魔王LIFE

フーミン

31話 俺、転生者じゃない?

〜イベント開催まで残り3日〜


次の日の朝、リアンが俺を起こした。


「サハルは?」
「私が目を覚ました頃にはいませんでした」


アイツも忙しいんだろうな。


「体は大丈夫ですか?」
「うん。何の不自由もなく動かせるよ」


手足を曲げたり、立ってジャンプしたりしてみせる。
ㅤ既に体は回復したようだ。残りの3日間、何して過ごそうか。


「あ、そういえばルト様」
「ん?」


突然思い出したかのように、リアンがポケットからクシャクシャの紙を取り出した。


「この文字って何ですか? 前から気になってはいたのですが、なかなか質問する機会がなくて」


その紙に書いてあったのは日本語。この世界での文字は違うのだろう。


「あぁ〜……それはちょっと特別な文字でね」
「特別……ですか?」
「まあ今度サハルと相談して、許可を貰ったら読み方教えるよ」
「ありがとうございます」


リアンはその紙を大事そうに、ポケットの中に戻した。


ㅤさてと、俺はこれからグータラする生活をする訳だけど。この世界にゲームがない以上、暇潰しというのがない。


「リアン、暇」
「そうですね」
「……暇」


俺がしつこく言い寄ると、少しだけ嫌そうな顔をした。あれ……凄く悲しいんだけど。


「私に言われましても……散歩したらどうですか?」
「散歩か〜……じゃあ着替えないとなぁ」


筋トレ用の服から、いつものロングコートの服に変える。


「ルト様と一緒に行きたいところですが、仕事がありますので私はこれで」
「あ、そうなの……じゃあね」


リアンは俺の着替えを手伝った後、部屋から出ていった。
ㅤ暇な時に話し相手がいないって凄く寂しいと思うんだ。前世のネットは便利だね。いつでもコミュニケーションできるSNSがある。


「あ〜あ……つまんな」


ーーーーー


ダラダラと城下町を歩いていると、国民達の視線が自然と俺に集まる。
ㅤそれも当然、俺が3日後に開催されるイベントの優勝者候補だからだ。国民達は俺の身体を観察している。


「おっ」


周りより少しだけ暗い場所に、ヤンキー座りした獣人族が3人程いた。


「こんにちはっ!」
「あ?……って、は!?」


この見た目は狼。リアンと同じだな。
ㅤ1人は銀色。もう1人は黒で、もう1人灰色。
ㅤ俺の姿を見ると、目と口を大きく開いて固まっていた。


「ちょっと付き合ってくれる?」
「ど、どうする……?」
「この人ルト様だろ? 言うこと聞かねぇと……」
「あ、あの!」


お、最初は灰色が話しかけてきたか。


「ぼ、僕! リベルトって名前です!」
「お前! お、俺はガルムです」
「ベントーだ」


えっと……? 銀色がガルムで? 黒が……ベントー?


「美味しそうな名前だね。ベントー」
「た、食べないでください!!」


何を勘違いしたのか、灰色のリベルトが二人の間に入ってニコニコと汗を流しながら叫んだ。


「食べないよ。魔王は死んだ物しか食べない、多分」
「やっぱりま、魔王だったんすね」


ふむ、リベルトはガルムとベントーより下の地位か。前世でもよくあったな。焼きそばパン買ってくる係。


「3人はどういう関係?」


なんとなく聞いてみる。


「俺とベントーは元々幼馴染でして、リベルトとはこの国で出会いました」
「てことは、ガルムとベントーは仲が良い訳だ」
「リベルトとも仲が良いですけどね」
「そ、そうっすね」


