくバトル。
ㅤ力の差は歴然だが、すぐに勝つのも面白くない。しばらく手を抜こう。チヒロのように負けたりはしないけどな。
『始めっ!』
「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!!」」
歓声が心臓に響く。ビビビビビという振動音に、俺とリアンも興奮してきた。
「ふっ……ふっ……ふっ……」
動物というのは、かなりの興奮状態になってから狩りを行うらしい。リアンもまた、獣人族の中では狩りの種族、狼。
ㅤ全身の血液の流れを速くしている。目も充血しているのか、赤く見える。
「精一杯戦わせていただきます」
これがリアンの限界なのだろう。
「無理しない程度に頑張って」
本気で戦ってくれるのは嬉しい。
ㅤ常に攻撃が始まってもいいように、剣を構える。
ㅤリアンはゆっくりと、こちら側に歩いて距離を詰める。相手との距離が短いほど狩りの成功確率は高い。
ㅤそれが俺に対して通用するかは分からないが、少しは緊張した方が良いだろう。
「……」
俺との距離、約5m。いつでも攻撃出来る状態だ。
ㅤさぁ……いつくる。
「…………」
リアンも攻撃のタイミングを見計らっている。
ㅤ俺がほんの少しでも気を抜いたら攻撃してくるだろう。だが、俺は気を抜かない。
ㅤそのまま、体感ではかなりの時間が流れた。
ㅤ戦闘についての知識が無い者は、この時間に飽き飽きしている。戦闘について経験のある者は、まだかまだかとドキドキしている。
ㅤこのまま静かに待つのも良いが、そろそろ行動しないとな。
ㅤ俺が剣を持つ手の小指を、ほんの少しピクッと動かした。それを確認したリアンが、すぐに動き出した。
ㅤ一瞬で5mの差を無くし、俺の目の前にはリアンの剣が今当たろうとしている瞬間。
「っ!?」
まさかの速さに驚き、咄嗟にしゃがんでリアンの身体を蹴った。
ㅤそのまま蹴り飛ばされたリアンの身体は、横の壁へと打ち付けられる。
「あぶね……」
まさかリアンの限界が、あれほどにも速いなんて思わなかったな。もうちょっと手を抜いていたら負けたいただろう。
「……やっぱり無理でしたか」
リアンはまた、ゆっくりと俺に近づいてくる。
ㅤ闘技場での戦闘は、サハルの作り出した結界によって身体は傷つかないようになっている。
ㅤさっきの蹴りも、本来なら身体を真っ二つにしている威力だ。そんな蹴りを咄嗟に出してしまったという事は、俺は不注意で人を殺してしまうという事。
ㅤもっと集中して、力を抑えて戦うか。
「今度は私から行くよ」
《透明化》の技能を使い、リアンの視界から消える。
ㅤしかし狼は鼻が利く。すぐに俺の居場所を特定して、その一点を見つめている。
ㅤ俺は透明化したまま、左手から氷の弾丸を作り出した。
ㅤ魔法によって、高速回転、空気抵抗無しの状態を作り出し。透明の弾丸をリアンの手に飛ばす。
バチィンッ!!
「!?」
リアンが突然の出来事にビックリしているが、手から剣は離れていない。流石だな。
ㅤしかし、リアンがビックリしている隙に後ろへと回り込んでいる。すぐに決着を付けるためだ。
ㅤこのまま本気のリアンと遊んでいるのも悪くはない。しかし、俺はリアンとの力の差をハッキリ分からせる為に、今決着を付ける。
「っ!!」
透明化を解いて、迫ってくる俺の気配に気づいたリアンが剣で防御の構えをとる。
ㅤしかし、遅かった。
ㅤ既に俺の剣はリアンの首に触れている。
「があっはっっ!!」
終わった。
『勝者ルト!』
まあ力の差が大きいからな、あっさり終わるのも仕方がない。
ㅤリアンを起こして、観客席に戻ろうとした時だ。
「ルト、お疲れ」
サハルが降りてきた。
「終わったね」
「まだ、最後に言うことがあるでしょ」
「?」
最後に……?
「今言わないで、いつ言うのさ」
「な、何を?」
「理想郷。作るんなら、着いてくる人がいるか聞かないといけないでしょ」
「あぁ〜……私疲れてるからサハルお願い」
久しぶりに一日中運動したしな。
「はぁ…………ミシェル!」
どこかにいるミシェルに声をかける。
『あっ……最後に国民の皆さんにお知らせがあります』
どうやらミシェルが伝えてくれるようだ。サハルとミシェル、仲良くなったよな。
『明日から、サハル様とルト様が新たな国を作る計画が始まります。
ㅤ新たな国、理想郷に移住したい方は今のうちにお知らせください』
随分と適当な言葉選びだな。
ㅤだが、次の瞬間観客席の全員が手を上げた。
「着いていきます!」
「一生着いていきます!」
「王女様〜!!」
このイベントでの好感度上昇は無駄にはならなかったようだな。
「どうやら全国民が移住したいらしいね」
「そうだね……明日から忙しくなるなぁ……」
「……ルト様?」
一日の疲れと、安心感からなのか分からないが、眠気に襲われた俺はその場で眠ってしまった。
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