魔王LIFE
39話 トーナメントバトル
水着審査が終わり、第二審査が始まる。
ㅤ先程の清楚系美女の言っていたとおり、トーナメント形式の勝ち抜きバトル。武器はサハルが用意して、闘技場で始まるそうだ。
「ルト」
「あ、サハル」
忙しいだろうに、サハルは俺の元に来てくれた。
「ルトなら負けることは無い。優勝頑張って」
「う、うん。でも……」
「何かあったのかい?」
言っていいのだろうか……。特に問題は無さそうだが、相談はした方が良いか。
「さっきの水着審査の時、私が出る前に凄い綺麗な人いたでしょ?」
「確かにいたね。それがどうかしたのかい?」
「サハル、その人にトーナメントバトルの事伝えた?」
「……? 伝えてないけど?」
やっぱりか……。あの女性はサハル以外知るはずのない情報を持っていた。
ㅤもしかすると、異世界人なのかもしれない。心を読むような能力を持った何か。気をつけないとな。
「どうしたのか僕にも教えてほしい」
「多分だけど、その女の人は人の心を読める技能を持ってるかもしれない。さっきステージ裏で話した時、誰も知らないはずのトーナメントバトルの事を私に言ってきたの」
「心を……へぇ。僕の心を勝手に読んだのか」
何か読まれて困ることでもあるのだろうか。
ㅤあまりそこについては触れないようにしよう。
「心を読めるって事は、戦闘に関してはかなり相手が有利。どうにかできるかい?」
「《世界の神》技能があれば出来そうだけど、それじゃズルいし正々堂々勝ってみせるよ」
「その自信はどこから?」
「……」
「もしそれで負けたらどうするつもり?」
ぐっ……でも《世界の神》なんて使ったら絶対詰まらないしな。
「な……なんとか無心で戦えば--」
「無理だよ、戦闘は頭脳戦。相手の動きを先読みする事が必勝法。無心で戦って勝つなんて事は不可能だ」
くっ……それでも何とかしてみせる。
ㅤ他の技能を使えば……なんとか、な。
「まあ僕が口出しすることじゃない。頑張って」
そう言い残すとどこかへ去っていった。
「ふぅ……頑張ろう」
ーーーーー
〜闘技場-待機室〜
そこにはトーナメント表が大きく貼ってあった。
ㅤ俺の最初の相手は……名前だけじゃ分からないな。フィリアとかいう人だ。
ㅤ待機室には大勢の女性が集まっている。待機室はいくつかの部屋に別れていて、そのどこからでも場内、観客席に行くことが出来る。
「あ、あのっ……相手になるフィリアですっ……宜しくお願いしますっ!」
「おっ」
ち、小さい。俺も身長は小さい方なんだけど、フィリアは更に小さかった。
「えっと……御手柔らかにお願いします」
王女の前だからなのか、かなり緊張した面持ちだ。
「肩の力を抜いて、リラックスリラックス」
「わっ……」
フィリアの肩をとんとんと叩いてリラックスさせる。緊張していると戦闘に集中できないからな。
『これより、テル対シェルの戦闘が始まります』
「あ、もうすぐ始まるみたいだから一緒に観戦しようか」
「そっ、そんなっ! 王女様と一緒になんてっ!」
「そんなに緊張しないで。肩書き上は王女だけど中身は普通の人だから」
「わわっ」
フィリアの手を引っ張り観客席へと向かった。
ㅤ待機室のすぐ横に階段があり、そこを上がれば選手用の観客席がある。
「ほら、横に座って」
「で、では失礼します……」
『テルvsシェルの試合、開始!』
ミシェルの声と共に、大きな鐘の音が響いた。
ㅤどっちがテルでどっちがシェルか分かんねぇな。
「銀髪のエルフがテル。茶髪のヒューマンがシェフよ」
「あっ! 清楚系美女!」
「わわわ……美人さんに囲まれたぁ……」
いつの間にか俺達の後ろに座っていた。俺が見た時はいなかったし気配も感じなかったな。
「その名前はやめて。ちゃんとチヒロという名前があるわ」
「チヒロ??」
「珍しい名前でしょ?」
チヒロって確実に日本人の名前じゃないか。
ㅤいやでも……この美しさはチート級。まさか転生者か。
「異世界人?」
「そうよ。ただ私は珍しい方法でこっちに来たけどね」
「珍しい……?」
俺とチヒロは、試合の内容など気にせず会話を続けた。
ㅤフィリアはガチガチに固まりつつも試合を眺めている。
「私の世界では一般的に、転生者はトラックに轢かれて。転移者は魔法陣で転移させられる。のが鉄板なの」
「は、はぁ」
「私の場合、死因はバイク」
「バイク?」
確かに珍しいな。リベルトもトラックでしか死んだ事ないのに、チヒロさんはバイクか。
「ま……あれは私の不注意のせいだから、あまり話す必要はないわ」
「そう……それでチヒロは日本人?」
「? どうして分かったの?」
やっぱりな。
「実はここだけの話……私も元日本人なの」
「そう。それは残念」
「どういうこと?」
「私は今日、ここで貴女を殺して元の世界に戻るつもりだったのよ」
お、俺を殺して!? そ、そりゃ凄いな。簡単に殺す、なんて言葉が思い浮かぶのか。恐ろしい日本人だ。
「でも殺せそうにないわね」
「分からないよ?」
「いえ、分かるわ。貴女は異常なほど発達している。脳も、身体能力もね。流石魔王としか言いようがない」
「へへへ……褒められると照れるなぁ」
「そうやって隙を見せると即死よ?」
「っ!?」
いつの間にか、俺の首元には果物ナイフサイズの刃物が突きつけられていた。
ㅤこ、こえぇぇぇぇえ!!? なんだこの人、前世は殺人鬼でもしてたのかってくらいこえぇよ!
