魔王LIFE

フーミン

30話 痛みを感じない結果

〜イベント開催までのこり4日〜


次の日の朝、俺の体はうまく動かなくなっていた。
ㅤリアンにサハルを呼んでもらい、見てもらうと。


「筋肉痛が悪化してるね」


とのことだ。


「今のルトは痛みを感じないからね、体がボロボロの状態なのかも。
ㅤ無理な筋トレしたりした?」
「まあ……痛みもないし腕立て伏せ100回とか、腹筋120回とか」


言われてみれば、俺の体は無理をしていた。
ㅤそれが体を動かしずらい状況になるとは……。


「どうしたら治るかな?」
「しばらく安静にする事だね」
「そう……ありがとう」


元々イベント開催までぐーたらするつもりだったしな。良い言い訳が出来たって考えればプラスだ。


「にしても、随分と良い身体になったね」


そういえば、俺はトレーニングしてる時そのままの服で寝ていたんだった。
ㅤサハルに布団を剥がれ、あまり動けない俺の身体をマジマジと見つめる。


「……リアン、布団」
「待って待って、もう少し見させて」


恥ずかしいんだけど……。


「あ、ここの筋肉凄い」


サハルはそんな事を言いながら俺の足に触れてきた。
ㅤそれがくすぐったい。しかし体が動かない為抵抗できない。


「サハルやめて……」
「もう少し」
「ルト様を虐めるのはそこまでにしてください……」


リアンも困った様子だ。


「サハル。安静にしろと言ったのはサハルでしょ? これだとゆっくりできないから、一人にさせて」
「……分かった。じゃあ昼の食事にはまた来るよ」


そういって去っていくサハルの後ろ姿は、どこか寂しそうだった。


「サハル何かあったの?」
「う〜ん……分からないです。どうしたのでしょう」


さっきの行動も、まるで俺に甘えてるような感じだった。構ってほしそうな。
ㅤ……やっぱり子供は甘えたい年頃なんだろうか。


「じゃっ……私は寝てるから、おやすみ」
「おやすみなさい」


リアンが部屋から出ていったのを確認し、なんとか横に寝返りをうつ。
ㅤ痛みを感じない、という事は体に無理をさせること。今後このような事がないように気をつけないとな。


ーーーーー


ポカポカと温かくなってきた頃。サハルが昼食を2人分持ってきた。


「やぁ、身体の調子はどうだい?」
「まあ少しは動けるようになったよ」


手足を曲げたりして見せた。


「動けるようになってもしばらくは安静にね」


そう言いながら、俺に昼食のキノコスープ、サラダ、パンを渡して、横に座った。
ㅤやっぱり甘えたいのか。


「最近サハル忙しそうだね」
「うん。イベントの準備にルトの水着の作成とかね」
「水着……どういう感じにするの?」
「まだ言えないよ。ただ、前世で見慣れた物かな」


前世で見慣れた物……それだけで何か分かった気がする。


「いや、そんなの着たら腹筋見えないじゃん」
「ん? スクール水着じゃないからね?」
「あ……」


俺にとって見慣れた物がスク水という判断になっているからな。これは恥ずかしい。


「ま、とにかくギリギリ見えない水着を用意するよ」
「ギリギリ見えないって……嫌だよ」
「大丈夫。この角度なら見えるとか、そういうのはないから」


心配だな……サハルのセンスに任せるしかない。
ㅤあまりにもエロかったら優勝しかねないしな。


「……」


サハルが外をボーッと眺めている。


「どしたの?」
「ん? 何でもないよ?」
「疲れが溜まってるように見えるけど……ちゃんと休んでる?」
「休めてはないかな……」


しっかり休まないとダメじゃないか。


「まだ4日もあるんだから、今日くらいは休みなよ」
「……じゃあここで寝ていい?」


そういって指を指したのは俺の横。一緒に寝るということだ。


「べ、別に良いけどちょっかい出さないでね」
「分かった」


布団に潜り込んで、足を丸めて目を閉じた。
ㅤやっぱり子供の寝る姿っていうのは可愛いな。


「何?」
「なんでもない」


俺も目を閉じて眠ることにした。
ㅤ男と一緒に寝るなんて初めての体験だ。ドキドキして眠れないかと思ったが、案外スヤスヤ眠ることが出来た。
ㅤ安心感というやつだろうか。今の俺は身体が動かせないから、その分強いサハルが横にいるだけで安心する。


ーーーーー


次に目を覚ましたのは夕方。
ㅤ何か胸元がモゾモゾするな、と思い目を開ける。


「何してるの」


サハルが俺の胸を触っていた。


「ちょっと楽しもうかと思って」
「最近サハルボディタッチ増えたよね? 欲求不満かな〜?」


俺が冗談交えて言うと。


「そうだね」


と、返された。
ㅤまさか本当に欲求不満だったとはビックリ。


「何がしたいの」
「ルトの体を堪能したいね」
「……少しだけね」


俺が両手でサハルを身体に引き寄せ、抱きついた。
ㅤよく仲間達にするご褒美というやつだ。サハルにご褒美をあげた事はなかったしな。


「……」


サハルは静かに、俺に身を任せている。


「……はいお終い。……サハル?」
「……」


サハルの顔を見ると、スースー寝息をたてて眠っていた。
ㅤなんじゃそりゃ。今さっき起きたばかりなのに。
ㅤ結局、リアンが夜食を持ってくる時間までサハルは俺に抱きつきながら眠っていた。
ㅤリアンのリアクションというのが、『男女逆転してるみたいですね』だった。確かに、今の状態だとサハルが彼女で俺が彼氏だな。


ㅤ夜食は俺とサハルとリアン。3人で雑談でもしながら食べた。なんとか体が動くようになった為、ベッドの上に座って食べた。その方がこぼしにくいからな。


「ルト、今日は一緒に寝ていいかい?」
「あ、私も良いですか?」


サハルとリアンが俺のベッドに入りたそうにしている。


「はぁ……全く君達は仕方ないなぁ。おいで」


布団を広げて招き入れる。
ㅤ左にリアン、右にサハル。左手でリアンの狼の耳や尻尾を触り。右手ではサハルに腕枕。
ㅤ不思議なハーレムの完成だ。

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