魔王LIFE

フーミン

24話 貴女はバカでございます

「いやぁ、君が1人で遊びに行くのは危険だからね」


などと行って着いてくるのはサハル。執事にサハルが来ないように言うよう伝えたんだが、無能執事だったようだ。


「ねぇ話そうよ〜」


ずっと着いてくるサハルを無視しながら、城の外に出た。
ㅤかなり広い庭だ。


「ねぇ、話してくれないと悪戯するよ?」
「っ……何」


結局話さなくてはならなくなった。


「その服気に入った?」
「……まあ……」


ドレスよりはマシだし、常にこの服で生活したいな。


「それは良かった」


サハルが笑いながら俺の手を握ってきた。
ㅤ何なんだコイツ、まるで子供みたいだな。いや、見た目は子供なんだけど、いままで子供とは思えない言動だったから突然子供らしくされると調子が狂うというか……。


「……サハルは何が目的でこんな事をしてるんだ?」


コイツの目的が何なのか知りたい。
ㅤ多分教えてくれないだろうけど、何かしらの目的があって行動しているというのは分かるだろう。


「ルトはさ、元日本人なんだよね?」
「そうだけど……」
「魔王のあるべき姿。それを僕は目指してるんだ」


魔王のあるべき姿か。


「じゃあ、どうして国の人達や私に、不自由のない生活をさせてるんだ?
ㅤ普通、奴隷っていうのはずっと働かせるものだと思うんだけど」
「僕も好きでこんな事してる訳じゃないんだ。だから、非人道的な行為はあまりしたくない」


……まさかサハルがこんな事を考えているとは、思いもしなかった。
ㅤいや、これも何かの罠だろう。既に酷いことを俺や奴隷達にしている。そこで非人道的だのなんだの言われて信用できる筈がない。


「サハルは、魔王を何だと思ってる?」
「魔物や魔族の中の頂点に立って、世界を支配する。そう僕は思っている」


なるほど。一般的なRPG思考か。


「魔王の在り方って、他にも色々とあると思うんだ」
「……例えば?」


珍しくサハルが俺の話に興味を持ち出した。


「人間と魔物、それぞれが敵対しない平和な世界を作る重要な鍵」
「ないね。魔物と人間は仲良くできない」


キッパリと否定された。
ㅤ既に街の中に入って、今は商店街だろうか。商品の整理をしていた人達が動きを止めて俺達を見ていた。


「なんでそう言いきれる」
「人間は裏切るからさ」
「……裏切らない人もいる」
「いない。僕の周りにはそんな人間なんていなかった」


……どうやら、サハルの前世に問題があるようだ。


「詳しく聞いていいか?」
「残念だけど、これ以上は話したくないんでね。あまり僕を否定すると悪戯するよ」
「……分かった」


何かサハルの新たな一名が見られた気がする。
ㅤもしかすると、サハルと仲良く出来る未来があるのかもしれない。
ㅤ真っ暗なこの国に、ほんの少し光が見えた気がする。


「君達、ちゃんと働かないと殺すよ」


すぐに奴隷達が自分の仕事に戻り、商品を買いに来た人達は居なくなっていた。


「サハル」
「なんだい?」
「今日、一緒に寝てみる?」


もしかすると、サハルの心の傷を癒すことができるかもしれない。


「僕と一緒に? 正直ルトがそんなこと言うなんて思ってなかったよ。急にどうしたんだい」
「特に理由はないけどさ、私とサハルは同じ魔王で、この国の王と王女っていう関係でしょ?」
「と、夫婦」
「う、うん……」


商店街を歩きながら、少しでもサハルと心の距離を縮めれるよう試みる。


「となると、2人ともそれなりの信頼関係を築いた方が良いと思うんだ」
「……君が1番僕を信頼してないじゃないか」
「だからだよ。私もサハルを信頼したい。だからサハルの事をもっと知りたいし、一緒に笑える関係になりたい」


ただ恋愛感情は持てないけどな。
ㅤサハルは前世で何らかの心の傷を負っている。そのせいで、人を信用するどころか頼ることすらできないようになっている。
ㅤ俺が少しずつサハルの傷を癒して、人を信じれるようになったら、奴隷達も、リアンも解放されるだろう。


「ふ〜ん……何か企んでるようだね」
「ほら、すぐ人を疑う。私もサハルを信用するから、サハルも私を信用して」


今の俺の目的は、この国の人々とサハル。皆と仲良くなることだ。
ㅤようやくするべき事がハッキリしてきたな。


「じゃあ、今日の夜は僕の命令に従ってもらうよ。変な行動したら悪戯するから」
「あ、性的な事はNGで」


ほんの少しだ距離が縮まった気がする。


「今は街の人達とお話しよう」
「僕は嫌だけど」
「サハルが私に着いてきてるんだから、我が儘言わな…………ごめん」


ヤバかったか? もしかすると、今のでサハルの機嫌をそこねて悪戯される可能性が……。


「仕方ない。僕も夫として付き合ってやるか」
「っ! ありがとう!」


サハルが笑った。


「じゃあ早速、何か買い物しよう!」
「うわっと」


サハルの手を引いて、近くの店に入った。


「いらっしゃ……!? サハル様! ルト様! いらっしゃいませ!!」
「あ〜そんなに畏まらないで。私には様付けしないで」
「そ、そんなっ!」


やはりかなり緊張しているようだ。二人の魔王を目の前にして、額から汗をダラダラと流している。


「暑苦しいぞお前」
「サハル、今は私に着いてきてるんだから保護者は私。今は地位なんて気にせずに楽しもうよ。デートだよ? これは要望」
「デート……要素なら仕方ない」