「ふっ、冗談よ。でも一国の王女として警戒しない方が良いわ。護衛を付けた方が良さそうよ」
「一応護衛になれそうな……プロの転生者がいるんだけどね」
リベルトは今頃、ガルムとベントー相手にしてリアクションを楽しんでいる頃だろう。それか、既にこの会場に来ているかだな。
『ついに決着が着きました! 勝者テル!』
お、エルフが勝ったか。見てなかったわ。
「何なら私が護衛になっても良いのよ?」
「ん? あ、チヒロが護衛になると隙あらば殺そうとしてきそうで怖いなぁ……」
「あ、バレた」
えぇ……。
「そうあからさまに引かないで。冗談よ」
お前の冗談は冗談に聞こえねぇんだよ……。
ㅤマジで恐ろしい思考してるな。前作はメンヘラ暗殺者かこの野郎。綺麗な見た目はハニートラップか。
ㅤ俺の中でチヒロの評価はダダ下がりだ。
『次、トゥーリ対レミー。…………始め!』
「次こそは試合見るわよ」
「分かった分かった。観戦中に殺さないでね」
「そんな事しないわよ」
隣のチヒロを警戒しつつ、試合へと意識を移した。
ㅤ俺もあそこで戦うことになる。そしていずれ、横のチヒロとも戦うことになる。
ㅤ《世界の神》禁止縛りで優勝できるのか。俺には分からないが、絶対に優勝してみせる。
「随分と気合入ってるのね」
「やっぱ心読めるんだね」
チヒロの技能には注意しなければ……。
ㅤ先程の清楚系美女の言っていたとおり、トーナメント形式の勝ち抜きバトル。武器はサハルが用意して、闘技場で始まるそうだ。
「ルト」
「あ、サハル」
忙しいだろうに、サハルは俺の元に来てくれた。
「ルトなら負けることは無い。優勝頑張って」
「う、うん。でも……」
「何かあったのかい?」
言っていいのだろうか……。特に問題は無さそうだが、相談はした方が良いか。
「さっきの水着審査の時、私が出る前に凄い綺麗な人いたでしょ?」
「確かにいたね。それがどうかしたのかい?」
「サハル、その人にトーナメントバトルの事伝えた?」
「……? 伝えてないけど?」
やっぱりか……。あの女性はサハル以外知るはずのない情報を持っていた。
ㅤもしかすると、異世界人なのかもしれない。心を読むような能力を持った何か。気をつけないとな。
「どうしたのか僕にも教えてほしい」
「多分だけど、その女の人は人の心を読める技能を持ってるかもしれない。さっきステージ裏で話した時、誰も知らないはずのトーナメントバトルの事を私に言ってきたの」
「心を……へぇ。僕の心を勝手に読んだのか」
何か読まれて困ることでもあるのだろうか。
ㅤあまりそこについては触れないようにしよう。
「心を読めるって事は、戦闘に関してはかなり相手が有利。どうにかできるかい?」
「《世界の神》技能があれば出来そうだけど、それじゃズルいし正々堂々勝ってみせるよ」
「その自信はどこから?」
「……」
「もしそれで負けたらどうするつもり?」
ぐっ……でも《世界の神》なんて使ったら絶対詰まらないしな。
「な……なんとか無心で戦えば--」
「無理だよ、戦闘は頭脳戦。相手の動きを先読みする事が必勝法。無心で戦って勝つなんて事は不可能だ」
くっ……それでも何とかしてみせる。
ㅤ他の技能を使えば……なんとか、な。
「まあ僕が口出しすることじゃない。頑張って」
そう言い残すとどこかへ去っていった。
「ふぅ……頑張ろう」
ーーーーー
〜闘技場-待機室〜
そこにはトーナメント表が大きく貼ってあった。
ㅤ俺の最初の相手は……名前だけじゃ分からないな。フィリアとかいう人だ。
ㅤ待機室には大勢の女性が集まっている。待機室はいくつかの部屋に別れていて、そのどこからでも場内、観客席に行くことが出来る。
「あ、あのっ……相手になるフィリアですっ……宜しくお願いしますっ!」
「おっ」
ち、小さい。俺も身長は小さい方なんだけど、フィリアは更に小さかった。
「えっと……御手柔らかにお願いします」
王女の前だからなのか、かなり緊張した面持ちだ。
