鬼ノ物語
14話 感情
風呂上りに体を拭かれた後、浴衣のような簡単に着れる服を着せられた。身体を覆う布を、紐で固定するだけの服。紐が解けると前は丸見えだ。
ㅤそんな服を着て、カケルさんの部屋に連れてこられた。
「あ……の…………痛くはしないでください……」
「何言ってるんだ。飯食ったら寝るぞ」
そういうと、どこからかサラダを取り出した。薄黄色い液体がかかっている。ドレッシングだろうか。
ㅤ俺はつい、奴隷の時にされる事が当たり前だと思って、つい変な事をされるのかと思ってしまった。恥ずかしい。
ㅤこの世界にもそういう調味料はあるんだな。
ㅤそんな事を思いながら渡されたフォークを使って食べる。
ㅤ食べ終わると、お皿はまたどこかへとしまわれた。まるで空間の中に消えていくように。
「寝るぞ〜」
「えっと……では部屋に戻ります……」
「ん? ここで寝るんだぞ」
「いいんですか?」
まさか折角用意して貰った部屋は使わなくて良いのか。
「その方が良いだろう?」
「では、喜んで……」
良い匂いのするベッドに横になり、フワフワの布団の中に潜り込む。
ㅤこうして幸せを感じながら眠れる、という事がどれだけ幸せな事なのか。今の俺には感動する程分かる。
ㅤカケルさんも隣で横になり、両手を頭の下にやって天井を見つめる。
「何かしたい事とかあるか?」
「したい事……ですか……」
突然そんな事を言われて、何かしたい事を見つけなきゃいけない……と思った。
「……ずっとカケルさんと一緒に居たいです」
これさえ叶えば、何もかも幸せに終わる。
「そうだな、俺はニオを1人にしない」
「っ……ありがとうございます」
その言葉が嬉しくて、ついカケルさんの手に触れてしまった。俺は抱きしめたかったのだろうか……自分でも分からない。
ㅤ俺はこのまま……男を好きになってしまうのだろうか。
「さ、ゆっくり休もう」
「あっ……」
カケルさんが俺とは逆方向を向いてしまった。
ㅤ顔が見えなくて少しだけ悲しくなったが、俺も寝ないといけない。
「おやすみなさい……カケルさん」
「おやすみ」
前世なら当たり前の生活も、今の俺には全てが特別な事だった。
ㅤ1つ1つの幸せを全身で感じながら、眠りについた。
ーーーーー
「…………っ! カケルさんっっ!!」
「なんだ?」
「よ、良かった……」
起きたらカケルさんがいなくなってるんじゃないか、と心配になってつい名前を呼んでしまった。
ㅤしかし、カケルさんは俺の横でボーッとしている。
「俺はいなくならない。安心しろ」
「っ……はい……」
カケルさんに優しく抱きしめられた。とてつもない恥ずかしさに顔が熱くなった。
「そうだ。ニオにはこの剣をプレゼントしよう」
「え?」
そういって取り出したのは、黒くて綺麗な刀だった。
ㅤ持ち手の部分には赤くて丸い物が埋め込まれている。
「こ、これは……?」
「ニオ専用の黒刀だ。今日はその刀の扱い方を覚えてもらおう」
「分かりました……頑張ります!」
「まだゆっくりしてていいからな。俺のやる気が出たら行こう」
随分とマイペースだな。
ㅤそれにしてもこの刀、カケルさんと同じような雰囲気を感じる。まるでもう1人いるみたいだ。
ㅤ今はこの刀を抱きしめて我慢しよう……。
ㅤ横にいるカケルさんの息が聞こえる度に、脳が気持ちよくなる。まるで前世にあったヒーリング動画の音声のようだ。
ㅤまた、角を触りたくなった。
「……っっ……っ〜〜!」
本当に、この感覚が癖になる。
「お、おい……あまりそれは人前でしない方が良い」
「ふぇ……?」
「その……なんだ。女の子なんだ。イヤらしい声を出すな」
珍しくカケルさんが動揺している。
「イヤらしい……ですか?」
「ああ。俺も鬼人族についてはよく知らないんだが、人前で角はあまり触るなよ」
「わ、分かりました……でもカケルさんがいないと何もできません……」
「…………そこはタイミングを考えろ」
「はい」
この行為はいけない事なのだろう。とても気持ち良いのだが……別にダメな事はしてないと思う。
ㅤ角を触りたくなる衝動を抑えつつ、カケルさんの体に密着して温もりを感じる。
「……」
「……」
しばしの間、沈黙が続いた。
ㅤ何もおかしい事ではないのに、この沈黙は何か特別な事に感じた。
「……カケルさん……」
「なんだ」
「……好きです……」
言ってしまった……! このタイミングしかないと思って、ついに言ってしまった……! 恥ずかしい……!!
