魔王LIFE

フーミン

43話 いよいよ決勝へ

俺が話さないと戦いは進まないようだ。


「……まあ簡単に言うと、私はこの世界の神になったみたいなの」
「か、神?」
「そ。だから不可能な事はほとんど無いの」


魔眼を作れた理由を、簡単に話した。


「不可能な事は……無い?」
「そう」
「それって……私を元の世界に戻すこともできるの?」


……それはどうだろうか。俺はこの世界の神。他の世界にまで干渉できたとしたら、それはそれで有難いが……。
ㅤ変な光に聞いた時は、この世界の中で不可能は無い。って言ってたし……この世界限定の話。


「多分……それは無理だと思う」
「……そう」


チヒロは暗い顔をした。それほど前世に戻りたいのだろう。
ㅤ確かバイクで死んでたって言ってたよな。……ん? バイク?


「ちょ、ちょっと聞いていい?」
「えぇ」
「前世で死んだ時……信号無視した?」
「どうしてそれを?」


待て……もしそれが本当なら……俺にも責任あるんじゃないか?


「た、多分なんだけど……その時バイクに乗ってたの私なんだ……」
「えぇっ!?」


顔は隠れてたから見られてないだろうけど……チヒロはあの時のJKか。


「あの〜……戦わないんですか?」
「じゃああの時の貴女が私を殺して……一緒にこの世界に来たってこと?」
「そう……なのかも」
「あの〜……」
「静かに」


リアンがその場に座り込んで、地面に絵を描き始めた。しっぽが垂れ下がっている。
ㅤしかしなんでこんな事に気づかなかったんだ。バイクに轢き殺されたって、それも珍しいなんて言ってたなら分かるだろう。


「そう……貴女は私の不注意のせいで……この世界に……」


チヒロが落ち込んでいる。


「あ、あぁ嫌! 大丈夫大丈夫! 私はどちらかと言うとこっちの世界の方が好きだから! と、とりあえず試合再開させよ?」
「……そうね」


チヒロの顔が少しだけ明るくなった。


「リアンさん、もう良いですよ」
「はぁ…………」


リアンはダルそうに立ち上がった。
ㅤ本当にごめん。


ーーーーー


ㅤ改めて、準決勝を再開させた。
ㅤ相手はチヒロとリアン。どちらを倒しても俺は構わない。


「せいっ!」


リアンが俺へと斬りかかってきた。
ㅤ自慢の足の速さも、俺の反応速度よりは遅い。避けて足を軽く蹴る。


「あぶっ!?」


そのまま顔から地面へとコケた。
ㅤ更に前からはチヒロが迫ってきている。この場合、チヒロの攻撃をリアンに当てさせて決勝に持ち込むのも良いが、それだと少し詰まらない。
ㅤもう少しチヒロとリアンで戦ってほしい。


