鬼ノ物語
2話 プロローグ-後編
その後も、次々と女性が連れていかれては悲惨な顔で帰ってくるのが続いた。
「こんなのが……毎日続くんだよ」
「毎日……」
こればかりは、楽しいなんて思えない。辛い、生きる事が辛い。
ㅤそもそも俺は、どうしてこんな場所にこんな姿でいるのだろうか。俺は交通事故で死んだんじゃないんだろうか。
ㅤそうじゃないのなら、今俺の身には何が起きているのだろうか。
ㅤ今まで、無理に現実逃避を続けてきた俺に辛い現実が突きつけられ、狂いそうな程胸が締め付けられた。
「っ…………」
「大丈夫かい……私達はアンタよりずっと昔からここにいる。助けにはなれないけど……話し相手にはなれるよ」
「ありがとうございます……」
「……また来たよ」
また1人、男性が俺の元にやってきた。
ㅤ足の重りを外すと、俺の腕を掴んで無理矢理立たせた。
「いっ、痛いっ……です」
「喋るな」
少しでも引っ張られる痛みを少なくする為に、男性と同じ速さで歩く。
ㅤ今度は何をするのだろうか。さっきとは違う方向に進んでいる。
「何処に行くんですか……?」
「お前が知る必要はない」
「そうですか……」
俺はただ、この先に待ち受ける恐怖に震えるしかなかった。
ーーーーー
連れてこられたのは、血なまぐさい部屋だった。
ㅤ人1人がやっと寝れるような石の上に寝かせられ、頑丈に拘束された。
ㅤ横のテーブルにはノコギリのようなギザギザの刃物。
「な……な、何を……」
「動くな。死にたくないならな」
1人の男が白い手袋をして、ノコギリを手に取った。
ㅤガチガチに震える体と、バクバクと音を立てる心臓を一生懸命落ち着ける。目を閉じて、今からくる恐怖に耐える。
ㅤ一瞬。
ガッ 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!?!?」
「動くな!!」
角にノコギリが横から叩きつけられ、ギコギコと音を立てて削られていく。
「あ゛あ゛っ゛い゛だい゛っ!! い゛だい゛ぃ゛ぃ゛〜ーーーーー!!! 〜〜〜~〜っっ!!!」
喉が裂けそうな程叫んだ。声にならない悲鳴を出し続けた。
ㅤそしていつの間にか、俺は気を失っていた。
ーーーーー
目を覚ました時には、鉄格子の中に寝ていた。
ㅤまだ額がジンジンと痛む。少しの衝撃でも痛い。血の味がする。
「ここまで聞こえたよ……悲鳴」
「…………」
俺はもう、喋る気力さえ残っていなかった。
ㅤあれはもう地獄だ。もしかすると、ここは本当に地獄なのかもしれない。交通事故で死んだ俺は、ここで気持ちを改めて生まれ変わるんだ……。
「大丈夫……です……っ!?」
「大丈夫じゃないよ。足音が聞こえるだけでそんなに怯えてちゃ……ゆっくり休みな」
「い……いえ……俺はこんな事を受けて……当然なんです……」
何も覚えてないけれど、きっと前世は酷い人間だったのだろう。だから交通事故で死んで当然だった。地獄に来て当たり前。
ㅤそう思わないと、気が狂いそうだ。
「ゆっくり眠りな……」
「は……はい……」
その場に丸くなって、眠った。
ㅤそれでも、足音が聞こえる度にあの恐怖が蘇って眠れなかった。必死に耳を抑えて、早くこの身体を休めようと目を瞑った。
ーーーーー
数時間おきに犯され、1日おきに生えてくる角を切り取られる。そんな毎日が続き、俺の心はとっくに壊れていた。
ㅤお腹には子供も出来て、その度に子供が殺される。
ㅤ生命とは何なのか……そう簡単に捨ててよいものなのか。それすら考えることでさえ、今の俺は出来なかった。
ㅤただ恐怖に耐えるだけの毎日。そんなある日だ。
周りがザワザワと騒がしくなった。
