女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

291話 外出しましょう



「凄い凄い! 随分と仕事が早くなりましたね!」


 メイドの仕事を初めて数週間。私はリアンさんに褒められるまで上達していた。


「は、はい。なんだか身体が軽くなってきたというか、不思議な感覚なんですよね」
「もしかしたら無意識に魔力を使ってるのかもね」


 そういえば、良くリアンさん達から聞く魔力とは何なのだろう。
 気になって聞いてみた。


「魔力って何なんですか?」
「……え?」


 そんな事も知らないの? みたいな顔されて、少し心臓が痛くなった。


「えぇっと……説明するとなると……」
「い、いえ! 無理に教えてとは言いません! さて続き続きっと……」


 リアンさんを困らせないようにと、ルト様の部屋の掃除を再開する。
 メイドの仕事をする以上、ルトさんには"様"を付けて呼ぶようにチヒロさんに言われている。サハルさんに様付けで呼ばなければいけない。
 ルト様とサハル様はこの国の王子と王女で、この二人がこの国を作った方らしい。


「じゃあ私は他の部屋の掃除をしてくるから、頑張ってね」
「は、はい!」
『クロアはこんなところで掃除してるような人間じゃないのになぁ』


 サタナが不満そうな声をあげた。


「どうして?」
『外を冒険したいとか思わない?』
「……全然? だって記憶喪失の私を拾ってくれたルト様の城で働く方が恩返しになるもん」


 そういうとサタナは少し溜め息を吐いた。


『分かったよ。でもたまには外に出て運動するんだよ?』
「そうだね、外に出ないと健康に悪いってチヒロさんが言ってたし。今度許可貰わなきゃ」


 未だに城の外の景色を見た事が無い私は、どんな世界が広がっているのかワクワクしながら部屋の掃除を続けた。


◆◇◆◇◆


──ガチャッ
「あいたっ!?」
「っ!? も、申し訳ありませんっっ!!」


 掃除を終わらせ、部屋から出ようとすると開いた扉にルト様が顔をぶつけてしまった。


「あはは、いいよいいよ」


 しかし、ルト様は笑いながら許してくれた。なんて優しい人なのだろう。


「おぉ〜! 掃除もかなり上手くなってきたじゃん」
「ありがとうございます」
「暇だし今から外に遊びに行かない?」


 遊びに……? ルト様と?


「そ、そんなそんな……私はまだ他の部屋を掃除しないといけないので」
「でも顔には外に出たいって出てるよ?」
「えっ!?」


 どういう事かとポケットにある手鏡で顔を確認する。


「何も……出てませんよ?」
「クロアは可愛いなぁ〜、ほら行こう」
「わわっ!」


 ルト様にお姫様抱っこをされて、城の庭らしき場所に転移した。


「眩しいっ……」
「すぐ慣れるよ」


 今までずっと室内にいたせいで、太陽の光が目に痛い。
 段々慣れてくると、綺麗なお花畑が目の前に広がっていた。


「これはリアンさんが?」
「あ、よく分かったね。リアンが自分で走り回る為の花畑を作ってるんだ」


 自分で作った花畑を走り回る……よく分からない性格だなぁ。


「それじゃあ城下町に降りてみよう。皆にクロアを紹介しなきゃ」
「分かりました……」


 ルト様が手を繋いできて、そのまま城門の外へと歩いていく。




 城下町にやってくると、色んな人々がお店を営業していたりととても賑わっている。


「あれが新しいメイドさん?」
「ルト様に似てないか?」
「随分と大人っぽい顔だな」


 周りの人に観察されている事に気づいた私は、顔をしたに向けながらルト様に着いて行った。


 しばらく歩いていると、突然ルト様が立ち止まった。


「……?」
「お〜い! ミシェル〜〜!!」


 ルト様が誰かに手を振っている。
 視線の先を見ると、金髪で美形の男性がこちらに手を振って走ってきている。二人とも嬉しそうだ。


「ルト様、あの方は?」
「ミシェル。友達だよ」


 ミシェルと呼ばれる男性が目の前にやってきた。


「元気そうだな」
「クロアこそ元気そうで何よりだよ。その子が新しいメイドさん? 初めまして」
「は、初めまして」


 綺麗なお辞儀をされて、ついドキッとしてしまう。


「今はメイドだけど、いつか帰っちゃう予定」
「帰っちゃう? それじゃあそれまでに色んな思い出を作ってあげないとな」


 元の世界に帰ったら全部忘れちゃうんだけどね。


「今は何をしてるところなんだ?」
「クロアって言うんだけど、記憶喪失みたいでね。今は城の外をお散歩中」
「じゃあ僕も手伝うよ」
「本当か!? ありがとう!」


 ミシェルさんと話してる時のルト様、凄く幸せそうな顔をしてる。
 この2人を見てるとなんだかドキドキしてくるな。

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