ほぉ〜、白黒コンビの中に灰色が入ったって事か。
ㅤなんだろう。リベルト君のこの守ってあげたくなるような……そんな雰囲気がある。


「リベルト君、2人とは仲良く出来てる?」
「勿論っす!」
「じゃあ3人共。今暇なら付き合ってくれるかな?」


こうやって誘うのは2回目だ。


「二人共! 良いっすよね!」
「俺は良いけど、ベントーは?」
「俺も問題ない」
「大丈夫っす!!」


よし、じゃあ早速遊ぶか、
ㅤつっても、何して遊ぶか決めてないんだけどな。


「とりあえず散歩しよ」


ーーーーー


ヤンキーのような3人を引き連れて、この国の王女が歩いている光景に国民達は驚いている。


「へへへ、何か有名人になった気分っす」
「お、俺達が王女様と一緒に居て良いのか……?」
「王女様直々のお誘いだ。断る方が失礼だろう」


ベントーは賢そうな雰囲気だな。で、ガルムは如何にもヤンキーといった感じで、オラオラ系。リベルトは下っ端って感じだな。


「3人とも、何かしたい事ある?」
「したい事……っすか?」
「ルト様のしたい事をしてもらえれば……」
「ん〜特にないんだよね。ただ暇だから3人が何かできそうって思っただけ」


こういう人達は、何か面白いことを知ってそうだと思ったけど。何も無いのか。


「あ、僕いつも犬の真似してガルムさんとベントーさんを笑わせてるっす!」
「犬の真似?」
「こうやって、両手両膝をついて……ワンッ! って吠えるんっすよ。これが面白いらしいっす」


犬の……真似? リベルトは分かってないっぽいけど、それ結構な虐めだぞ?
ㅤ私は貴方の忠実な下僕ですっていうのを、犬で表現してる。


「ガルムとベントーは、これが面白いの?」
「い、いや……」
「最近は……笑わないな……」


虐め発見。虐められてる本人は気づいてないから手出しするな、と言われそうだけど。俺は人を馬鹿にするような奴は嫌いなんでな。


「ふぅ〜ん……」
「あの……すみません」
「ガルムさん? どうして謝ってるんすか? 僕が代わりに謝りますよ?」
「へぇ〜……いつも何かしたらリベルトに謝らせてたんだ」


次々とガルムとベントーの悪事が出てくる出てくる。どう対処するか考えるのが楽しみだな。


「すみませんっした!」
「すみませんでした……」


ガルムとベントーがその場に土下座した。
ㅤ国民達も、何事かと集まってきた。しかし3人の姿を見ると納得したような表情をしている。


「え? 二人とも! ……えっと……すみません!」


リベルトも、よく分からずに土下座してきた。


「リベルトは良いんだよ。立って」
「え? 良いんすか?」


ま、リベルトには今まで虐められてたって事は隠しといた方が良いな。


「ガルムとベントー」
「「はい……」」
「今日から私の元で働きなさい」


その言葉に、ガルムとベントー。そして集まっていた国民達も驚いていた。


「働く……と言いますと……」
「城で、雑用係」
「城で……!」


この世界では、城で働ける事は素晴らしい事なのだそうだ。


「リベルトはどうしたい?」
「僕っすか? ん〜……」


顎を触って考える仕草をしている。


「僕も城で働きたいっす」
「じゃあリベルトは特別に、私の部屋の掃除係を頼もうかな」
「「ルト様の部屋……!?」」


その言葉にも、全員が驚いていた。……そしてサハルも。


「あれ、サハルなんでここにいるの」
「なんとなく外を見たら何か騒いでるっぽいから、見にきたらこの状況」


まあ丁度いいや。


「この銀色と黒色は城の雑用係。リベルトは私の部屋の掃除係にして。要望」
「分かったよ。ほら、銀色黒色立て」


サハルとルト、この国のトップが二人揃っている光景を目の前で見ている国民達は、静かに口を抑えていた。


「リベルトは自分で持っていきなよ」
「はいはい」


サハルがガルムとベントーと一緒に転移して消えた。


「僕らも行くんすか?」
「そうだよ。捕まって」


手を出すと、その手をしっかりと握った。意外とゴツゴツしている。
ㅤ俺の部屋に転移して、掃除係の説明をしようとした時だ。


「ふぅ……」


リベルトの雰囲気が、さっきまでの下っ端風とは全然違う者に変わった。


「リベルト?」
「改めまして。私は異世界からの転生者リベルトです」


異世界からの転生者。その言葉に俺は初めて、全身に大きな雷が落ちたような衝撃を受けた。


「先程まで、この世界の事情を知るために下っ端を振りをしていました。まさか王女様に気に入られるとは、幸運に思います」
「えっと……リベルト?」
「何でしょうか」
「つまり日本人って事?」
「え……王女様は日本人を知っておいでですか?」