「し〜っ! 静かにしてください!」
そんな声が小さく聞こえた。
ㅤ何かが削られる音、ガチンと音を立てると女性達が嬉しそうな声をあげる。
ㅤ何が起きているのか分からない。
ㅤ何者かが少しずつ近づいてくる。その度に恐怖心が大きくなった。
ㅤ削られる音。また角を取られる、そう思った。
ㅤ何者かが近づいてくる程、血なまぐさい臭いも強くなった。
ㅤ俺はただ丸くなって、恐怖に耐えるしかなかった。
「大丈夫だよ」
「ひっ!?」
突然足に触れられ、思わず声をあげてしまった。
「す……すみません……静かにしますから……だから……痛くしないで…………すみません……」
しかし、次に来たのは痛みではなく解放だった。
ㅤ足から重りが外されて、手錠も外された。
「え……もしかして……殺されるんですか……?」
自らの身体を抱きしめるように、その場でブルブルと震えた。
「大丈夫……皆を助けに来たんだよ」
「助け……」
不思議な事を言う人物を見ると、とても美しい容姿をした女性だった。綺麗な鎧には血が付いていて、腰には剣。
ㅤまるで、漫画で見る勇者のようだった。
「アンタ、もう怯える必要はない。私達は逃げれるんだ!」
いつも優しく声をかけてくれた女性も、いつの間にか立ち上がって笑っていた。
「さぁ、早く逃げよう。この子は精神的に厳しそうだから、私が運ぶわ。アンタらは他の人達を助けてやって」
「分かった」
「了解」
「ひぃ……」
「大丈夫、この人達も私の仲間よ」
「た、助けて……嫌だ……嫌だぁ……」
2人の男性が剣をもって、女性達の元に向かっている。
ㅤ殺される。死ぬ。男を見ると恐怖心が心の底から湧き上がってくる。
「男がトラウマになってるのかな……」
「ぁ……ぁぁ……」
俺はまた、急な眠気に襲われて意識を失った。
「こんなのが……毎日続くんだよ」
「毎日……」
こればかりは、楽しいなんて思えない。辛い、生きる事が辛い。
ㅤそもそも俺は、どうしてこんな場所にこんな姿でいるのだろうか。俺は交通事故で死んだんじゃないんだろうか。
ㅤそうじゃないのなら、今俺の身には何が起きているのだろうか。
ㅤ今まで、無理に現実逃避を続けてきた俺に辛い現実が突きつけられ、狂いそうな程胸が締め付けられた。
「っ…………」
「大丈夫かい……私達はアンタよりずっと昔からここにいる。助けにはなれないけど……話し相手にはなれるよ」
「ありがとうございます……」
「……また来たよ」
また1人、男性が俺の元にやってきた。
ㅤ足の重りを外すと、俺の腕を掴んで無理矢理立たせた。
「いっ、痛いっ……です」
「喋るな」
少しでも引っ張られる痛みを少なくする為に、男性と同じ速さで歩く。
ㅤ今度は何をするのだろうか。さっきとは違う方向に進んでいる。
「何処に行くんですか……?」
「お前が知る必要はない」
「そうですか……」
俺はただ、この先に待ち受ける恐怖に震えるしかなかった。
ーーーーー
連れてこられたのは、血なまぐさい部屋だった。
ㅤ人1人がやっと寝れるような石の上に寝かせられ、頑丈に拘束された。
ㅤ横のテーブルにはノコギリのようなギザギザの刃物。
「な……な、何を……」
「動くな。死にたくないならな」
1人の男が白い手袋をして、ノコギリを手に取った。
ㅤガチガチに震える体と、バクバクと音を立てる心臓を一生懸命落ち着ける。目を閉じて、今からくる恐怖に耐える。
ㅤ一瞬。
ガッ 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!?!?」
「動くな!!」
角にノコギリが横から叩きつけられ、ギコギコと音を立てて削られていく。
