鬼ノ物語

フーミン

17話 悪夢

それから俺は、ゴブリンの綺麗な倒し方を見つけた。
ㅤ頭と胴体に分けるようにして倒すと、出てくる物は血しかないので、他の内臓が出るより綺麗だ。


「お゛え゛え゛ぇっっ!!!」


それでも吐いてしまうのは仕方ない。


「気持ち悪さを克服すれば大丈夫そうだな」
「ですね……多分」
「まあ、魔物を倒せるようになっただけでも偉い。今日は終わりだ」
「ふぅ……」


そろそろ太陽が沈み始める頃だ。


「転移するぞ」
「はい」


そうして城へと転移していった。


「よし風呂だ」
「またですか……」


まあ全身に魔物の血と臭いを纏ってるんだから仕方ないな。
ㅤ風呂では昨日と同じように、カケルさんに体を洗ってもらって湯船に浸かる。しばらくしてカケルさんが入ってくる。


「今日はよく頑張ったな」
「……はい」


カケルさんに頭を撫でられた。
ㅤこうして1日の頑張りを素直に褒められると、また頑張ろうっていう気持ちになる。


「明日は身体を休めよう。多分筋肉痛が酷いぞ」
「今若干痛いです……」
「部屋に戻ったら寝るか」


更に筋肉痛が酷くなる前に寝た方が良いな。


ーーーーー


「寝れるか?」
「はい。凄く眠いです」
「そうか。じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい……」


俺とカケルさん。同じベッドで横になって眠る。
ㅤ同じ布団を使っているので、自然とお互いの体温が合わさる。とても温かくて良い匂いだ。


「あまり布団を引っ張るな」
「す、すみません」


変な事はしないですぐに眠ろう……。


ーーーーー


ザクッ……ボトボトボトッ……


「え……」


ザクッ…………ボトボトッ……


「う゛っ…………」


ザクッ……ボトボトボトボトボトッ…………


「お゛え゛え゛え゛え゛ぇっっ」


ーーーーー


「っ!? 〜〜〜お゛え゛え゛ぇっっ……」


とても気持ち悪い夢を見て、起きた瞬間にヤバイと感じた俺はベッドの下に吐いてしまった。


「う゛っ……うぇっ…………はぁ……はぁ……」
「お、おい大丈夫か!?」
「ごめんなさい……部屋で吐いて……しまいました……何か拭くものを……」
「お、落ち着け! 俺が拭くからニオはゆっくりしてるんだ」
「すみません……」


ゴブリンを何匹も殺して、大量の内臓が出ていく夢を見た。臭いもはっきりして、今も気持ち悪い。
ㅤ喉が熱い……水か何かを飲んだ方が良いだろう。


「すぅ…………はぁ…………」


魔法で手のひらに少しだけ水を生み出し、それを少しずつ口にする。
ㅤ体から何かが抜けていく感じがする。これが魔力だろう。


「流石にキツかったか……」
「い、いえ大丈夫ですから……申し訳ありません……」
「まだ気持ち悪いか?」
「す、少しだけ……」


床を綺麗にしたカケルさんが、俺の背中を優しく摩ってくれた。


「眠れそうか?」
「……またあの夢を見そうです……」
「だよな……。じゃあ今日は俺を好きなだけ抱きしめていい」
「え?」
「俺を自由にしていいから、安心して眠るんだ」


好きなだけ抱きしめていい……? それはそれは……もう最高のご褒美じゃないですか。


「じゃあ……」


カケルさんを横にして、俺はその体に密着した。
ㅤ腕枕。もう片方のカケルさんの手を布団に。まるでカケルさんに抱きつかれているようになっている。幸せだ。


「つ、角……」
「あっ……」


危ない危ない。つい角で攻撃してしまうところだった。


「眠れそうか?」
「はい……幸せです……」


カケルさんの顔を見てそう言うと、目を逸らされた。照れているのだろう。


「おやすみなさい……」
「ああ、おやすみ」


ーーーーー


翌朝、激しい筋肉痛が俺を襲った。


「うぅ……」
「頑張れ」


頭を撫でられている。


「そうだ。刀持っていた方が良さそうだな」
「そうですね……いたた……」
「あまり動かすと痛めるからな」
「はい」


片手で刀を握る。これはカケルさんがトイレに行ったりする時に不安にならない為だ。
ㅤカケルさんの近くだと安心できるのだが、距離が離れていく事に不安や恐怖心が襲ってくる。


「ニオちゃんはここねっ!!」バタンッ!!


突然部屋の扉が開かれた。


「ユキさんっ!!」
「お前か」
「ニオちゃ〜ん寂しかったよね! だよね! うんうん……私が来たからもう大丈夫だよ」


そういった俺の頬に顔を擦りつけてきた。


「えへへへ……」
「あらカケル。何してるの?」
「見ての通り、筋肉痛に苦しむニオと一緒にいただけだ」
「筋肉痛!? に、ニオちゃん! カケルに何されたの!?」
「べ、別に……自分を守る訓練をしてもらっただけだよ」


なんだろう……ユキさんと久しぶりに会ったのに、久しぶりに会った気がしない。
ㅤでも、一つの部屋にユキさんとカケルさんが一緒に居るんだと思うと、とても幸せだ。


「わぁ……ユキちゃんがこんなに嬉しそうに……カケルのお陰ね」
「ユキ、体は大丈夫なのか?」
「うん、完全に回復したよ」


そういって両手を腰に当ててドヤ顔を決めた。


「それにしても……ニオちゃん元気だった?」
「ここに来た時は凄かったらしいぞ。耳ちぎって目玉潰して頭をかち割ってたらしい」
「あ、あはは……その時はもう……狂ってたから」
「そうなの!? あぁでも……笑顔のニオちゃんが見れて嬉しい……」


久しぶりに会ったせいなのか、ユキさんが凄く甘えてくる気がする。

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