うん、ちゃんとサハルを操れてきてるな。


「サハルの事は、サハルさんで。私の事はルトさんつて呼んで。これは王女からの命令」
「早速地位の権利を悪用してるね」


うっ、そこを突かれるか。


「わ、分かりました……では。サハル……さん。ルトさん。何かお探しでしょうか……」
「気になった物あったら買うよ」


サハルの手を引いて、店の中を商品を見ていく。


「何が欲しいのある?」
「……僕は子供じゃないんだぞ。自分で買える」


そんなこんなで、元々この国にあったお菓子をいくつか買った。
ㅤ店の外には街の人達が集まっている。すぐにサハルが、仕事に戻れ、と命令する。


「良いじゃん。たまには大勢で遊ぼうよ」
「魔王が奴隷と遊ぶなんて有り得ない」
「奴隷だとしても、魔王の国の住民だよ? 国民の信頼を得るのも魔王の仕事」
「信用なんてできないね……」


やっぱり奴隷にした人達といきなり仲良くするのは抵抗があるようだ。
ㅤ集まっている人達も、サハルに怒りの感情を持っているのか、すぐに離れていった。
ㅤすると、サハルが少しだけ悲しそうな表情をした気がする。


「折角のデートなのに、もっと楽しまないと」


ミシェルにはこんな事言えないのに、なんでサハルには言えるのだろうか。


「……夜に沢山悪戯してやる」


その言葉が、なんだか照れ隠しのように思えてきた。


「ふふふ、じゃあ今は楽しもう」
「……覚悟しろよ」


あれ……なんだかヤバそうな事になりそうだけど……ま、まああれか。少し調子に乗りすぎたか。


ーーーーー


サハルがなるべく楽しめるように、俺はテンションを上げながら店を回っていった。
ㅤ奴隷達には、俺の事を様付けしないようにと命令した。サハルには……まだ少し難しそうだから、少しずつだな。
ㅤ一緒にアイスを食べながら、街を歩いたり。
ㅤ俺の前世での下らない話を聞かせて笑わせたり。案外サハル感情豊かなんだな、と分かった時間だった。


ㅤサハルが疲れたらしいので、一緒に城に戻った。


「……」
「意外と楽しんでたじゃん」
「うるさい。痛めつけてやる」


怖い……ヤンデレかな。
ㅤサハルの部屋に俺も入って、一緒にソファに休んでいる。


「今日の夜する事を決めたよ」
「……何?」
「僕と勝負しよう」
「しょ、勝負……? それってじゃんけん?」


まさかと思うが……


「剣術、魔術ありの勝負だよ」


やっぱりそうだった。


「で、でも私は指輪で攻撃できないし……」
「僕が隔離空間を生み出すから、その中なら攻撃可能にしてあげる。……逃げることも出来ないしね」


最後の言葉に、寒気を覚えた。


「殺される……」
「殺しはしないよ。拳で語り合うってやつさ」
「そ、それなら良いけど……」


一方的に痛めつけられるのは嫌だな。まあ今日少しだけ仲良くなった……つもりだし。大丈夫だろう。


「ルトには僕からプレゼントをあげよう」
「これは……?」


目の前に黒い煙が現れ、そこから白くて綺麗な剣が現れた。
ㅤ鞘から抜くと、鏡のように反射する刀身。


「ルトに似合うかなと思ってね。手のサイズに合わせて持ちやすい剣を作ったんだ」
「は、はぁ。わざわざどうも……」
「今日、僕はルトと仲良くなったつもりだ。今日の夜、プレゼントした剣を持ったまま苦しんでもらうよ」


あぁ……やっぱりツンデレだ。優しさの中に無慈悲な事が含まれている。
ㅤまるで小さな子供が、蜘蛛の巣に捉えられた蝶々を助けたと思いきや羽を据ぎ取るような感じだ。
ㅤでも、確実に俺とサハルの心の距離は縮まった気がする。


コンコン「サハル様」
「入れ。どうだった」
「え?」


突然執事が入ってきて、俺を見ながらニヤニヤしていた。


「どうやら、ルト様は本気でサハル様と仲良くなりたいようです。その裏に奴隷達を助け出すという計画はあるものの、サハル様に敵対心は持ってないようで」
「えっ……」
「そうか。つまりルトは信用して良いのだな?」
「そういうことになります」
「え?」
「ルト。君には悪いが、執事にルトの心を読んでもらっていた」


やっぱり執事心の読めるんじゃねぇか! あの時嘘つきやがった!?


「でも、そのお陰でルトを信用する事が出来る。執事、ありがとう」
「いえいえ、サハル様のお役に立てて何よりです」
「あの……執事さん……」
「はいなんでしょう」
「あまり心の声を読まれるのは……」
「ああ、大丈夫だ。これ以上ルトは疑わないから、今後ルトの心は読まないように命令する」


良かった……。いままでサハル、俺の事疑ってたのか。まあそれも当然か。
ㅤでも、このお陰で俺はサハルに信用された。


「執事さんありがとうございます」
「おや……お礼を言われるとはビックリです……くくく」


執事も意外だといった表情をしていた。


「ルト、君はもしかするとバカなのかもしれない」
「えぇ……」
「確かに。ほんの数時間前はサハル様に敵意剥き出しでしたのに、いつの間にか敵意が無くなっております。
ㅤルト様、貴女はバカでございます」
「傷付くんですが……」


2人の言葉に、俺の心はズタボロにされた。
ㅤ俺頭良い方なんだけどな……いやそうでもないか。

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