魔王LIFE

フーミン

38話 第一審査

色々と悩んだ日の翌日、ついにイベントが開催される。
ㅤ俺の部屋にはサハル、ミシェル、リベルトの3人が集まっている。リアンは同じイベントに参加する為、別の部屋で準備しているそうだ。サハルの手には海で着るような普通の水着。


「さぁ着替えて」
「えっ……ここで?」
「ぼ、僕は部屋の外にいるから」


ミシェルは部屋から出ていき、サハルとリベルトが残った。


「さぁ、着替えて」
「何なら手伝いましょうか」
「い、いやいいから! 自分で着替える!」


そういって水着を取って、2人を部屋の外へと追いやった。


「ふ、ふぅ……」


人生初、女物の水着だ。こんな露出の高い水着……世の女性はこんな水着着ても恥ずかしくないのか。とんだビッチだな。
ㅤいや……俺も着るしかないんだ。


ㅤそう思って、いざ上半身を裸にして着けようとしたのだが……紐で結ぶ作りになっていて、どうやって結べば良いのか分からない。
ㅤ見えない位置にある紐をどのように結ぶのか……。


「ミ、ミシェル……ちょっと着て……」


結局ミシェルに結んでもらうことにした。サハルとリベルトは変な事をしでかしそうだからな。


「こ、これで……良いのかな?」
「ありがとう!」


動いても解ける事はないな。後は下だけだ。
ㅤ下も紐で結ぶような作りになっているが、今度は目で見える位置にある為自分で出来る。


「じゃあもう外で待ってていいよ」
「わ、分かった」


しかし寒いな。ほとんど裸じゃないか。
ㅤ下半身を裸にしたところで、若干興奮したけど直ぐに下を着た。
ㅤ一応解けないように紐同士をくっつけるように魔法使ったから、ハプニングなんかはないだろう。


「よしっ……」


立ち鏡を見て、本当の最終確認。
ㅤ良い感じの筋肉に小さめの胸。胸を無視すればスタイル抜群だ。


「終わったか〜?」
「ちょっ、急に入ってこないで」
「待ちきれなくてね。って、おぉ? かなり似合ってるね」


サハルが部屋に入ってきた。それに続いてミシェルとリベルトもやってきた。


「おぉっ! これは確実に優勝できそうだよ」
「まだ分からない。評価は女らしさと美しさ、エロさが必要だ」
「エロさ以外はリアンに教わったから大丈夫!」
「審査員は男性国民だ。気合を入れないと優勝逃すぞ」


別に優勝出来なくても良いんだけどな。俺はただ自分の肉体美を見せたいだけだ。


「ま、楽しみにしてなよ」
「じゃあ僕は会場に行くから。ミシェル、司会進行よろしく」
「ん? ミシェルが司会なの?」
「ああ、僕にも何か出来ないかなと思ってサハルに頼んだんだ」


へぇ〜ミシェルに司会なんて出来るのか心配だけど、まあ勇者だし大丈夫だろう。


「じゃあルト、水着の上に服でも着てから会場の裏に着てね。ミシェルが合図を出したら、女性全員がステージに上がる。その後服を脱いでもらうから」


なるほど。進行はそんな感じね。


「まあほとんどアドリブって感じで。じゃあね」
「ええっ!?」


最後に凄く心配な言葉を残して、俺は部屋に1人残された。
ㅤアドリブって……。


ーーーーー


いつもの白いロングコートにズボンを履いて、ステージ裏側へとやってきた。
ㅤそこにいる女性達、人間やハーフエルフ、エルフに獣人族やヴァンパイア、オーガ等。他にも様々な種族の女性達が闘志をメラメラと燃やしている。


「あっ、ルト様!」
「おぉ」


メイド服のリアンも当然いた。


「ルト様の水着はどんな感じですか?」
「ん〜まあ普通かな。リアンは?」
「私はですね……チラッ……」


メイド服の隙間から見せてくれた。
ㅤそれはなんとスク水。この世界にも前世のようなスクール水着があったんだなぁ、となんとなく思った。


「実はこれ、サハル様が用意してくれたんです」


アイツの趣味かよ!


