魔王LIFE

フーミン

42話 準決勝

女性達が協力してチヒロを追い詰めていく。
ㅤその状況を、上から眺めているというのも失礼な話だ。


しかし、数名は透明化した俺の居場所を分かっている奴がいるようだ。
ㅤチヒロ、ポーラ、他に2名。しかし俺に攻撃してくる気配はない。攻撃が届かないのか、あえて攻撃しないのか……どうだろう。


ㅤついにチヒロが、相手の武器を奪うだけでなく戦闘不能にしはじめた。


「あ、本気出したんですかね」
「いや……まだ本気じゃないね」


チヒロの顔は余裕の表情だ。それに対し、相手は必死に攻撃を避けている。ポーラを除いてな。


「これはすぐ終わりそうですね」
「そうだね。準決勝は私とリアンとチヒロとポーラかも」


そんな事を話していると、あっという間に4人になった。ポーラが他の相手を裏切ったのだろう。
ㅤ裏切るという言い方はおかしいか。そもそも協力する競技じゃない。


『え、えぇ〜……2人?』
「私達もいるよ」


ミシェルが混乱しているところで、俺が透明化を解いて地上に降りた。


『ほっ……では、戦闘不能の方がいなくなったところで準決勝を始めます』
「さて、リアン」
「分かってます……」


ここからはリアンとも戦うことになる。正々堂々、個人の力で勝ちぬいてもらわないとな。


ㅤ数名の兵士がせっせとやってきて、気絶した人達を運んでいった。これで周りは片付いたな。
ㅤ俺、リアン、チヒロ、ポーラは、それぞれ距離を置いた。


ㅤ俺はまだ全員の戦い方を知らない。相手も、俺の戦い方を知らない。そもそも俺自体どう戦えば良いのか分からない。


『早速、準決勝を始めっ!』


その合図が聞こえた瞬間、ポーラは俺に。チヒロはポーラに。リアンはチヒロに飛びかかった。
ㅤ俺はと言うと、その3人から少し距離を取って巻き込まれないようにしていた。


「王女様! 逃げないでくださいっっ!」


ポーラがチヒロの攻撃を避けながら、俺へと迫ってくる。
ㅤなんてカオスな状況だ……。


ㅤ仕方ない。ここは俺も参戦するしかないだろう。
ㅤ最初の相手は……ポーラでいいか。決勝はチヒロかリアン、どちらかと戦いたいしな。


「なっ!?」


ポーラが俺に突きを放った瞬間、姿勢を一気に低くして、そのままポーラを担いだ。
ㅤこのままだと背中に刺されてしまうので、担いだ勢いで後ろへと投げ飛ばす。
ㅤすると前からチヒロが迫ってくるので、最低限の動きで躱し、その後ろのリアンの体を掴んで動きを止める。


「よ、容赦しませんからねっ……!」


若干躊躇しつつも、俺に剣を刺そうとした。
ㅤまあそんな事は想定済み。すぐさま後ろから迫ってくるポーラに投げつける。


「きゃっ!」
「あふっ」


どうやらリアンのお尻が顔に直撃したようだ。
ㅤそのまま倒れ込んだところに、チヒロがポーラの顔に剣を振り下ろす。


「くっ……!」


ㅤ終わったか……そう思ったが、何故か激しい衝突音が聞こえた。


「ふ、ふふっ……危ないところだった」


左手に薄くて青白い壁が出来ていた。バリア系か。
ㅤチヒロの攻撃を咄嗟に防いだポーラは、リアンを投げ飛ばして距離を取る。


「そろそろ本気を出したらどうかしら」


チヒロが剣をクルクルと回しながら言った。


「そういう貴女も、いつまで手を抜いてるつもりですか?」


なんだか面白くなってきたな。
ㅤ観客達も、これからどうなるのか楽しみにしているようだ。


「よ……よくも投げましたねっ!」


リアンが立ち上がって、自慢の足の速さでポーラの元へ向かった。
ㅤ最初にリアンを投げたのは俺なんだが……俺はノーカウントか。


「分かりやすい攻撃は防ぎやすくて助かるわ」
「それズルい!」


リアンの真正面からの斬りつけをバリアで防がれる。


ㅤあのバリア役に立ちそうだな。俺も後で使ってみよう。


ㅤそんな事を考えていると、突然リアンが浮かんだ。それも足を上に向けて。


「きゃあっ! な、何っ!?」
「ようやく見せたわね。貴女の能力」


チヒロは何か分かっているようだが……なんだ?


「その手は何本出せるのかしら」


手? 何本?


「一本しか出せないわ」


どうやらチヒロには、リアンの足を掴む手が見えるらしい。魔眼を持っているから使えるのか。
ㅤん〜……仕方ない。この際俺も魔眼手に入れるか。


ㅤ魔眼というのは、目に魔力を送れる血管のような物を持っている人だけが使える能力。目に魔力を送ることで、様々な役割を果たす。
ㅤとりあえず体内の魔力の流れを感じながら、目に繋がるように魔力で血管のような物を作っていく。
ㅤこれは 《世界の神》 を持っているから出来ることだ。普通は生まれつき、もしくは手術で使えるようになる。


ㅤ目に魔力が通った感覚がやってきた。無事成功したようだ。


「王女様……貴女今……何をされましたか?」


ポーラが有り得ない物を見るような目で、見つめてきた。


「手があるらしいから、それを見るために魔眼作ってみたんだけど……変かな? ……あ、見えた」


目に魔力を流してみると、何やら真っ黒な手がフワフワと浮いている。手首から先しかないな。


「魔眼を作った!?」
「えっ!?」


これには流石のチヒロも驚いたようだ。


「今ですっ!」


驚いている隙に、リアンがポーラへと剣を投げつけた。


「あっ……」


その剣は一直線にポーラの頭部に飛んでいき、ガツンと当たった。
ㅤそのまま気絶してしまった。


「リアンさん……少しは空気を読めないんですか?」
「へ?」
「はぁ……」


リアンの行動に、チヒロを頭を抱える始末。
ㅤ確かにそのタイミングはおかしいぞ、リアン。


ㅤ頭にハテナマークを浮かべるリアンもまた、可愛いな。


「気を取り直して……魔眼を作ったってどういう事?」


バトルそっちのけで、俺に質問するとは面白い奴だ。
ㅤ観客達もチヒロの質問の答えが気になるようで、皆俺へ視線を向けている。


「……戦わないの?」
「リアンさんは少し静かにしてくれる?」


はぁ……なんだこれ。

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