「あ゛あ゛っ゛い゛だい゛っ!! い゛だい゛ぃ゛ぃ゛〜ーーーーー!!! 〜〜〜~〜っっ!!!」
喉が裂けそうな程叫んだ。声にならない悲鳴を出し続けた。
ㅤそしていつの間にか、俺は気を失っていた。
ーーーーー
目を覚ました時には、鉄格子の中に寝ていた。
ㅤまだ額がジンジンと痛む。少しの衝撃でも痛い。血の味がする。
「ここまで聞こえたよ……悲鳴」
「…………」
俺はもう、喋る気力さえ残っていなかった。
ㅤあれはもう地獄だ。もしかすると、ここは本当に地獄なのかもしれない。交通事故で死んだ俺は、ここで気持ちを改めて生まれ変わるんだ……。
「大丈夫……です……っ!?」
「大丈夫じゃないよ。足音が聞こえるだけでそんなに怯えてちゃ……ゆっくり休みな」
「い……いえ……俺はこんな事を受けて……当然なんです……」
何も覚えてないけれど、きっと前世は酷い人間だったのだろう。だから交通事故で死んで当然だった。地獄に来て当たり前。
ㅤそう思わないと、気が狂いそうだ。
「ゆっくり眠りな……」
「は……はい……」
その場に丸くなって、眠った。
ㅤそれでも、足音が聞こえる度にあの恐怖が蘇って眠れなかった。必死に耳を抑えて、早くこの身体を休めようと目を瞑った。
ーーーーー
数時間おきに犯され、1日おきに生えてくる角を切り取られる。そんな毎日が続き、俺の心はとっくに壊れていた。
ㅤお腹には子供も出来て、その度に子供が殺される。
ㅤ生命とは何なのか……そう簡単に捨ててよいものなのか。それすら考えることでさえ、今の俺は出来なかった。
ㅤただ恐怖に耐えるだけの毎日。そんなある日だ。
周りがザワザワと騒がしくなった。
「し〜っ! 静かにしてください!」
そんな声が小さく聞こえた。
ㅤ何かが削られる音、ガチンと音を立てると女性達が嬉しそうな声をあげる。
ㅤ何が起きているのか分からない。
ㅤ何者かが少しずつ近づいてくる。その度に恐怖心が大きくなった。
ㅤ削られる音。また角を取られる、そう思った。
ㅤ何者かが近づいてくる程、血なまぐさい臭いも強くなった。
ㅤ俺はただ丸くなって、恐怖に耐えるしかなかった。
「大丈夫だよ」
「ひっ!?」
突然足に触れられ、思わず声をあげてしまった。
「す……すみません……静かにしますから……だから……痛くしないで…………すみません……」
しかし、次に来たのは痛みではなく解放だった。
ㅤ足から重りが外されて、手錠も外された。
「え……もしかして……殺されるんですか……?」
自らの身体を抱きしめるように、その場でブルブルと震えた。
「大丈夫……皆を助けに来たんだよ」
「助け……」
不思議な事を言う人物を見ると、とても美しい容姿をした女性だった。綺麗な鎧には血が付いていて、腰には剣。
ㅤまるで、漫画で見る勇者のようだった。
「アンタ、もう怯える必要はない。私達は逃げれるんだ!」
いつも優しく声をかけてくれた女性も、いつの間にか立ち上がって笑っていた。
「さぁ、早く逃げよう。この子は精神的に厳しそうだから、私が運ぶわ。アンタらは他の人達を助けてやって」
「分かった」
「了解」
「ひぃ……」
「大丈夫、この人達も私の仲間よ」
「た、助けて……嫌だ……嫌だぁ……」
2人の男性が剣をもって、女性達の元に向かっている。
ㅤ殺される。死ぬ。男を見ると恐怖心が心の底から湧き上がってくる。
「男がトラウマになってるのかな……」
「ぁ……ぁぁ……」
俺はまた、急な眠気に襲われて意識を失った。
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