「似合うと思うよ」
「本当ですか!? じゃあ私……準優勝目指しちゃおっかな!」
「なんで優勝じゃなくて準優勝?」
「だって優勝はルト様ですから!」


どうやらリアンの中では俺が優勝することは確定しているようだ。
ㅤそれでもし優勝できなかったら俺が恥かくぞ。


「楽しみですね」
「緊張するなぁ〜……」


周りの女性達もかなり美人が多い。ただ恋愛感情は抱かないな。もしかすると、リアン限定なのかもしれない。
ㅤあの服の下にある水着、そしてどれだけ鍛えているのか。気になるな。


「あ、そろそろ始まりますよ」


ーーーーー


うっ……いざステージに立つと緊張するなぁ……。
ㅤステージの前には全国民集まっている。10000……それ以上か? 遠くの人は見えているのだろうか。


「あ、あ〜……えぇ〜これより……サハル様主催のイベント……『ドキドキ! 女だらけの水着大会』……始まります!」


僕が緊張した感じでイベント始まりの合図を告げると、予想以上に会場は盛り上がった。
ㅤ会場全体が音で振動して、脳や心臓にビビビビと響いている。


ㅤで……さっきサハルから突然、面白い事を言えって言われたし……何か言わないとな。


「えぇ〜女性達の水着を見た後、皆さんの投票で優勝者が決まります……。
ㅤえっと……」


まずい。何も面白いことが思い浮かばない。


「……ん?」


チラッとステージ端を見ると、サハルが何か言っている。


「下ネタで良いからっ!!」


し、下ネタ!? な、なんでこんな大勢の人の前で下ネタなんて……ど、どうしよう……。


「え、えっと……今から美しい身体の女性達がステージにやってきます。くれぐれも……あの……席から立って暴れるような事はせず、椅子に座って落ち着いた状態で審査してください」


これはちょっと意味深すぎるかな……。でも下ネタってバレないし良いよね。


「審査基準は3つ。女らしさ、美しさ、エロさ。その三つを合わせもつ女性、最も良かった人に投票してください。
ㅤ……では……女性の皆さん! どうぞ!」


こ、これで良いかな……?
ㅤチラッとサハルの方を見ると、凄い睨まれていた。
ㅤ俺は口で無理無理と伝えて首を横に振った。するとサハルが手招きしてきたので、急いでそこに向かった。


「な、何?」
「今から僕が司会進行するから、ミシェルは見てて」
「わ、分かった」


本当に大丈夫なんだろうか。
ㅤ大勢の女性達がステージに登り終わり、その中からルトを探す。


ㅤあ、僕に手を振ってる。可愛いなぁ……。
ㅤおもわず手を振り返してしまった。


「どうも、サハルだ。今ここにいる女性達はこの日の為に、一生懸命体を鍛えた。その努力を無駄にしないよう、君達も一生懸命投票相手を選んでほしい。
ㅤ中でもオススメは、僕の嫁のルトだ」