「!?」
「逃がしませんよっ!!」


コケたリアンが、俺の足をガッシリと掴んだ。
ㅤそのせいでその場から動くことが出来なくなった俺は、前から迫るチヒロの攻撃をどう対処するのか、思考を巡らせる。


「バリア〜」


左手を前に出し、ポーラの技を真似たバリアを出してみる。


「なっ!?」


衝突音がして、バリアに弾かれた剣がチヒロへと向かう。


ガンッ 「あふっ…………」
「え……」


その剣は、チヒロの頭部に直撃した。


『……チヒロ、戦闘不能! 勝者ルト、リアン!!』


すぐさまミシェルによって試合は終わった。
ㅤチヒロはその場に倒れている。


「えっと…………」
「カウンター成功ですね!」
「そ、そうだね……」


リアンは喜んでるようだけど……あれ? 良いの?
ㅤてっきりチヒロと俺で、前世で共に最後を迎えた者同士最後の戦いをすると思ったんだけど……。


「ん……痛たた……」


チヒロが目を覚ました。


「……負けた……のね」
「あっけなく」
「……貴女とは決勝で、本気で戦いたかったわ」


どうやら今までのは本気ではないらしい。それもそうだろうな。


「しばらく休憩時間が入るし、休もう」
「ルト様! 決勝は私と勝負です!」
「はいはい、そうだね〜」


リアンの頭を撫でてやると、「えへへ〜」と、気持ちよさそうに声を上げた。


「ちなみに、私は今まで本気で戦ってました!」
「……てっきり決勝で本気出すかと思ってたよ」
「ですよね! でも、私の実力はここまでです。優勝はルト様でしょう」


だろうな。
ㅤきっとチヒロが本気を出せば、リアンに勝てる。今回はたまたま運悪く、俺が予想外の技を使った事で負けてしまったんだ。


「何よ、その顔」
「いや。何か……どんまい」
「うるさいわね。次戦う時は絶対負けないわよ!」
「分かってる」


ま、俺に勝てるはず無いんだけどな。


『鐘が鳴ったら休憩時間は終了となります。それまでは自由行動です』
「ではルト様!」
「ん?」
「決勝まで勝ち進んだ私にご褒美をください」
「仕方ないねぇ」


ニコニコと笑うリアンを、強く抱きしめてやった。


ーーーーー


「「王女様!!」」
「キャー!」
「カッコイイ!」


待機室に戻ると、選手達が俺の元に集まってきた。
ㅤどうやら俺は女性達から好かれる顔らしい。


「ちょ、ちょっ……押さない……ふぐっ……」


大勢に押されて苦しい。


「貴女達、王女様が困ってるわよ」
「はぁ……ありがとう。チヒロ」


チヒロを睨む女性達。怖い怖い。


「皆、この人は私の大事な人だから。そんな目で見ちゃダメだよ」
「キャー! 私に話しかけてくれたわ!」
「違うわ、私よ!」
「カッコイイ声!!」


ダメだ……こいつら俺の声に興奮して、話の内容なんてどうでもいいって感じだ。


「大事な人、なんて言われると照れるわね」
「あれ? そっち系の人だったの?」
「何勘違いしてるの?」


チヒロに睨まれた……やっぱり怖い。


「……ねぇ」
「……な、何?」
「キャー! この雰囲気は!」
「もしかして!?」
「嘘っ!?」


突然、チヒロが顔を赤くしてモジモジし始めた。
ㅤ周りの女性達も、何だか興奮しているようだ。


「突然こんなこと言うのも……恥ずかしいんだけどね」
「うん……」
「……私も……リアンさんのようになりたいの」
「リアン……の?」


何故……リアンのように? 俺のようになりたい、なら胸張って「頑張るんだぞ」なんて言ってやれるんだが。


「あのね。私も……リアンさんのように、王女様の近くにいたいの」
「キャー!!! 何何!? どうなるの!?」
「凄い!」
「私を……雇ってください」


その言葉に、周りの女性達は顔を抑えて叫んだ。


「そ、そんな事でいいの?」
「こんな事が良いの」
「……別に良いけど……給料発生しないよ?」
「大丈夫」


ん〜……まあチヒロのメイド服姿も見てみたいって思ってたしな〜。
ㅤそう思って、少し離れたところにいるリアンの服を見ようとしたところ。


「……」


物凄い形相で睨まれていた。


「な、何かな?」
「浮気ですか」
ㅤ「浮気!? 王女様は既に付き合っていたの!?」
ㅤ「キャー!」
「ち、違うよ。私にとって一番はリアンだよ」


言葉だけだと表現しきれないと思い、額にキスしてみた。


「こ、これで分かったかな」
「あ…………あ、あ……ブフッ!」


リアンはその場で鼻血を流して倒れた。
ㅤ周りの女性達も、幸せそうな顔で失神していた。


「チ、チヒロ……これは?」
「知らないわよ。王女様がしたんでしょ」


えぇ……リアンには起きてもらわないと決勝戦えないんだけど……。
ㅤ俺はとりあえずその場から逃げた。


ㅤキスで大勢の人を失神させるテロ事件、犯人は王女様。
ㅤなんて面白い噂が広まったら恥ずかしいじゃないか。

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