ㅤ俺はホモなのか!? それとも女の子だから正常なのか!? 分からない……でも、俺はカケルが好きだ……。
「そうか……」
「……?」
あっけない返事に、俺はカケルさんの顔を見上げた。しかし、別方向を向いていて見ることができなかった。
ㅤ今の返事にも、何か距離を感じたような気がして、嫌われたのかと思い胸が痛くなった。
「カ、カケル……さんっ……!」
「……!? な、なんで泣いてるんだ!?」
「うぅっ…………嫌いにならないで……っ……」
「き、嫌いなんかじゃないからっっ! だ、だから泣くのをやめろっ!!」
「うっ……ん…………良かった……」
最近、というよりこの体になってから泣く事が増えた気がする。
ㅤ困惑するカケルさんをみて、少しだけ嬉しくなった。俺の涙に、こんな反応をしてくれるのか……と。
「す、すまなかった……いきなり好きだと言われて……どう反応したら良いか迷ったんだ。……悪い」
「うん……」
まさか13歳の子供にこんなに照れるのか。
ㅤ俺の心の中に、悪戯心が芽生え始めた気がする。カケルさんに嫌われない範囲で、何か愛を感じたいな。
ㅤまた、部屋に特別な沈黙が訪れた。
ㅤそんな服を着て、カケルさんの部屋に連れてこられた。
「あ……の…………痛くはしないでください……」
「何言ってるんだ。飯食ったら寝るぞ」
そういうと、どこからかサラダを取り出した。薄黄色い液体がかかっている。ドレッシングだろうか。
ㅤ俺はつい、奴隷の時にされる事が当たり前だと思って、つい変な事をされるのかと思ってしまった。恥ずかしい。
ㅤこの世界にもそういう調味料はあるんだな。
ㅤそんな事を思いながら渡されたフォークを使って食べる。
ㅤ食べ終わると、お皿はまたどこかへとしまわれた。まるで空間の中に消えていくように。
「寝るぞ〜」
「えっと……では部屋に戻ります……」
「ん? ここで寝るんだぞ」
「いいんですか?」
まさか折角用意して貰った部屋は使わなくて良いのか。
「その方が良いだろう?」
「では、喜んで……」
良い匂いのするベッドに横になり、フワフワの布団の中に潜り込む。
ㅤこうして幸せを感じながら眠れる、という事がどれだけ幸せな事なのか。今の俺には感動する程分かる。
ㅤカケルさんも隣で横になり、両手を頭の下にやって天井を見つめる。
「何かしたい事とかあるか?」
「したい事……ですか……」
突然そんな事を言われて、何かしたい事を見つけなきゃいけない……と思った。
「……ずっとカケルさんと一緒に居たいです」
これさえ叶えば、何もかも幸せに終わる。
「そうだな、俺はニオを1人にしない」
「っ……ありがとうございます」
その言葉が嬉しくて、ついカケルさんの手に触れてしまった。俺は抱きしめたかったのだろうか……自分でも分からない。
ㅤ俺はこのまま……男を好きになってしまうのだろうか。
「さ、ゆっくり休もう」
「あっ……」
カケルさんが俺とは逆方向を向いてしまった。
ㅤ顔が見えなくて少しだけ悲しくなったが、俺も寝ないといけない。
「おやすみなさい……カケルさん」
「おやすみ」
前世なら当たり前の生活も、今の俺には全てが特別な事だった。
ㅤ1つ1つの幸せを全身で感じながら、眠りについた。
ーーーーー
「…………っ! カケルさんっっ!!」
「なんだ?」
「よ、良かった……」
