魔王LIFE
17話 少しは自主学習
三戦目。少し心が落ち着いたのかミシェルに勝てるようになった。
「ふぅ……調子出てきた」
「おい二人共、それ以上激しく戦ったら街が滅びるぞ」
気づけば建物が焦げていたり、大きな傷が入っていた。
「じゃあ次からは力を抑える練習しようか」
「う〜ん……それは自分1人で出来るかな」
ミシェルに教えてもらいたいところだが、自分で出来る事は自分でする。旅立つ時に決めたんだ。
「そうか、じゃあ今日1日自由時間として、明日は近くの街に移動しよう。人がいるか分からないが、フェンディアのように逃げきれた人が見つかるかもしれない」
少しでも早く仲間を助けるためにも、その方法が一番だろう。
「でもよ、これ以上人が増えて食料は大丈夫なのか?」
「ん〜……魔物は逃げていくし……街にある食料を貰ってもいいかな?」
「それって盗むって事だぜ? まあ街に誰もいないんだし、大丈夫だろうけどよ」
とりあえずこの街にある必要最低限の食料をフェンディアに集めてもらうことにした。《神速》というのは便利だ。あっという間に俺達の元に持ってきてくれた。
「人使いが荒いぜルトちゃん……」
「頼りにしてるよ」
「おし、頑張るぜ〜」
男ってのは単純だな。俺も男なんだけど。
「じゃあ、明日の朝に街を出る。それまで自由行動。
ㅤ遠くにはいかないように」
「「は〜い」」
自由行動と言われて俺がする事は1つ。寝る、ではなく魔法の練習だ。
ㅤ俺は魔法を一つ発動するのに大量の魔力を使ってしまう。その結果、通常ではありえない威力になる為不自然だ。
ㅤ魔力量を調節して、なるべく普通の威力まで下げる練習と、物質生成の魔法。
ㅤ城を作った時のように、イメージすると物を作ることが出来る。
ㅤ本来は精霊や大精霊くらいしか物質を作り出す事はできない為、乱用は出来ない。
ㅤただもしもの時の為に、どんな物が作り出せるのか知っておく必要がある。
ーーーーー
まず魔力調節。
ㅤ基本的に魔力を集めて、そこから魔法を生み出すのがこの世界での常識だ。魔力を集めるのもイメージ。
ㅤ俺の場合、集める魔力の量が多すぎる。
ㅤそこで、集めたい場所に小さなシャボン玉のような空間を作り出す。その中に魔力を集めることで、余分な魔力を省くことができる。
ㅤ最初の方は、空間に入る魔力量が多すぎて破裂してしまったりしていたが、空間に使う魔力量を増やして頑丈にしたところ、平均的な量の魔力を集めることが出来た。
ㅤ集まった魔力にイメージを注げば、炎なり風なり、様々な現象を起こすことが出来る。
「お、ルトちゃん魔法の練習?」
「あ、フェンディア。ちょっと手伝ってくれる?」
「おう任せろ!」
集めた魔力の塊をフェンディアに持たせた。
「こんなもん見たことねぇ……精密過ぎるだろ」
「ちょっとそれに水のイメージを入れてみて」
「お、おう……」
フェンディアが魔力の塊にイメージを入れていく。
ㅤすると、魔力は白く輝いてきた。
バチャンッ「うおっ」
魔力が水に変わり、床へと落ちた。
「なるほど……」
これで分かったことがある。他人の魔力に自分がイメージを注いでも魔法が使えるということ。
ㅤつまり、誰かが魔法を使おうと魔力を集めた時に、その魔力をイメージを送れば妨害することが出来る。
ㅤただ魔力は目に見えない。今は特殊な空間に入れていたため分かったが、本来魔力は透明な物。それをどうやって見つけるかだな。
「フェンディア、ちょっと聞いてもいい?」
「おうなんだ」
「魔力を見ることって出来るの?」
「あぁ〜魔眼持ちなら見れるんじゃねぇか?」
魔眼か。
「魔眼って私でも持てるの?」
「いや、ほとんど生まれつきだな。体を作り上げる時に、目に魔力を送る血管みたいなのができるんだ。それで眼球に魔力が集まって、魔力や魔素の流れが見れる。