……嫁? ルトとサハルは……ん? 王様と王女って関係じゃなくて結婚してたの?
ㅤえっ……知らなかったんだけど。


「さて、そろそろ始めようか。皆も水着姿見たいよね?」


サハルがそういうと、国民達は大声で同意した。


「もっと大きな声で!」
「「見た〜〜いっっ!!!」」
「よし。じゃあ女の人達、服脱いで」


いよいよ皆が水着姿になる。僕の高鳴る鼓動を深呼吸で抑えつつ、ルトへと視線を向けた。


ーーーーー


「寒っ!」


服を脱いで、改めて寒さを実感した。


「ル、ルト様……どうですか?」
「ん? おぉ似合ってる!」


リアンのスク水姿、かなり似合ってるな。フワフワの毛並みを頑丈な布でピッチリと抑え、尻尾は後ろに穴がある為見えている。


「か、可愛いね」
「ありがとうございます」


身長は俺よりも高いはずなのに、まるで小動物のようだ。


「女性達には腰に番号プレートが貼ってある」


俺は142番だな。リアンは11番だ。


「10人数前に出てもらって、一緒にポーズを取ってもらう。その中で最も良かった女性の番号を、手元にある紙に書いて提出するように」


ってことはリアンはすぐに出番が来る訳か。


「じゃあ早速始めようか。1番から10番の人は前に」


ゾロゾロと綺麗な女性達が前に出た。


「あ、ポーズは好きなタイミングでね。終わったら自分で戻って。面倒くさいから10人が戻ったら次の10人自分で出てって」


うわぁサハルの適当さ加減が半端ないな。


ㅤステージ前に出た女性達がそれぞれポーズを決めた。


「レ、レベル高いですね……」
「思ってたより厳しいかも……」


後ろ姿だけなのに、かなりセクシーな雰囲気が分かる。ブワッと色気の香りが鼻に当たった。
ㅤ男性国民達は興奮した様子で奇声を上げている。獣め。


「つ、次は私ですね」
「頑張って!」
「はいっ!」


次はリアンだ。俺の先生でもあるからな、かなりの数は投票されるだろう。


10人が前に出て、ポーズを取った。
ㅤやはりリアンの輝きは明らかに違った。母性本能をくすぐる後ろ姿にキュンキュンしてしまう。
ㅤ国民達の反応も、最初とは全く違うほど大きな歓声を上げた。


「ど、どうでした!?」


リアンが戻ってきて、疲れた様子で聞いてきた。


「優勝できるんじゃない?」
「いいえ! 準優勝ですっっ!」


俺正直勝てる気がしないんだけど……。
ㅤだって他にも立ってるだけで色気オーラがプンプンする女性が何人かいるし、これは優勝は難しそうだな。


「皆さんレベル高いですね」
「女は負けず嫌いだからね。死ぬほど努力したんだと思うよ」
「でも、ルト様の美しさは確実に別格ですよ?」
「そう?」


お世辞でも嬉しいな。


「だってほら、前の10人は見らずにずっとルト様の事を見てる人が……何人もいますし」
「よく見えたね」
「獣人ですから!」


確かによく見てみると、俺と目が合う人が多いな。
ㅤ周りを見渡すと、俺と競う相手の女性達も俺を見て顔を赤く染めている。
ㅤ《モテモテ》技能の効果だろうから、そんなに嬉しくはない。


ㅤ数名は俺を見て悔しそうに顔を歪める人がいる。敵意丸出しの女性が数名。俺に好意を持つ女性が数十名。


「ルト様なら優勝できますよ。他とはオーラが違いますから」
「ん〜……そうかな」


まあ優勝できそうっちゃできそうだけど、あまり自信は持たない方向性で行こう。


ㅤステージ端にいるサハルとミシェルも俺をずっと眺めていた。こうしてみると二人とも馬鹿っぽいな。


ーーーーー


ハプニングが起きた。


ㅤ120〜130組み目の女性が前に出た時、観客の数名が鼻血を噴射して倒れた。
ㅤ126番目の女性、その人の色気が半端ないからだ。


「あの人凄いですね……ドキドキします」
「恐ろしいね……あんなに色気って出るのか」


身体一つ一つの部位が、全ての生き物を魅力する。見えてしまうんじゃないかと思うほど小さな水着。その色は肌の色と同じで、ほぼ裸にも見える。
ㅤ一見ビッチのような雰囲気だが、顔は清楚系美女。黒髪灼眼で、動く度に甘い香りが漂う。