リベルトも、そこで初めて驚いた。


「あぁうん、サハルも私も元日本人。だから気楽に話して」
「元日本人っ!? えっ!? へぇぇっっ↑↑!?!?」


あまりにも面白い反応をするもんだから、思わず吹き出してしまった。


「と、という事は……ああいや……でも……」
「ん?」
「ああそうだ……。転生者は同じ性別のまま……ってことは元々女性……つまりヒロイン!」
「えっと、どういうこと?」
「あ、私が考えていたことを説明しますね。
ㅤ異世界に来るには二つの方法があります。まず、転移。これは元の姿のまま異世界に来ることです。
ㅤ次に転生。新たな肉体を得て、異世界に来ること」
「う、うん」


そこまでは分かる。けど、同じ性別のままってとこが引っかかるな。


「転移も転生も、男なら男に。女なら女にしかなれないんです。これは私が長年転生生活を続けてきた証拠です」
「転生生活?」
「日本で、他とは雰囲気が違うトラックに轢かれるんです。そして転生。転生者は記憶を持って来世へと行きます。そしてまたトラックに轢かれるんです」


つ、つまり……こいつは何百年も自殺を繰り返して転生してるって事?
ㅤっていうか、それじゃ俺が女になって転生した理由が分からないじゃないか。


ㅤ待て……冷静になれ。……俺は確かにトラックに轢かれた。そして転生した。
ㅤいや、そもそもそのトラックは異世界に通じるトラックなのか?


「えっと、異世界に来る時に見た光景ってどういうの?」
「真っ白な空間に1人の女性が立っていました。そこで技能を手に入れてーー」
 「待って……」


俺が見たのは黒い空間だった気がする。
ㅤとなると……俺は転生者とか転移者とか、そんなんじゃなくて……。たまたま記憶を持って、たまたま異世界に来ただけ?
ㅤ……? そう……なのか? じゃあ俺は……ん? 元日本人じゃなくて……普通にこの世界の住民? ん?


「どうなさいました……?」
「待って……1回その堅苦しい言葉やめてくれる?」
「っ……分かった」


リベルトは一瞬怯んで、いままで戻さなかった言葉を戻した。
ㅤ多分、今俺の顔は凄く怒っているように見えるだろう。眉間にシワを寄せて、むむむ〜なんて唸ってる。


「……はぁ……」
「どうした……んだ?」
「いや、何でもない。ただ……リベルトはただの掃除係にする訳にはいかないね」


熟練転生者。何かおかしい言葉だけど、そんなプロを掃除係になんて出来ない。


「私の右腕になってもらうよ」
「なるほど。俺は剣の腕も魔法も自信はある。なんせプロだからな」


右手を前に出すと、そこに煙が現れて黒い刀が出現した。


「俺、リベルトは王女ルト様にこの人生を捧げます」
「この人生って……それ人生を何回も繰り返してるから言える言葉だよね」
「当たり前だ。俺はその時その人生で最もヒロインになりそうな人と一緒を共に過ごす」


へぇ、カッコいい。一流騎士みたいだな。


「まあ……いままで誰ともそういう行為できてないんだけどな」


その言葉にガックリ。一気に評価が下がった気がする。


「だが、俺のこの命を全力で使い。ルト様の命をお守りします」
「あ、お守りとか必要ないよ」
「……? なんでだ?」
「私、伊達に魔王してないから」


そういって腕を捲り、筋肉を見せつける。


「ふっ……さすが俺のヒロインだ」


ラノベによくいるウザイ主人公のようなセリフで、親指をグッと立てた。



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