ㅤ他にも、目にイメージを送れば人の裸だって見れるんだ。羨ましいぜ」
羨ましいな。魔眼か……目に魔力を送れるようになれば使えるのか。
ㅤ俺の物質生成の魔法で出来ないかな……いや、失明したら怖いし今はいいか。
「ありがとう。次からも何かあったら聞いていい?」
「俺に答えれる範囲なら何でも答えてやるよ。その代わり、俺の事は……お姉ちゃんって呼んでくれ」
お姉ちゃん……確かに身長も胸もフェンディアの方が上だけど……。
「前世での年齢は?」
「21だ」
「すみませんでした。お姉ちゃん」
歳上だったか〜……。仕方ない、敬意を払ってお姉ちゃんと呼ぶことにしよう。
「ルトちゃんは何歳?」
「17です」
「おぉ〜ってことは元JKか」
本当は男でした、なんて言えない……。自分で嘘をついてしまった罪悪感で心が痛い。
「他にも何か魔法見せてくれよ」
「じゃあ小さな雲を作って竜巻作りますね」
フェンディアさんには敬語になった俺だった。
ーーーーー
「お〜い、夕食の時間だぞ〜」
「今行く〜。行きましょうお姉ちゃん」
「へへっ、なんか家族が出来たみたいだ」
フェンディアさんと一緒に、ミシェルの元へ戻った。
「二人とも何してたんだ?」
「ちょっと魔法の練習。嫉妬した?」
「べ、別にしてないけど、僕にも構ってほしかった……
」
かっ……可愛いっ!? ミシェルが頬を染めてもじもじする姿に、ついキュンとしてしまった。
ㅤ俺がこの世界に来て、『可愛い』なんて感情を持ったのは初めてだ。
「どうした?」
「う、ううん何でもない。明日はたくさん構ってあげるね」
自分で言って恥ずかしくなったので、焼いてある肉にかぶりついた。
ㅤん〜美味しい。何かタレっぽいのがかかってるな。この街の調味料か?
「そうそう。俺ルトちゃんに 『お姉ちゃん』 って呼ばれるようになったんだぜ」
「ルト、それは本当か?」
「ま、まあ歳上だし……」
「こんなカッコいい見た目してんのに、中身は小動物みたいで可愛いよな〜ルトちゃんって」
カッコいい見た目、か。確かにボーイッシュではあるな。
「確かに、筋肉もかなりあるし、頼れる女性って感じだな。でもどうしてこんなに可愛いんだ……」
「っ! ……げほっげほっ」
肉食ってる時に変な事言わないで欲しいな。喉に詰まりかけて窒息死しそうだったぞ。
「なぁ、僕には『お兄ちゃん』って呼んでくれないのか?」
「えぇ? ミシェルはミシェルだよ」
ミシェルの事は名前で呼びたい。
「そっか……」
「ミシェルって名前好きだしね」
「そ、そうか」
落ち込んだところに、少し喜ばせるようなセリフを言えばすぐに笑う。そんなミシェルが愛おしい。
ㅤもっと虐めたくなる。
「なぁイケメン。今更だけど本当に勇者なのか?」
「本当に今更だな。一応勇者って名前を国王に貰ってるよ。ルトは知ってると思うけど、昔の勇者の家系とも親しい仲なんだ」
あ、イシールさんか。日本人と結婚したっていう人。
「勇者になって何か良い事あったの?」
「それなりに有名になって、女性に好かれることが多くなったかな。でも魔物の討伐依頼が多くてね、忙しくなっただけだよ」
確かに勇者って楽な仕事じゃなさそうだな。
ㅤラノベではブラブラ世界を旅してるイメージだけど、本当は人々を守らないといけないもんな。
「魔王に勝てる自信はあるのか?」
「自信も何も、勝たなきゃいけない。それだけだよ」
そうだな。勇者として勝たないといけない。
ㅤ出来るか出来ないかは気持ち次第ってよく親に言われたなぁ、その言葉が今になって響いてきた。
「さ、少しゆっくりしたら寝るよ」
「えぇ〜早いよ」
「そうだぜ〜? まだ夕食食べたばっかりじゃねぇか。牛になるぞ〜」
