女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

282話 神魔戦争に向けて



 気がつくとイザナミとイザナギの前に来ていた。
 それも、サタナとクラウディアも一緒に……だ。


「な、なんだ……?」
「なんでクラウディアがいるの?」


 クラウディアも驚いており、サタナは疑問をそのまま口に出していた。
 3人とも混乱している所に、イザナミが口を開いた。


「えっとね。皆の予想通り、最悪の事態になったよ」


 そういうイザナミの顔にも不安が現れている。


「とりあえず詳しい話は今からするから、会議に参加してくれる?」
「会議? まさかゼウスに呼ばれたのか?」


 クラウディアは、その会議とやらが何なのか知っているようだ。


「そう。今から場所を移すよ」


 イザナミがそう言うと、次の瞬間には別の場所に移動していた。
 裁判所のようなテーブルが丸く囲まれており、真ん中のテーブルには以前会ったゼウスが立っていた。


 周りのテーブルには大勢の人……ではなく、神様達が座って真ん中にいるゼウスを見ている。


「とりあえずここに座って」


 イザナミが椅子を引いてくれて、俺達三人はその椅子に座り、真ん中に立つゼウスを見た。


「来てくれたか、クロア」
「っ! わ、私?」


 ゼウスと目が合ったと思ったら、何故か名前を呼ばれた。


「諸君に紹介しよう。あの者が以前、人間界にやってきた神級の悪魔封印の主力となったクロアだ」


 すると、真ん中に巨大な透明のモニターが現れて、俺の驚いた姿が映し出されていた。


「えっ、えぇっ!?」


 驚いた声すらも、全ての神様に聞こえるよう拡声されている。すると、周りの神様達は俺を観察するように見つめてきた。


 どうやらここにいる全員が、真剣に会議に参加しているようだ。


「さて、全員が揃った事だし会議を始めるとする」


 全員? 俺は周りにいる神様達をざっくりと数えてみた。


「ん……えっ?」


 ふと周りを見渡しただけなのだが、尋常じゃない数の神様が存在していた。
 空に浮遊する人。椅子に座っている人。更にその周りを囲むように立っている人。


 あまりにも多すぎて数える事ができない。


「ついさっきの事だ。悪魔達が神界へ侵入するゲートを完成させた」


 やはり、イザナギの言っていた通りゲートが作られたようだ。


「悪魔達はこちらに攻めてくるつもりだ。その理由は勿論、人間界に一人でやってきた神級の悪魔が封印されたのが原因だ」


 つまり、俺達があの悪魔を封印しなければ怒りを買うことはなかった……という事か。


「そこで、悪魔達が攻めてきた時の為の戦略会議を行う!」


◆◇◆◇◆


 かなりの時間話をした。
 ゼウスによって"神魔戦争"と名付けられた今回の戦いの作戦。


 まず、ゼウスによって力を封印されている神様達は、悪魔達と戦う時だけ封印を解く。それはイザナギも含まれている。
 そして、俺には名指しでこう言われた。


「クロア、お前はこの中ではかなり重要な戦力となるだろう。戦闘は得意じゃないそうだが、横にいるサタナキアに器を貸せば弱い悪魔なら倒せるだろう」


 だそうだ。やはり俺の身体をサタナに扱わせて戦う方が良いらしい。
 というか、やっぱり俺もこの戦いに参加しないといけないのか……。それも強制。


 途中でサタナに 「絶対に戦わないとダメなのか?」 と聞いたところ、 「そうしないと世界が滅びるよ」 と言われて何も言い返せなくなった。


 そして最後に、ゼウスにこう言われた。


「悪魔達が攻めてきた時には、お前達を強制的に召喚する。戦闘に備えていろ」


 だそうだ。なんて理不尽な命令だろうか。
 つまり、俺達に命令されたのはこうだ。


──全力で悪魔達と戦え。


 世界を救う為には犠牲が必要とは言うが、これだとただ死ねと言っているようにしか聞こえない。
 まるで一般市民が戦争の最前線に送り出されるような気持ちだ。


 しかし、これだけの数の神様がいれば負ける事はないだろう。周りにいる神様達も余裕の表情だ。
 そんな神様達の表情に、少しだけ不安が薄れる。


「クロアちゃん。お兄ちゃんは凄く強いから、心配しなくていいよ」


 イザナミが俺の肩を叩いてそういった。


「本当に?」
「ああ! なんたって俺はゼウスに危険視される男だぜ? 他にも封印されるような神がいるが、その中でも俺は最強だ。任せろ」


 イザナギは自分の胸をドンと叩いた。
 なるほど、そう言われると更に不安が無くなるな。


 その後も会議は続いて、不安要素は全て取り除かれた。こんなに大勢の神様に勝てるはずがない。


 そうして会議は終了した。


◆◇◆◇◆


「……眩しい」


 太陽の光で目を覚まし、身体を起こす。


 最悪の事態になったというのに、あんなに頼れる神達に会って不安は嘘のように消えていた。


「剣は近くに置いといた方がいいよな」


 明らかに元気になった俺は、剣を自分のベッドの下に入れて二度寝する事にした。

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