女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

281話 消えない渦



渦が消えるまで家でゆっくりしていようと思っていたのだが、昼になっても消える気配がない。
 外を歩いている人達も、魔力が少なくなって皆ボーッとしている。


「怖いですね〜……」
「そうだね〜。これはもう悪魔の仕業で確定かな」


 俺達はリビングで心配そうに外の様子を眺めていた。
 常に大量の魔力を吸い続けているのに、消える気配がない。もしかすると、このまま夜になっても渦は消えない可能性がある。


「はぁ……ちょっとクラウディアの所に聞きにいこうかな」


 俺が椅子から立ち上がると、サタナが腕を掴んできた。


「この前イザナギが言ってたよね? もしもまたクロアを狙った魔物が現れたら危ないよ」
「そ、そうか……」


 確かに、俺1人で外出するのは危険だ。かといって誰かと一緒に行ったとしても魔物に襲われるんじゃあ犠牲者が増えるだけだ。


「僕が行ってくる」
「サタナ……分かった」


 ここはサタナに任せた方が最善だろう。この家の中で、最も頼れるのはサタナくらいだ。


「それじゃあ待っててね」


 サタナは転移でクラウディアの城へ向かった。
 帰りを待つ俺達は、大きな不安で楽しい話なんてできる気分じゃない。


◆◇◆◇◆


 しばらくすると、サタナが帰ってきた。


「どうだった?」
「クラウディアでもダメみたい。ベリアストロにも聞いたけど、どうする事もできないって」


 長年生きてるベリアストロですら何もできないとなると、これはそろそろ危険を感じた方が良いんじゃないか?


「それと、さっき外で子供達が倒れてるのを見たよ。魔力切れだと思う」


 ついに魔力切れを起こす人も現れてきたようだ。魔眼を使えない人は渦が見えない為、あまり気づけないのだろう。
 このままだと外で働いてる人、更には口中の人達が魔力切れで倒れてしまう。


「でも……どうしようもできないんだよな」


 不安が恐怖へと変わり、自分の身体を抱きしめるように腕を組んだ。
 すると、リグがそっと肩を抱き寄せてきた。


「なぁイザナギ」
「何だ、相棒」
「悪魔達はこんなに魔力を集めて何をしようとしてるんだ?」


 渦が悪魔による物だと確定している為、リグは悪魔に対して怒っているようだ。


「こんなに大量に集めている事から想定すると……ゲートの作成」
「ゲート?」


 ゲートっていうと……。


「まさか悪魔達が攻めてくるのか!?」
「それは分からない。ただ、可能性としては神界に攻めてくるだろうな」


 悪魔達が神界に入るゲートを作成したとして……どうするんだ?


「最初は神界を支配するだろう」


 悪魔達が神の世界を支配。それがどういう事なのか、理解するのにかなりの時間を使った。


「この世界は滅びるのか?」
「どうだろうな。どれだけの悪魔が攻めてくるかで変わるけど、神達は全戦力を使って対抗しないとダメだ」


 となると、サタナは邪神だから戦いに巻き込まれるのか。


「クロアちゃんもその戦力の中に入れられてるかもな」


 否定はできない。いや、それは確実だろう。
 俺はイザナミの仕事を手伝っている。それはつまり、神としての仕事をしている訳であって、その戦いから逃れる事はできない。


「……そうならない事を願うよ」


 今はただ、平和な世界が続いてくれるように祈ることしかできなかった。


◆◇◆◇◆


 いつもより活気のない街が暗闇となった。皆寝ているのだ。
 それなのに、俺だけは未だに寝ることができなかった。


 布団の中で最悪の未来を想像すると寒気がする。
 よくこんな状況で寝ていられるものだ……。しかし、それでも寝なければならない。


 明るい朝が来るのを祈って、目を閉じた。

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