魔王LIFE

フーミン

22話 国民達

しばらく休んでいると、リアンとサハルが部屋に入ってきた。
ㅤ警戒しつつも要件を尋ねる。


「何?」
「ちょっと君を国民達に紹介しないと駄目だからね。今からバルコニーに行くよ。拒否権は無い」


紹介? 国民達に……?


「その国民達って……捕まえて奴隷にした人達?」
「勿論そうだよ。君は僕の横に立っているだけで良い」
「まっ、待て……待て待て……」


突然の状況に少しだけ混乱する。


「く、詳しく何を話すか教えてくれ……」
「君は魔王でありこの国の王女、そして僕の嫁だ。その事を国民達に教えるだけさ」
「ダメだ! 私は……魔王なんて知られたら……」


多分国民の中には俺の知り合いもいる。ミシェルの友人だって、街で目が合っただけの人も。更には元国王達もいる。
ㅤもしそんな人達の前で、俺が敵側の者だと言われたら……。


「サ、サハル様…魔王だという事は言わない方が良いのでは……?」
「なんで?」
「いえ……その……」
「理由がないのなら口出しするな。奴隷の分際で」
「す、すみませんでした」


リアン……俺のために……。それでもサハルは聴く耳を持たなかった。


「要件として……私から頼んでもダメなのか……?」


俺からの頼みなら、何とかなりそうだけど。


「魔王が王女になった。それを伝える事に意味がある。却下だね」
「っ……」


結局、サハルのやりたいような展開になってしまった。


「じゃ、行こうか」


ーーーーー


城のバルコニー。目の前の広場には何千、何万、それ以上の人々が集まっていた。
ㅤその前に、サハルと俺が姿を表すと静かになった。


「この子に見覚えのある者は手を挙げろ……拡声魔法だよ」


広場全体に響くように喋った後、使った魔法を教えてくれた。
ㅤあまり話しかけてほしくはないんだが……。


ㅤ広場で手を挙げたのは、10人程だった。


「ほら、君のことを知っている人がこんなにいるね」
「うるさい……早く終わらせて」


視線が俺に集中していて、精神的にキツい状況だ。


「この子は魔王であり、我が国の王女となる。つまり僕の嫁になるということだ。いずれ君達の職場に遊びに行くことがある。しっかり働くように!」


サハルはそう叫ぶと、俺の背中をトンと前に押した。


「えっ……」
「ほら、名前名乗って」
「いや、立っているだけって……」
「僕に恥をかかせるつもり?」
「うっ……」


ここでサハルを困らせたら、また悪戯と称して酷い事をしてくるに違いない。俺はサハルの命令に背けない。


「わ、私はっ……」


名乗ろうとすると、声がかなり大きくなっていた。


「拡声魔法だから、ほら早く」
「分かってるっ……私は……この国の王女となった、ルト……です……」
「何か今後の目標とか語って、何でもいいから」


何でもいいと言われても……。えぇい!


「私の目標は……貴方達をここから助け出すことです! いままで通りの生活に戻し、支配から逃れましょう!」


俺がそう言い終わると、サハルが一歩前に出た。


「だそうだ。君達、頑張って王女様の目標を目指せるといいね。……ま、一生かかっても無理だろうけどね」
「なんで言いきれる」
「じゃあ、今日は皆に見せようかな」


サハルが何かを見せようと、指先を空に向けた。


「ん?」


国民達も、その指の先にある大きな生き物を視界に捉えていた。


「あれはね、僕が一番最初に殺したドラゴンなんだ」
「殺した……ドラゴン?」
「記念すべき最初のドラゴン。ゾンビにしてペットにしてるよ」


あれで脱走者を……。
ㅤドラゴンが相手となると、国民達は怯え始めた。俺だってあんな巨大な生物相手に戦えない。ましては攻撃できないのだから。


「目標、達成できるといいねぇ」
「くっ……」


嘲笑うかのように、俺に言葉をかけた。


「これで終わりだ」
「これだけ人を集めたのに……これで終わりなのか?」
「ああ、これだけだ」


国民達も大変だな……これを聞くためにわざわざ集まって……というよりサハルの命令だから逆らえないのだろう。


「部屋に帰っていいよ。それとも国民達に一発ギャグでもーー」
「帰ります」


俺が少しでも早くサハルと離れるために、城の中へ戻った。


「ルト様、お疲れ様です」


リアンだ。


「リアン、ありがとう」
「え? ……私は何も……」
「ここに来る前、私のことを考えてサハルに意見してくれたよね」
「あ、はい……しかしこの後、サハル様にお仕置きを受けなくては……」


お仕置き? そんなのがあるのか?


「それは確定してるのか?」
「はい。奴隷がサハル様に迷惑をかけると、お仕置きを受けるんです。それが……もう酷いものでして」
「リアン……私の為だったのに、ごめん……」


俺の為に意見した。そのせいで酷いお仕置きを……。、


「いえいえ、ルト様が謝る事はございません。ただ、私がルト様を少しだけ信じてみただけです」
「少しだけ……か……」


少しだけでも、俺のことを信じてくれているのならそれでいい。
ㅤ記憶は残らなかったとしても、リアンはリアン。また1から関係を築いていければ、それでいいのかもしれない。


「改めて礼を言うよ。ありがとう」
「リアン〜こっち来〜い」
「い、今行きます!」


サハルがリアンを呼んで、どこかに向かおうとしている。お仕置きをするのだろう。


「サハル、これは私からの要望だ。リアンに酷い事はしないでくれ」
「分かったよ〜、ルトみたいにお漏らしくらいで済ませてあげる」
「ルト様がお漏らっ……」


リアンに聞こえるように呟いたサハルには悪意しか見えなかった。
ㅤやっぱりサハルの事、大嫌いだ。

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