魔王LIFE

フーミン

9話 急発展

「まず最初に一言謝らせていただきたい」
「捕まった者達のことか」
「私の指導不足による勝手な行動。魔王様の今後に影響する事態を招いてしまい、誠に申し訳ない」


テスラがその場で土下座をして、額を床へ当てた。


「まあ頭を上げなよ。一応そいつらのお陰で正確な情報が得られたんだし、捕まった仲間達はこちらの情報を漏らさない限り攻める事はないよ」
「寛大なるお言葉ありがとうございます」


テスラは立ち上がり、さぁ本題といった様子に切り替わった。
ㅤ流石ヴァンパイアの王だ。


「それで、私達ヴァンパイアが魔王様の為に迷惑をかけない範囲で出来ることを考えました」
「ほぉ」
「魔物や魔族、それら全てを我々が全力でサポートし、相手からは人間にしか見えないように魔法を使うのです」


ん? それだと魔力効率が悪くないか?


「我々ヴァンパイアは、眷属内での魔力の共有、感覚の共有が可能です。小さな生き物に化け、それぞれの部屋に潜むことで効率的に幻影魔法を使うことが可能です」


なるほどね。


「じゃあ頼むよ。ちょっとこっちに来てくれる?」
「はっ」


テスラを俺の近くへと寄せる。


「はいっ、ご褒美」
「っっ……幸せにございます」


まあただハグなんだけど。何やらハグした相手から不思議な雰囲気を感じるようになるんだよな。
ㅤ魅力的になるというか……フェロモン? 他にも戦闘能力だったり魔力量が上がったって話も聞く。


ㅤハグを終えると、表情は変わらないものの赤くなっているテスラ。


「では、失礼させていただきます」


そういって部屋から出ていった。
ㅤヴァンパイアの王なだけあって、かなり賢い雰囲気だった。きっと魔族組の中では一番の権力を持っているのではなかろうか。


ㅤテスラが去っていった後、俺は一度仮眠を取ることにした。




ーーーーー




コンコン「ルト様、地下の状況報告に参りました」
「あぁリアンか……ふぁぁ〜〜〜っっ……どうぞ」
「睡眠中失礼します」


状況報告か。リアンも役に立とうとしているのだろう。


「まずドワーフ達ですが。
ㅤルト様の要望通りの箸の完成。
ㅤ女エルフ達用のメイド服。男エルフに執事服の作成」


おぉ、ついまともな衣装が完成したか。エルフ達いつも植物で服作ってたからな。
ㅤ着々と作戦日の準備が進んでいってるな。


「そうだリアン。ちょっと私も作戦に加わろうと思うんだが、手伝ってくれ」
「手伝う……ですか? 私は大丈夫ですよ」
「まずこの作戦は、本作戦が成功していないとダメだ。
ㅤその作戦というのがーーー」


俺が考えた作戦は、ほぼ俺の目的の為だ。


「ーーー。どうだ?」
「良いと思います。やはりルト様が一番重要ですから、協力いたしますよ」
「ありがとう。リアンはいつも頑張ってるね」
「そ、そんな事ありません……私なんてまだまだです」


そう否定はするものの、他のものより頑張っていると思う。
ㅤ場内全ての状況を把握し、俺の支持に完璧に従う。これほど有能な人が最初の仲間で良かった。


「今日はいつも頑張ってるリアンに、最高のご褒美をあげようかな……?」
「最高の……ですか」
「おいで」
「っ……はいっ!!」


その日、魔王の部屋には女々しい声が響いた。
ㅤその行為はルトのリハビリの為でもあり、無駄なことではない。何をしたのかはご想像にお任せする。




ーーーーー




〜作戦日まで残り2日〜


ドワーフ達は箸と衣装の量産。
ㅤヴァンパイア達は幻影魔法の訓練。
ㅤエルフ達は貴族のヴァンパイアによるメイドの基本的な仕事。人への接し方を教わっていた。


ㅤかなり順調に準備が進んでおり、このままいけば作戦は成功。囚われたヴァンパイアがどうなったのか分からないのが心配だが、気にしてもしょうがない。
ㅤ俺の衣装も特別に作ってもらった。なんとテスラがデザインしたドレスらしい。それをドワーフが作成、かなり良い衣装だ。本番に着るとしよう。


ㅤリアンもエルフ達に混ざって指導を受けている。既に完璧そうなリアンだが、ヴァンパイア達にとっては少し惜しいらしい。
ㅤそんな準備が進んでいる中も、地下には入居者がどんどん増えていっている。生殖、外から来た者など。
ㅤ新しく入ってきた新人は、先輩に生活の仕方やご褒美について、魔王の美しさについて語られるらしい。


ㅤ俺はというと、ベッドでゴロゴロしている。
ㅤたまに腹筋をしたり顔のリンパマッサージ。クビレを作るストレッチ、髪型を変えてみたりした。
ㅤどれも綺麗なドレスを着るため。


「マジで女になったな……」


たまに我に帰ってはそんな事を言うばっかりだ。
ㅤ女ホルモンとは恐ろしいな。最近は魔族の男達が凄く魅力的に見えてきた。本能的に男のフェロモンを感じているのだろう。
ㅤオークやゴブリンは……生理的に無理。といったところだ。毎日ヤってるもんだから、体からの異臭が辛い。


ㅤ残り2日。明後日には100人の偵察部隊がやってくる。
ㅤこの短期間でかなりの成長を見せた仲間達は、初対面の相手に敵意を与える事すらできないほど美しくなっている。


「楽勝だな」


ーーーーー


〜作戦日前日〜


ホールには入らないため、地下にある広場にて最後の報告が行われた。


「お前達! この3日間よく頑張った!! お陰で明日の作戦は成功できそうだ!」


広場に集まっている仲間達は、来ている服も雰囲気も、数日前とは違っていた。


「いよいよ明日は本番。エルフにヴァンパイア! 心の準備は出来てるか!!」
「「おぉぉぉぉおおお!!」」


エルフ達、ヴァンパイア達は本作戦の重要な役割だ。特にヴァンパイア。他の魔物達の姿も人間に見せなければならない。


「魔物組!! 暴れるなよ〜!!!」
「オォォォオオオオオオッッ!!!」


魔物は種類が多くて全て把握するのが大変だ。


「ドワーフ達! 私達のために衣装を作ってくれてありがとう!!」
「「おぉぉおおお!!」」


ドワーフ達がいなければ、相手に与える印象は最悪だったな。


「そして、リアン!!」
「……えっ!?」
「ずっと全ての情報を把握し、誰よりも頑張ってきたリアンに『ありがとう』の言葉を送ると共に、皆で胴上げだ!!」
「えっ!? えっ!?」


俺の横にいたリアンを、仲間達の方へ投げた。


「「リアンッ! リアンッ! リアンッ!」」


皆がリアンを胴上げし、リアンは嬉しさのあまり普段崩さない表情がグチャグチャになって、涙を零していた。
ㅤ皆、良く頑張ってくれた。多分一番頑張ってないの俺だと思う、ごめん。


「今日は皆、しっかりと身体を休めて明日に備えるように!」


俺はそれだけを言い残し、自分の部屋へと転移した。


ーーー


そして、いよいよ次の日の朝がやってきた。
ㅤヴァンパイアからは予定通り偵察部隊が来たと知らせが入り、皆に緊張が走る。

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