魔王LIFE

フーミン

14話 冒険初日

ㅤ城を出る時、仲間達が泣きながら見送ってくれた。別れる時に泣いてたら心配するじゃないか。


「きっとあの人達ならルトがいなくても大丈夫だと思うよ」
「そうかな……」


ㅤ確かに俺が居てもいなくても変わってないと思うが、リアンがいないのならアイツらも何をしたら良いのか分からないんじゃないか?
ㅤ心配だ。もしかしたら帰ってきた頃に城が無くなっていたり……可能性はある。


「さ、長旅になるし。気楽に行こう」
「人々が奴隷にされてるのに?」
「まあそれは辛いけど……思い詰めてても精神的ストレスが溜まるだけだよ。ほら、笑顔笑顔!」
「っ……」


ミシェルの笑顔にドキッとしてしまった。


「あのさ、僕と付き合う気になったかな……?」
「え……まだ厳しいかなぁ……」


本当は好きで好きで、すぐにでも付き合って結婚したい。でも、まだ男の部分が残っていて、あと1歩が踏み出せない。
ㅤこれに関しては、何も変われないようだ。


「でも、僕の事好きなんだよね?」
「そ、そうだけど……」
「良かった」


2人きりでの長旅。かなり気まずい……。
ㅤずっとモヤモヤした感情を抱えたまま、これから過ごしていくのだろうか。


ーーーーー


日が真上に登った頃、ミシェルと俺は昼食を取ることにした。
ㅤ城から持ってきた果物の皮をミシェルが剥く。本来なら女が料理のするのだが、俺は料理経験が全くなく、ミシェルに任せるしかない。


「この赤い果物は?」


まるでリンゴのようだ。


「ポンゴっていう果実だよ」


ポンゴか。リンゴのリがポに変わっただけ、とても覚えやすい。


「街につくには、明日の夜頃までかかるからしっかりと食べないとね」
「明日の夜!?」
「本当は馬車で行った方がいいんだけど、魔物と戦って強くならないといけないし、徒歩でね」


馬車が良かった……。
ㅤミシェルに受けた訓練で、足や腕が筋肉痛で歩くのが辛い。


「うぅ〜……ダルい〜」
「僕がおぶっていこうか?」
「おぶっ……いいの?」
「疲れたらやめるけど」


でも、ミシェルが疲れちゃうしな。
ㅤ俺も何とかミシェルより強くなったんだし、いつまでも甘えてられない。


「じゃあ、今日の夜までお願いします」
「は〜い」


結局おぶってもらう事にした。
ㅤ重い荷物を持ちながら俺を背負うミシェル。一体どんな体力をしているのだろうか。


「あ、あんまり動かないで……」
「? どうして?」
「その……胸が当たって」
「あ、ごめん」


俺が動くと背中に胸が当たったり当たらなかったりして、ミシェルが色んな意味で疲れるのだそうだ。
ㅤじゃあ押し付けちまえって、手を首に回して楽な体勢取ったら今度は息だそうだ。


「じ、自分で歩こうか?」
「大丈夫……僕にとって嬉しいことでもあるから」
「もしかしてマゾ?」
「マゾ? それが何なのか分からないけど、多分そう」
「そっか」


ミシェルはMなのか。Sの俺と良い相性だ。
ㅤこのまま街まで走ってもらいたいが、夜までって約束したし仕方ない。


「あ、魔物」
「ゴブリンだね」


この魔物は俺を魔王と認識するのだろうか。
ㅤしかし俺と目が合うと、一目散に逃げていった。


「何だったんだろう」
「知らない」


魔王に怯える魔物もいるんだな。


ーーーーー


結局、魔物と戦うこともなく夜が来た。
ㅤテントを張って、その中に眠る。防寒用には何も持ってきていない。


「僕女の子と寝るの、これが初めてなんだ」
「う、うん」
「ドキドキするね」


俺も心臓がバクバクだ。
ㅤどうしても横で寝ているミシェルに目がいってしまい、眠ろうとしても眠れない。


「そうだ。ルトって小さい頃はどんな子だったの?」
「小さい頃……覚えてないかな」
「何か楽しかった事とか、こんな事して遊んでたとか。
ㅤ僕はね、よく怪我してお父さんに怒られてたよ」


俺は小さい頃、というのがない。
ㅤ前世には勿論あったが、異世界に来た時は既にこの姿だった。


「ルトのお父さんやお母さんってどんな人?」
「……いない」
「え……?」
「お父さんもお母さんも、一度も見たことない」


別に捨てられたとかじゃなく、普通にいない。
ㅤ魔王だからなのか、それとも他の理由なのか。自分でも分かっていない。


「そっ……か」


ミシェルは俺が親に捨てられたと思い、優しく抱きしめてくれた。
ㅤそれが嬉しいことに変わりはないが、なんだか心が痛む。


「明日朝早いし、僕もう寝るね。何かあったら起こしてね」
「うん、ありがとう」


俺もなるべくミシェルを見ないよう、外側を見て目を閉じた。


ーーーーー


「ふわぁ〜〜……あ、ルト早いね」
「うん……おはよう」


結局眠れなかった。いや、眠れたとは思うのだが疲れが全然取れていない。それに今になって眠くなってきた。


「じゃあ今日の夜に到着する予定だし、荷物片付けて行こうか」
「……うん」
「どしたの?」
「……眠い」
「ちゃんと眠れた?」
「全然……」


呂律があまり回っていない。目が開かないし、油断したら眠ってしまいそうだ。
ㅤ頭がボーッとして、とても心地が良い。


「まだ休む?」
「いや、頑張る」


テントから出て深呼吸をする。


「あぁっダルい……」
「ははっ、こんな一面が見れるなんて僕は幸運だなぁ」
「早くいこ……」


目を擦りながら、テントの片付けを手伝い。
ㅤ自分の荷物を持って歩き始める。


「おっと、危ない」
「あぁごめん……」


すぐに意識が飛びそうになり、倒れそうになったところをミシェルに助けてもらった。


「仕方ないなぁ、ほら、乗って」
「……うん」


結局背中に乗せてもらい、眠った。

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