「肩の力を抜いて、リラックスリラックス」
「わっ……」
フィリアの肩をとんとんと叩いてリラックスさせる。緊張していると戦闘に集中できないからな。
『これより、テル対シェルの戦闘が始まります』
「あ、もうすぐ始まるみたいだから一緒に観戦しようか」
「そっ、そんなっ! 王女様と一緒になんてっ!」
「そんなに緊張しないで。肩書き上は王女だけど中身は普通の人だから」
「わわっ」
フィリアの手を引っ張り観客席へと向かった。
ㅤ待機室のすぐ横に階段があり、そこを上がれば選手用の観客席がある。
「ほら、横に座って」
「で、では失礼します……」
『テルvsシェルの試合、開始!』
ミシェルの声と共に、大きな鐘の音が響いた。
ㅤどっちがテルでどっちがシェルか分かんねぇな。
「銀髪のエルフがテル。茶髪のヒューマンがシェフよ」
「あっ! 清楚系美女!」
「わわわ……美人さんに囲まれたぁ……」
いつの間にか俺達の後ろに座っていた。俺が見た時はいなかったし気配も感じなかったな。
「その名前はやめて。ちゃんとチヒロという名前があるわ」
「チヒロ??」
「珍しい名前でしょ?」
チヒロって確実に日本人の名前じゃないか。
ㅤいやでも……この美しさはチート級。まさか転生者か。
「異世界人?」
「そうよ。ただ私は珍しい方法でこっちに来たけどね」
「珍しい……?」
俺とチヒロは、試合の内容など気にせず会話を続けた。
ㅤフィリアはガチガチに固まりつつも試合を眺めている。
「私の世界では一般的に、転生者はトラックに轢かれて。転移者は魔法陣で転移させられる。のが鉄板なの」
「は、はぁ」
「私の場合、死因はバイク」
「バイク?」
確かに珍しいな。リベルトもトラックでしか死んだ事ないのに、チヒロさんはバイクか。
「ま……あれは私の不注意のせいだから、あまり話す必要はないわ」
「そう……それでチヒロは日本人?」
「? どうして分かったの?」
やっぱりな。
「実はここだけの話……私も元日本人なの」
「そう。それは残念」
「どういうこと?」
「私は今日、ここで貴女を殺して元の世界に戻るつもりだったのよ」
お、俺を殺して!? そ、そりゃ凄いな。簡単に殺す、なんて言葉が思い浮かぶのか。恐ろしい日本人だ。
「でも殺せそうにないわね」
「分からないよ?」
「いえ、分かるわ。貴女は異常なほど発達している。脳も、身体能力もね。流石魔王としか言いようがない」
「へへへ……褒められると照れるなぁ」
「そうやって隙を見せると即死よ?」
「っ!?」
いつの間にか、俺の首元には果物ナイフサイズの刃物が突きつけられていた。
ㅤこ、こえぇぇぇぇえ!!? なんだこの人、前世は殺人鬼でもしてたのかってくらいこえぇよ!
「ふっ、冗談よ。でも一国の王女として警戒しない方が良いわ。護衛を付けた方が良さそうよ」
「一応護衛になれそうな……プロの転生者がいるんだけどね」
リベルトは今頃、ガルムとベントー相手にしてリアクションを楽しんでいる頃だろう。それか、既にこの会場に来ているかだな。
『ついに決着が着きました! 勝者テル!』
お、エルフが勝ったか。見てなかったわ。
「何なら私が護衛になっても良いのよ?」
「ん? あ、チヒロが護衛になると隙あらば殺そうとしてきそうで怖いなぁ……」
「あ、バレた」
えぇ……。
「そうあからさまに引かないで。冗談よ」
お前の冗談は冗談に聞こえねぇんだよ……。
ㅤマジで恐ろしい思考してるな。前作はメンヘラ暗殺者かこの野郎。綺麗な見た目はハニートラップか。
ㅤ俺の中でチヒロの評価はダダ下がりだ。
『次、トゥーリ対レミー。…………始め!』
「次こそは試合見るわよ」
「分かった分かった。観戦中に殺さないでね」
「そんな事しないわよ」
隣のチヒロを警戒しつつ、試合へと意識を移した。
ㅤ俺もあそこで戦うことになる。そしていずれ、横のチヒロとも戦うことになる。
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