「牛になる……? よく分からないけど、僕達は毎日激しい運動してるから、太はしないよ。
ㅤフェンディアも運動したらどうだい?」
ミシェル、それ結構失礼だぞ。
「なっ!? お、俺は別に太ってなんかねぇよ!」
「す、すまない」
ほらな。
「でも運動は大事だよ。私なんてほら、綺麗な腹筋出来てるし」
「ちょっ……!」
「うぉ〜綺麗な腹筋だな。羨まし〜」
ミシェルは顔を逸らして必死に見ないようにしている。
「ミシェルはピュアだね〜、別にお腹くらい大丈夫でしょ」
「お、男にとってはある意味で不味いんだ……もしもの時の為だ」
もしもの時……? よく分からないが、見たら何かまずいことがあるのか。
「それはごめん」
「ルトちゃん、男には大事なプライドってのがあるんだぜ」
「そ、そう」
何の話か分からないな。
「まあいいや。ミシェル、お姉ちゃん。早く寝よう」
明日も朝から運動なんだし、今日は疲れてるし。早めに寝て明日に備えないとな。
「て、テントを立てるから待ってくれ」
「3人入るかな?」
昨日でさえ二人でかなり狭かったんだが。
「大丈夫だろう」
ーーーーー
「せ、狭い」
3人とも密着して横になっていた。
ㅤ俺が真ん中で、右手側にミシェル。左手側にフェンディアさん。
「暑苦しい……」
「ぼ、僕が外に出よう」
「だ、大丈夫だ。俺が街の宿で寝るから2人は楽しんでくれ」
楽しんでくれ?
「おいフェンディア、別に俺達はそういう事しないからな!」
「ジョークだよ!」
そういう事……俺は言葉の意味に気づいてしまい、急に意識してしまった。
「そ、その顔はなんだ……」
「ごめん……寝ようか……」
「おい距離を取らないでくれ、安心してくれ!」
「大丈夫、ミシェルの事は信じてるから」
ミシェルは俺が危険を感じたと思っているようだが、実際は逆だ。
ㅤ俺がミシェルを襲ってしまいそうになったからだ。本当に恐ろしい。人間ってのはこうも単純や生き物だったなんて……。
ーーーーー
結局、俺はまた眠れなかった。
「ふぅ……調子出てきた」
「おい二人共、それ以上激しく戦ったら街が滅びるぞ」
気づけば建物が焦げていたり、大きな傷が入っていた。
「じゃあ次からは力を抑える練習しようか」
「う〜ん……それは自分1人で出来るかな」
ミシェルに教えてもらいたいところだが、自分で出来る事は自分でする。旅立つ時に決めたんだ。
「そうか、じゃあ今日1日自由時間として、明日は近くの街に移動しよう。人がいるか分からないが、フェンディアのように逃げきれた人が見つかるかもしれない」
少しでも早く仲間を助けるためにも、その方法が一番だろう。
「でもよ、これ以上人が増えて食料は大丈夫なのか?」
「ん〜……魔物は逃げていくし……街にある食料を貰ってもいいかな?」
「それって盗むって事だぜ? まあ街に誰もいないんだし、大丈夫だろうけどよ」
とりあえずこの街にある必要最低限の食料をフェンディアに集めてもらうことにした。《神速》というのは便利だ。あっという間に俺達の元に持ってきてくれた。
「人使いが荒いぜルトちゃん……」
「頼りにしてるよ」
「おし、頑張るぜ〜」
男ってのは単純だな。俺も男なんだけど。
「じゃあ、明日の朝に街を出る。それまで自由行動。
ㅤ遠くにはいかないように」
「「は〜い」」
自由行動と言われて俺がする事は1つ。寝る、ではなく魔法の練習だ。
ㅤ俺は魔法を一つ発動するのに大量の魔力を使ってしまう。その結果、通常ではありえない威力になる為不自然だ。
ㅤ魔力量を調節して、なるべく普通の威力まで下げる練習と、物質生成の魔法。
ㅤ城を作った時のように、イメージすると物を作ることが出来る。
ㅤ本来は精霊や大精霊くらいしか物質を作り出す事はできない為、乱用は出来ない。
