魔王LIFE

フーミン

21話 お漏らし

泣き疲れていつの間にか眠っていたようだ。
ㅤ頭がボーッとして頭痛が酷い。起き上がるとめまいがした。


「はぁ……」


溜め息を吐いて、これが現実だという事を受け止める。
ㅤミシェルが言っていたとおり、『考えすぎ』 。だから俺はあまり重く考えずに、ミシェルが助けに来てくれるのを待つだけだ。
ㅤ首元に手をやって、首飾りが無いことに気づいた。


「ミシェル……」


ㅤ少しだけ楽になったのに、また寂しくなった。
ㅤ気分を落ち着かせるために、部屋の外に出た。


「ルト様、どこへ行くのですか?」


リアンはどうやら部屋の側にずっと居たようだ。


「散歩だよ」
「ではお供します」
「いやいいよ。リアンは城の中走ってて。好きでしょ?」
「っ!」


その言葉に、リアンが反応した。


「ど、どうして私が走るのを好きと分かったのですか……?」


やっぱり、俺の記憶は失っても好みは変わらないようだ。


「リアンはね。元々私と一緒に生活してたの」
「? いえ、私はずっとサハル様と共に生活して……」
「サハルに記憶を消されてるの。まあ思い出さなくていいよ」


流石にこの程度で思い出せないのは知っている。


「ど、どうして悲しい顔を……。まさか本当に私は……」
「気にしないで。私は散歩してくるから走ってどうぞ」
「わ、分かりました……では」


リアンは走り去ろうとして、チラッと俺を見たあとにもう1度走り出した。
ㅤ何か思い出してくれたら嬉しいんだけど。


ㅤ俺は城の構造を知るために、魔法で自分を中心に魔力の空間を作り出した。適当にルームと名付けよう。
ㅤこれで壁の奥にある空間も見つけることが出来る。ルームを発動したまま散歩して、構造を把握していこう。


ーーーーー


銀色がベースで作られた城の中は、そんなに広くはなかった。
ㅤ壁が鏡で出来ていて、サハルのナルシストぶりが分かるな。
ㅤ城内には人間らしき首輪を付けた人達が何人かいた。服は動物の皮で出来た汚い者だ。この人達は連れ去られた人たちなのだろうか。
ㅤ俺を見ると、廊下の端に寄って道を開けてくれる。話しかけようとすると、足早に去っていく。
ㅤ避けられているのだろうか。それとも喋ったらいけないように言われているのだろうか。どちらにしても、早く助けてあげたい。


「お、ルトだ」
「っ!」


突然、床に黒い沼のような物が出現し、そこからサハルが現れた。
ㅤいつ見てもイライラする顔だ。


「そう警戒しないで」
「何の用だ」
「何の用って、たまたま出会っただけだよ。ここは僕の城。
ㅤまあついでだし、教えておこうかな」


なんだろうか。


「ミシェルは君の救出を諦めた」
「なっ!?」
「1人じゃ助けれないと思ったんだろうね。残念だけど、君はここでの生活に慣れてもらうしかない」


嘘だ。ミシェルが簡単に諦めるはずがない。
ㅤきっと俺を騙しているのだろう。


「その手には乗らない。邪魔だから消えて」
「ん〜傷付くなぁ……悪戯しちゃおうかな〜?」
「な、何をっ!?」


突然俺の背後に、見えない速度で回り込んで謎の黒い紐で拘束された。


「くっ、解けっ!」
「僕の傷が癒えたら解くよ〜、ちょっと遊ばせてよ〜」


気づけば俺の部屋のベッドに転移していた。


「何する気だっ……」
「ちょっと反応を楽しむだけさ」


サハルは、ゆっくりと顔を近づけてきた。
ㅤ唇が触れるか触れないかギリギリの場所だ。


「下手に動くと、当たるよ」


拘束されたまま、俺はピクリとも動いてはいけない状況になった。


「もし次、僕を傷付けたら悪戯しちゃうからね。ガラスのハートだもの」
「っはぁっ……はぁ……」


緊張して息を止めていた。やっと顔が離れて酸素を吸い込む。


「あ、ちょっとだけ触らせてもらうよ」


サハルは胸を少しだけ揉んで、去っていった。


「こ、これ解けよっ!!」


ベッド上に拘束されたまま、俺は放置されてしまった。


「くそっ……があ゛っ!!」


魔法で切ろうとしたが、電流が流れてしまった。


「これも攻撃に入るのかよっ……」


結局拘束は解けないまま、誰かが部屋に来るまで待たないといけなくなった。


ーーーーー


「や、やばい……」


誰も部屋に来る様子がない。更には部屋の前に人が通ることすらない。
ㅤ何がヤバいのかって、尿意がヤバい。このままだと漏らしてしまう。


「くぅっっ……」


男の時とは違って、女の身体は耐えるのが大変だ。少しでも気を緩めると漏らしてしまいそうなほどギリギリの状態にいる。
ㅤ段々、我慢するのが快感にまで思えてきた。このままだとおかしな扉を開いてしまいそうだ。


「えいっ」
「ああぁっ!? あぁぁぁ!!!」


目を閉じていたため、サハルの接近に気づかなかった。
ㅤ突然お腹をグッと押されて、そのまま漏らしてしまった。


「あっ……ああぁっ……」


この歳になって、人前で漏らしてしまった。恥ずかしさに目を閉じた。


「はい、悪戯成功」
「サハ……ルゥ……クソ野郎……」


股の間が、お尻が温かい。俺のオシッコで湯気が出ている。


「いやぁ僕の傷も癒えたよ〜、これでお互い様だね」


お互い様って……どこがだ……。


「今度僕を傷付けたら、君の大好きなリアンと、奴隷達の前でお漏らししてもらおうかなぁ〜」
「い、嫌だっ……」
「じゃあ僕に優しくすることだね」


こいつ……鬼だ。小さい子供のような見た目をした鬼。
ㅤこんな奴の言いなりに……。


「いいねぇ〜悔しそうな顔」
「早く……これを解け……」
「ん? 解け?」
「解いて……ください」
「よく言えました」


やっと拘束が解かれ、俺はその場で脱力する。
ㅤ股の間が濡れていてリラックスはできないけどな。


「じゃあ、また会ったらよろしく」
「……」


サハルは転移して去っていった。


「あのクソ野郎っ……」
「ん〜?」
「すっ、すみませんっ……!」


消えたと思ったのに、ベッドの横からニョキッと顔を出してきた。
ㅤ咄嗟に謝ってしまった……こんな奴に。


「じゃ今度こそさよなら」
「……はぁ」


リラックスできやしない。


ㅤ俺は起き上がって、濡れたパンツにドレス、ベッドのシーツを部屋の隅にある予備の物と変えた。
ㅤリアンに洗濯頼まないとな。

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