魔王LIFE

フーミン

19話 最悪の事態

熟睡出来たようで、スッキリと起きることが出来た。
ㅤ目を覚まし、部屋を見渡すとミシェルとフェンディアは眠っているようだ。またドッキリなんて仕掛けられてたら次こそ口を聞かない、と思いながらベッドから降りる。
ㅤ二人とも眠っているのを確認し、窓の外を見る。


ㅤ街の人は居るようだ。寝ている間に魔王に連れ去られた、なんて事があったら勇者として失格だもんな。ミシェル。


「あ……ルトおはよう」


ミシェルが目を覚ましたようだ。


「まだ眠ってていいよ」
「いや、十分寝たし大丈夫だよ」


そう言って俺の横までやってきた。


「街の人が心配?」
「うん……魔王が来るかもしれないから」


魔王は来るのか、来るとしたらいつ来るのか。それが分からない今、不安しかない。


「あんまり気にしすぎるのも良くない。僕に任せて、ルトは女の子なんだからしっかり休まなきゃ」
「そうだけど……」
「人を守るのは勇者の仕事。ルトは傍にいるだけで僕は助けられてるんだ」


しかし心配だ。勇者とはいえ魔王に勝てるとは限らない。もし連れ去られて奴隷にされたら、それこそ何も出来なくなり、世界はサハルに支配される。


「ルトは考えすぎだよ」
「そうかも……しれない」


もう全てミシェルに任せて大丈夫なのだろうか……。いや、そう考えるから疲れるのかもしれない。


「じゃあ、皆のこと頼んだよ」
「うん、任せて」


全てミシェルに任せた方が楽だ。何も俺が気負う必要はないし、勇者の従者としての仕事をした方が良いのだろう。
ㅤミシェルは、人々とリアンを助けてくれる。俺はその手伝いをするだけでいい。


「何か私に出来る事はあるかな」
「ん〜、魔術の練習くらいかな」


魔術の練習。それだけ集中すれば良いという事だろう。


「その間ミシェルは何してるの?」
「街の人に最近困ったことだったり、魔王の事だったり何か知ってないか聞いてくるよ」
「分かった。じゃあ私はこの部屋で練習してるから、遅くならない内に帰ってきてね」
「ははは、心配しすぎだよ」


まあ……そうなのだろうな。
ㅤミシェルが部屋から出ていき、俺とフェンディアだけとなった。ミシェルの心配はしなくて大丈夫だろう。
ㅤ今は魔術の練習だ。


ㅤ以前やった通り、魔力の器に自分の魔力を注いでいく。
ㅤ一先ずは魔法を繊細に操る練習からしていこう。


ーーーーー


「うい、おっは〜」


練習を続けていると、フェンディアが起きてきた。
ㅤ寝癖が酷いな。


「お、朝から魔術の練習か〜偉いな」
「もう昼ですよ」
「昼!? 俺どんだけ寝てたんだ!?」


昨日の夜から昼まで、そんなに眠れるなんて羨ましい限りだ。


「なぁルトちゃ〜ん」
「ん?」


今集中してるからあまり話しかけてほしくないんだが。


「ルトちゃんは剣術の方が似合うよ。その見た目、一流の女騎士って感じだし」


騎士ねぇ……俺は元々運動神経悪かったからな。それなりに筋肉があるとはいえ、剣を振り回して戦うより魔法の方がカッコいい。


「得意な事から伸ばしていった方が良いと思います」
「そうだよな〜……俺も見習おうかな」
「得意な事あるんですか?」
「おい、それちょっと傷つくぞ」


あ、無意識だ。


「まあ得意な事ってのは、料理だったり、サッカーだったり……後は数学も得意かな!」


あ、こいつバカっぽい。


「じゃあ7×3は?」
「24」


あ、バカだ。この人俺より歳上なのにバカだ。


「お姉ちゃんは運動してるだけでいいよ」
「お? そうか? じゃあちょっくら走ってこよっと!」


そういって部屋から飛び出していった。脳筋従者の出来上がりだ。
ㅤこれで練習に集中できるな。


ーーーーー


ボンッ!! 「……」


魔力の器が爆発した……。外側から何らかの魔力がぶつかったようだ。
ㅤ髪が少しだけ焦げて、服も少し焼けている。


「ルト! そこから動くな!!」


外からミシェルの声が聞こえたので、窓を覗く。


「なっ! もうルトに手を出したのか!」
「え、なんで?」


そこにはミシェルと対峙すると魔王サハルの姿が。
ㅤ俺の姿を見て、ミシェルは魔王の仕業と思ったのか激怒している。そしてサハルは俺を見てハテナマークを浮かべていた。
ㅤまあ魔王の魔力がぶつかって爆発したんだし、間違いではないな。
ㅤもしかして魔力の抑え方しらないのか。


「あの女には何もしてないさ。とりあえず街の人は連れてったから君達に用はない」


既に街の人はいないようだ。


「ミシェル! なんで街の人いないの!!」
「突然消えたんだ! 守る術が無かった!」


突然消えた? 一体どんな魔法を使ったんだ……。


「ルト、君は短時間にかなり成長したみたいだね。正直驚いたよ」
「おい! お前の相手は僕だ!」


ミシェルはかなり怒っているようだ。
ㅤ俺も何か出来ないかと考え、サハルの周りにある溢れ出した魔力にイメージを送り込む。


「それを待っていたよ」
「っ! ああああああぁあああああ!!??」


全身に雷が落ちたような衝撃が走った。それがずっと続く。体が焼けるように熱い、声が出ない、動けない。
ㅤその場に倒れ込み、全身をガクガクと痙攣させることしか出来なかった。


「イメージというのは、見えるんだ。僕の目ならね。
ㅤ誰かが仕掛けてくるのをずっと待っていた。力を差を見せつけるために」
「このっっっっ……僕のルトを……」


あの魔力は全て罠だったという事だ。
ㅤミシェルは怒りに打ち震え、殺気を放出している。


「君には僕を倒す程の実力はない。この中で1番強いのはルトだ」
「くっっ……」
「このまま、あの女が強くなるのを待つのも楽しいけど、驚異は早めに手の内に入れないとね」
「な、何をする気だ!!」


サハルが俺の元へやってきた。


「何、奴隷にはしないさ」
「やめろっ! ルトを離せっ!! お前の相手は僕だぞっ!」
「だから言っているだろう。君は相手にはならない、と」
「ルトォォォオオオオッッ!!」


抵抗できないまま、サハルに担がれて連れ去られてしまった。
ㅤミシェル……ごめん……。
ㅤ俺が魔王に捕まるなんて、最悪の事態が起きてしまった。

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