ㅤただもしもの時の為に、どんな物が作り出せるのか知っておく必要がある。
ーーーーー
まず魔力調節。
ㅤ基本的に魔力を集めて、そこから魔法を生み出すのがこの世界での常識だ。魔力を集めるのもイメージ。
ㅤ俺の場合、集める魔力の量が多すぎる。
ㅤそこで、集めたい場所に小さなシャボン玉のような空間を作り出す。その中に魔力を集めることで、余分な魔力を省くことができる。
ㅤ最初の方は、空間に入る魔力量が多すぎて破裂してしまったりしていたが、空間に使う魔力量を増やして頑丈にしたところ、平均的な量の魔力を集めることが出来た。
ㅤ集まった魔力にイメージを注げば、炎なり風なり、様々な現象を起こすことが出来る。
「お、ルトちゃん魔法の練習?」
「あ、フェンディア。ちょっと手伝ってくれる?」
「おう任せろ!」
集めた魔力の塊をフェンディアに持たせた。
「こんなもん見たことねぇ……精密過ぎるだろ」
「ちょっとそれに水のイメージを入れてみて」
「お、おう……」
フェンディアが魔力の塊にイメージを入れていく。
ㅤすると、魔力は白く輝いてきた。
バチャンッ「うおっ」
魔力が水に変わり、床へと落ちた。
「なるほど……」
これで分かったことがある。他人の魔力に自分がイメージを注いでも魔法が使えるということ。
ㅤつまり、誰かが魔法を使おうと魔力を集めた時に、その魔力をイメージを送れば妨害することが出来る。
ㅤただ魔力は目に見えない。今は特殊な空間に入れていたため分かったが、本来魔力は透明な物。それをどうやって見つけるかだな。
「フェンディア、ちょっと聞いてもいい?」
「おうなんだ」
「魔力を見ることって出来るの?」
「あぁ〜魔眼持ちなら見れるんじゃねぇか?」
魔眼か。
「魔眼って私でも持てるの?」
「いや、ほとんど生まれつきだな。体を作り上げる時に、目に魔力を送る血管みたいなのができるんだ。それで眼球に魔力が集まって、魔力や魔素の流れが見れる。
ㅤ他にも、目にイメージを送れば人の裸だって見れるんだ。羨ましいぜ」
羨ましいな。魔眼か……目に魔力を送れるようになれば使えるのか。
ㅤ俺の物質生成の魔法で出来ないかな……いや、失明したら怖いし今はいいか。
「ありがとう。次からも何かあったら聞いていい?」
「俺に答えれる範囲なら何でも答えてやるよ。その代わり、俺の事は……お姉ちゃんって呼んでくれ」
お姉ちゃん……確かに身長も胸もフェンディアの方が上だけど……。
「前世での年齢は?」
「21だ」
「すみませんでした。お姉ちゃん」
歳上だったか〜……。仕方ない、敬意を払ってお姉ちゃんと呼ぶことにしよう。
「ルトちゃんは何歳?」
「17です」
「おぉ〜ってことは元JKか」
本当は男でした、なんて言えない……。自分で嘘をついてしまった罪悪感で心が痛い。
「他にも何か魔法見せてくれよ」
「じゃあ小さな雲を作って竜巻作りますね」
フェンディアさんには敬語になった俺だった。
ーーーーー
「お〜い、夕食の時間だぞ〜」
「今行く〜。行きましょうお姉ちゃん」
「へへっ、なんか家族が出来たみたいだ」
フェンディアさんと一緒に、ミシェルの元へ戻った。
「二人とも何してたんだ?」
「ちょっと魔法の練習。嫉妬した?」
「べ、別にしてないけど、僕にも構ってほしかった……
」
かっ……可愛いっ!? ミシェルが頬を染めてもじもじする姿に、ついキュンとしてしまった。
ㅤ俺がこの世界に来て、『可愛い』なんて感情を持ったのは初めてだ。
「どうした?」
「う、ううん何でもない。明日はたくさん構ってあげるね」
自分で言って恥ずかしくなったので、焼いてある肉にかぶりついた。
ㅤん〜美味しい。何かタレっぽいのがかかってるな。この街の調味料か?