「……」
「次ルト様ですよっ!」
「……あっ、あぁうん」


見惚れてしまった。
ㅤすぐに気を取り直し、俺は前に出た。


「ふぅ……」
「あっっ!!」
「えっ!?」


横にいた女性が、不自然によろけて俺を付き倒した。
ㅤこの女は……俺に敵意を持ってる女だ。


「あら、失礼」
「い、、いえ……」


改めて立ち上がる。
ㅤすると、観客席の男性達ほぼ全員が鼻血を流して倒れた。


「え……?」
「ルト様! 水着!!」


リアンの声でハッと水着を見ると、上の水着が下に落ちていた。


「ちょっ!」


すぐに拾って胸を隠すも、既に全国民は俺の胸を見た。


「小さな胸、見られてしまいましたね」


確実に横の女の仕業だろう。付き倒してきた時に紐を解いたのだ。
ㅤ下の紐は魔法で固定していたが、上は確実に忘れていた。


「あら? 私の仕業ではありませんわ」


俺は話しかけないようにして、サハルを呼んだ。


「これどうするの」
「全員気絶しちゃったね。ま、良かったんじゃない」
「どういうこと?」
「ルト優勝だよ」


サハルはそういって俺にニカッと微笑んだ。
ㅤいや分からないんだが……。


「今のは男にとって最高のご褒美だっただろうね。横の女の企みは失敗ってこと」
「失敗?」
「女にとって小さな胸は恥ずかしいこと。それを全国民に見せて恥かかせようとしたんだろうね」


俺が隣の女を見ると、どこか遠くを見て知らないふりをしていた。


「ちょっとアンタ! 謝りなさいよ!」
「そうよ! クズ女!」
「王女様になんてことするの!? このブス!」


周りの女性達にボロクソ言われて怯んだ様子を見せた女に、俺が止めを刺す。


「優勝にしてくれてありがとう」


それだけだ。その言葉を笑っていうだけで、勝ち確定。


「ほら! 王女様が許してくれたわ!」
「なんて優しいの!?」
「ああ寛大なる王女様……」


これで確実に、目の前の女は負けだ。


「う、うるさいわね! 私は何もしてないって言ってるでしょ!?」


しかしその顔は涙目。悔しそうに表情を歪めている。
ㅤまあ……なんだ。女ってのは簡単に人を蹴落とそうとするけど、集団で集まった女には勝てないって事だ。
ㅤ怖いな、女って。


「えっと……サハルこれ結んでくれる?」
「あっ! 私が結びます!」


リアンが駆けつけて結んでくれた。


ㅤまあこれで男性国民、そして女性国民の皆中では、俺の評価はうなぎ上りだな。


「ルト様恥ずかしくなかったんですか?」
「ん、別に恥ずかしくはないよ。見られるくらいはね」
「結果的に良い方向に動きそうだね。観客達が起きたらイベント続けるから、自分の番が終わった人はステージ裏でゆっくりしてて」


サハルが女性達を誘導していく。


「あ、君は残ってね」


俺を付き倒した女だけは、サハルに止められた。
ㅤあの顔は酷いことをする時の顔だ。残念だったな。


ーーーーー


自分の服を着て、ステージ裏に戻った。


「いやぁ〜凄かったですね」
「何が?」
「ルト様の胸、意外と可愛かったです」
「う、うるさいなぁ……そう言われると恥ずかしくなるじゃんか」


そりゃ小さい胸だけど、確かに柔らかいしブラすれば谷間はできる。それを可愛いって……。


「王女様!」
「王女様〜!」
「ん?」


他の女性達が集まってきた。


「私達、王女様のように美しくなりたいです!」
「どうしたらなれますか!?」
「一生ついていきます!」


どうやら俺の人気がグーンと上昇したようだ。


「王女様。流石でした」


あの清楚系美女もやってきて、握手を求めてきた。


「あ……どうも」


流石と言われても、ポーズすら作ってないからな。


「次の審査は強さ。トーナメント形式で戦闘を行うそうなので、絶対に勝ってみせます」
「え……?」


なんで誰も知らない情報をこの人が……?
ㅤ俺は少しだけビックリして固まった。


「では、王女様と決勝で戦えることを楽しみに待っています」


その女性は、そのままどこかへと去っていった。
ㅤなんだったんだ……?

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