魔王LIFE

フーミン

16話 恐怖と依存

一先ず落ち着いて話をするために宿の一室に入った。


「この街にも魔王が来たの?」


ミシェルが話しても聞かないため、俺が代わりに質問することになった。


「魔王が来て街の人は全員連れていかれたよ。幸い、俺は女神様に貰った《神速》 っていう技能があるからな」
「女神様に貰った?」


普通技能をポイントを消費して取るんじゃないのか?


「ああ、まああれだ。溜まりすぎてたからボーナス、ってやつか」


溜まりすぎてたってのはポイントの事か?


「それはどのくらい?」
「10万」
「じゅうまっ!?」


10万ポイント!? それあれば技能取り放題じゃねぇか!


「さっきから何の話をしてるか分からないんだけど」
「あ、ミシェルには分からなくていいんだよ」
「で、《神速》で魔王から逃げれたって訳よ。俺以外には誰もいないぜ」


なるほど……フェンディア1人か。
ㅤこうやって街を巡っていけば魔王と同等の力を持った仲間が見つかりそうだな。


「ねぇフェンディア。お願いがあるんだけどいいかな?」
「お、なんだ?」
「一緒に魔王探し手伝ってくれない?」


それでもし仲間になってくれたら色々と便利だし有難い。


「一緒に行きたいんだけどよ、生憎魔王と戦えるほどの強さは持ってないんだ」
「大丈夫。その《神速》を利用するだけだから」
「利用って俺は道具か……ま、それならいいぜ」


よしっ! これで仲間が一人増えたぞ!


「ミシェル、良いかな?」
「まあ……いいんじゃない?」
「へっへっへっ……ルトは俺のもんだぜ……」
「残念、私はミシェル意外興味無いから」


それに女に対しては何の感情も持たないしな。
ㅤただその胸の大きさは羨ましいと思う。


「それで、今からどこかに行く宛なんかあるのか? イケメン」
「しばらくはこの街でゆっくりしたい。それに剣の腕が鈍らないように訓練もしないと。ルトもするでしょ?」


魔物と戦ってないしな。少しずつでも鍛えていかないと、この間に魔王が強くなってるかもしれない。


「今日は休むけどね」
「そうだね。もう外は暗い、明日の朝から訓練を始めよう」
「か〜っ、二人とも忙しそうで」


フェンディアはやる気が無さそうだ。


「じゃあ、私は隣の部屋で寝ます」
「じゃあフェンディアさんはこの部屋で。僕は別の部屋で寝るよ」


それぞれ別々の部屋に入って、寛いだ。
ㅤ久しぶりにベッドでゆっくりした気分だ。転移して城で寝て、起きた時にこっちに戻るのもいいけど、それじゃ冒険じゃねぇしな。


「はぁ……おやすみ……」


誰かに声をかけた訳では無いが、おやすみと一言呟いて瞼を閉じた。




ーーーーー




次の日の朝、ミシェルが起こしに来て早速訓練が始まった。
ㅤといってもただ戦うだけだ。相手の動きを読んで、攻撃を避けるか防御、そして攻撃を与える。
ㅤフェンディアはそんな2人の動きを見て驚いていた。
ㅤなんせ、魔王と勇者の本気の戦いだしな。


「はぁっ……はぁっ……やっぱアレからずっと勝てないや……」
「ミシェルのお陰だよ。フェンディアも戦ってみる?」
「い、いや、俺はいいや……死にたくねぇ」


死ぬほどの攻撃じゃないんだけどな。
ㅤと、辺りを見渡すと地面にヒビが入っていたりしていた。
ㅤかなり激しい戦いだったようだ。


「少し水分補給して休憩したら、二戦目始めようか」
「今度は魔術のみ、でね」
「それもルトが勝っちゃうんだけどね……」


どうやら俺が使う魔法の威力はかなり強いらしい。
ㅤ普通に火の玉を生み出し、相手にぶつける魔法も本来なら赤い火の玉が出るのを、俺は青い火の玉が出たり。
ㅤちょっと魔力を込めてイメージしたら巨大な竜巻が出来そうなほど大きな風を生み出したり。
ㅤやっぱり魔王は凄い。


「ルトちゃんってさ、魔王より強いんじゃない?」
「え〜? そんなことないよ。今頃あの魔王は私の3倍は上にいるかも」
「ルト、もっとポジティブに行こう」
「ま、ミシェルと一緒に戦えば楽勝かもね」


魔王と勇者が1人の魔王を倒そうとタッグを組めば、簡単に倒せるだろう。
ㅤサハルの技能がとんでもない物じゃなければ、の話だけどな。フェンディアのようなボーナス技能を貰っていたら、きっと勝ち目はないだろう。


「どうしたの? ルト」
「いや、本当に魔王に勝てるのかなって」
「あんまり考えてても仕方ないよ。勝てる勝てない、じゃなくて、勝たなきゃいけないんだ。
ㅤ魔王というのは、この世に居ては行けない存在なんだから。僕達が英雄になるんだ」


この世に居ては……。


「そ……そうだね……」


ミシェルが俺を魔王と知ったら、どうなるのだろうか。
ㅤそんな日が来るのを考えると、とても悲しくなる。いつかミシェルとの関係が終わってしまう……。


「ほらミシェル。二戦目始めるよ」
「うん……」




ーーーーー




「はぁ……はぁ……」
「ルト、体調が悪いのか?」
「大丈夫……」


二戦目は、得意分野である魔術のみの戦いであるにも関わらず負けてしまった。
ㅤ居てはいけない存在、という言葉が頭から離れずに、ずっとその事だけしか考えてられなかった。


「少し休もう」
「うん……」


建物の陰に座って休む。心を落ち着けないとな。


「お〜い! 飲み物持ってきたぞ〜!」


フェンディアが《神速》で飲み物を持ってきてくれた。俺がフェンディアを仲間に入れたのは、これが目的だったからな。


「フェンディア、ルトが調子悪そうにしてるんだけど、昨日の夜何かした?」
「は? なんで俺を疑うんだよ。ルトちゃん大丈夫か?」
「うん、大丈夫」


何を俺は悲しんでいるのだろうか。まだ嫌われると決まった訳では無いのに、怖くなってどうするんだ。
ㅤこれも……女になってしまったからなのだろうか。
ㅤ感情がすぐ表に出てしまう。辛い、嫌われたくない、必要とされたい。そんな感情を、考えれば考えるほど心の中を埋め尽くしていく。


「ルト……何も怖がることはない……」
「あっ……」


ミシェルが優しく抱きしめてくれた。それだけで心が落ち着く。とてもポカポカしか気持ちになる。


「何か怖いことがあったんだね……僕がいるから大丈夫。何かあったら僕に頼っていいんだよ。
ㅤ僕はルトを見捨てるなんて事はしない。安心して」
「うっわ。やっぱイケメンが言う事は違うな。
ㅤ俺だったら恥ずかしくて言えねぇわ」


俺を……見捨てない。その言葉だけで、心が綺麗になるような感じがした。
ㅤまた、その言葉を聞きたくなった。


「もう1回……言って……」
「ルトの事は絶対に見捨てない」


俺は、ミシェルに依存してしまったのだろうか。
ㅤミシェルの肌、声、全てが俺の心に安らぎを与えてくれる。本当にこのままで大丈夫なのだろうか。
ㅤミシェルの事が好きすぎて、少しだけ辛くなった。


「ありがとう……さっきより少し良くなった気がする。三戦目しよう」
「おっ、顔変わったね〜。乙女の顔」


乙女の顔か。
ㅤそうなのかもしれない。俺は女だ。ミシェルに依存しても……良いんだよな。

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