起きたらカケルさんがいなくなってるんじゃないか、と心配になってつい名前を呼んでしまった。
ㅤしかし、カケルさんは俺の横でボーッとしている。
「俺はいなくならない。安心しろ」
「っ……はい……」
カケルさんに優しく抱きしめられた。とてつもない恥ずかしさに顔が熱くなった。
「そうだ。ニオにはこの剣をプレゼントしよう」
「え?」
そういって取り出したのは、黒くて綺麗な刀だった。
ㅤ持ち手の部分には赤くて丸い物が埋め込まれている。
「こ、これは……?」
「ニオ専用の黒刀だ。今日はその刀の扱い方を覚えてもらおう」
「分かりました……頑張ります!」
「まだゆっくりしてていいからな。俺のやる気が出たら行こう」
随分とマイペースだな。
ㅤそれにしてもこの刀、カケルさんと同じような雰囲気を感じる。まるでもう1人いるみたいだ。
ㅤ今はこの刀を抱きしめて我慢しよう……。
ㅤ横にいるカケルさんの息が聞こえる度に、脳が気持ちよくなる。まるで前世にあったヒーリング動画の音声のようだ。
ㅤまた、角を触りたくなった。
「……っっ……っ〜〜!」
本当に、この感覚が癖になる。
「お、おい……あまりそれは人前でしない方が良い」
「ふぇ……?」
「その……なんだ。女の子なんだ。イヤらしい声を出すな」
珍しくカケルさんが動揺している。
「イヤらしい……ですか?」
「ああ。俺も鬼人族についてはよく知らないんだが、人前で角はあまり触るなよ」
「わ、分かりました……でもカケルさんがいないと何もできません……」
「…………そこはタイミングを考えろ」
「はい」
この行為はいけない事なのだろう。とても気持ち良いのだが……別にダメな事はしてないと思う。
ㅤ角を触りたくなる衝動を抑えつつ、カケルさんの体に密着して温もりを感じる。
「……」
「……」
しばしの間、沈黙が続いた。
ㅤ何もおかしい事ではないのに、この沈黙は何か特別な事に感じた。
「……カケルさん……」
「なんだ」
「……好きです……」
言ってしまった……! このタイミングしかないと思って、ついに言ってしまった……! 恥ずかしい……!!
ㅤ俺はホモなのか!? それとも女の子だから正常なのか!? 分からない……でも、俺はカケルが好きだ……。
「そうか……」
「……?」
あっけない返事に、俺はカケルさんの顔を見上げた。しかし、別方向を向いていて見ることができなかった。
ㅤ今の返事にも、何か距離を感じたような気がして、嫌われたのかと思い胸が痛くなった。
「カ、カケル……さんっ……!」
「……!? な、なんで泣いてるんだ!?」
「うぅっ…………嫌いにならないで……っ……」
「き、嫌いなんかじゃないからっっ! だ、だから泣くのをやめろっ!!」
「うっ……ん…………良かった……」
最近、というよりこの体になってから泣く事が増えた気がする。
ㅤ困惑するカケルさんをみて、少しだけ嬉しくなった。俺の涙に、こんな反応をしてくれるのか……と。
「す、すまなかった……いきなり好きだと言われて……どう反応したら良いか迷ったんだ。……悪い」
「うん……」
まさか13歳の子供にこんなに照れるのか。
ㅤ俺の心の中に、悪戯心が芽生え始めた気がする。カケルさんに嫌われない範囲で、何か愛を感じたいな。
ㅤまた、部屋に特別な沈黙が訪れた。
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