「そうそう。俺ルトちゃんに 『お姉ちゃん』 って呼ばれるようになったんだぜ」
「ルト、それは本当か?」
「ま、まあ歳上だし……」
「こんなカッコいい見た目してんのに、中身は小動物みたいで可愛いよな〜ルトちゃんって」
カッコいい見た目、か。確かにボーイッシュではあるな。
「確かに、筋肉もかなりあるし、頼れる女性って感じだな。でもどうしてこんなに可愛いんだ……」
「っ! ……げほっげほっ」
肉食ってる時に変な事言わないで欲しいな。喉に詰まりかけて窒息死しそうだったぞ。
「なぁ、僕には『お兄ちゃん』って呼んでくれないのか?」
「えぇ? ミシェルはミシェルだよ」
ミシェルの事は名前で呼びたい。
「そっか……」
「ミシェルって名前好きだしね」
「そ、そうか」
落ち込んだところに、少し喜ばせるようなセリフを言えばすぐに笑う。そんなミシェルが愛おしい。
ㅤもっと虐めたくなる。
「なぁイケメン。今更だけど本当に勇者なのか?」
「本当に今更だな。一応勇者って名前を国王に貰ってるよ。ルトは知ってると思うけど、昔の勇者の家系とも親しい仲なんだ」
あ、イシールさんか。日本人と結婚したっていう人。
「勇者になって何か良い事あったの?」
「それなりに有名になって、女性に好かれることが多くなったかな。でも魔物の討伐依頼が多くてね、忙しくなっただけだよ」
確かに勇者って楽な仕事じゃなさそうだな。
ㅤラノベではブラブラ世界を旅してるイメージだけど、本当は人々を守らないといけないもんな。
「魔王に勝てる自信はあるのか?」
「自信も何も、勝たなきゃいけない。それだけだよ」
そうだな。勇者として勝たないといけない。
ㅤ出来るか出来ないかは気持ち次第ってよく親に言われたなぁ、その言葉が今になって響いてきた。
「さ、少しゆっくりしたら寝るよ」
「えぇ〜早いよ」
「そうだぜ〜? まだ夕食食べたばっかりじゃねぇか。牛になるぞ〜」
「牛になる……? よく分からないけど、僕達は毎日激しい運動してるから、太はしないよ。
ㅤフェンディアも運動したらどうだい?」
ミシェル、それ結構失礼だぞ。
「なっ!? お、俺は別に太ってなんかねぇよ!」
「す、すまない」
ほらな。
「でも運動は大事だよ。私なんてほら、綺麗な腹筋出来てるし」
「ちょっ……!」
「うぉ〜綺麗な腹筋だな。羨まし〜」
ミシェルは顔を逸らして必死に見ないようにしている。
「ミシェルはピュアだね〜、別にお腹くらい大丈夫でしょ」
「お、男にとってはある意味で不味いんだ……もしもの時の為だ」
もしもの時……? よく分からないが、見たら何かまずいことがあるのか。
「それはごめん」
「ルトちゃん、男には大事なプライドってのがあるんだぜ」
「そ、そう」
何の話か分からないな。
「まあいいや。ミシェル、お姉ちゃん。早く寝よう」
明日も朝から運動なんだし、今日は疲れてるし。早めに寝て明日に備えないとな。
「て、テントを立てるから待ってくれ」
「3人入るかな?」
昨日でさえ二人でかなり狭かったんだが。
「大丈夫だろう」
ーーーーー
「せ、狭い」
3人とも密着して横になっていた。
ㅤ俺が真ん中で、右手側にミシェル。左手側にフェンディアさん。
「暑苦しい……」
「ぼ、僕が外に出よう」
「だ、大丈夫だ。俺が街の宿で寝るから2人は楽しんでくれ」
楽しんでくれ?
「おいフェンディア、別に俺達はそういう事しないからな!」
「ジョークだよ!」
そういう事……俺は言葉の意味に気づいてしまい、急に意識してしまった。
「そ、その顔はなんだ……」
「ごめん……寝ようか……」
「おい距離を取らないでくれ、安心してくれ!」
「大丈夫、ミシェルの事は信じてるから」
ミシェルは俺が危険を感じたと思っているようだが、実際は逆だ。
ㅤ俺がミシェルを襲ってしまいそうになったからだ。本当に恐ろしい。人間ってのはこうも単純や生き物だったなんて……。
ーーーーー
結局、俺はまた眠れなかった。
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