女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

276話 いよいよ海に到着



「クロア、アリス。もうすぐ到着するから荷物下ろす準備するぞ」
「うぅ〜……ん…………ずっとここで寝てたい……」


 リグに肩を揺さぶられて、寝返りを打つ。


「困ったな……」


 何やらリグが困った様子なので、仕方なく目を開けて皆を見る。すると、イザナギとエリフォラとサタナも、座ったまま目を閉じて眠っていた。


「あはは……皆寝てるんだな」
「やっと起きたか。俺は寝ないように頑張ってたんだからな」
「ごめんごめん」


 皆馬車に揺られて気持ちよかったんだろうな。スースー寝息を立てて眠ってるよ。
 窓の外を見ると、キラキラと輝く海と砂浜が見えた。


「うわぁ〜! 綺麗〜……」
「海は見えてるけど海水浴場まではまだ少しかかる。皆を起こそう」
「そうだな。皆にこの景色を見せてあげたい」


 俺はリグと一緒に皆を起こした。




「うわぁ〜お。僕こんなの見たことないよ」


 最初に目を覚ましたサタナは、目をキラキラと海のように輝かせながら景色を見ている。
 そして次にイザナギとアリスが目を覚まして、皆窓の外に夢中になっていた。


「エリフォラ〜」
「寝させてくだひゃい〜……」


 エリフォラだけが、ずっと気持ちよさそうに眠っている。仕方ない。一人くらいなら寝させても大丈夫だろう。


◆◇◆◇◆


「到着したみたいだ!」


 その声にエリフォラがパッと目を覚ます。
 そして皆が荷物の準備をし始めて、いよいよ海で泳ぐというワクワクが止まらない。


 馬車が止まると、外から茶髪のお兄さんがドアを開けた。


「お疲れ様でした。到着しましたよ」
「よし、皆降りるぞ」


 荷物を持って馬車の外に降りると、丁度真上に登った暑い太陽と波の音、そして海で泳ぐ人達の声が聞こえる。


「ん〜っ! 海の匂いがする!」


 皆ずっと座っていたりしたから、背筋を伸ばしている。


「それじゃあ行くか!」
「行こうっ!」


◆◇◆◇◆


 広い砂浜、眩しい海、泳ぐ人々、日焼けしようとする男達。


「海だっ!!」
「ひゃっほ〜い!!」
「さぁ早く泳ぎましょうっっ!!」
「泳げるかな!」


 男達より先に水着に着替えて砂浜に足を付けた俺達は、水着で露出している事も相まってかいつもよりテンションが高い。本来の自分が出てきている。
 アリスなんて笑顔で俺の手を握ってるし、本当に楽しみだ。


「リグ達遅いなぁ」
「何してるんだろうね〜」


 男二人を待っていると、やっとクーラーボックスと荷物を持って出てきた。


「皆早いな」
「おぉっ! 皆の水着最高っっ!!」


 リグは身体の毛がフワフワに立っていて、尻尾も荒ぶり、テンションが高くなっているのが一目で分かる。
 イザナギはいつものように俺達の身体を堂々と眺めている。


 やっぱりリグの海パン姿はかなり似合っているな。


「リグ似合ってるよ」
「クロアも可愛いな」


 なんて言ってると、イザナギとサタナがヒューヒューと茶化してきた。


「ヒュー……って、サタナちゃんの水着やばくないか!? お、おっぱ……」
「僕の健康的に日焼けした肌と魅力的な身体を際立たせる最高の水着でしょ?」
「やばいな」


 相変わらずイザナギとサタナは仲が良さそうで何よりだ。周りを歩いてる男達も、サタナを見て鼻の下を伸ばしている。


「……」
「リグもああいう水着が好きなのか?」
「あっ、ああいや!」


 リグもボーッとサタナの身体を見ていたので、腕を掴んで意識を取り戻してやった。
 俺もサタナみたいに胸が大きければ……サタナみたいに自慢できるんだろうな。


「よ、よ〜し! 俺とイザナギで場所の準備するから、その間皆はあの建物でゆっくりするなり、泳ぐなりしてていいぞ」
「私泳げないかもしれません」
「私も」


 エリフォラとアリスが泳げないかもと言ってきた。この場合どうするんだ?


「あそこの建物で浮き輪とか借りれるらしいから、皆で一緒に借りに行くといい」


 ほぉ、あそこは海の家って奴か。


「よし! 皆行こうっ!」
「あっ荷物っ!!」


 リグとイザナギに日焼け止め以外の全員の荷物を託し、俺達は海の家までダッシュで向かった。


「あぁ〜胸が揺れる! 歩こう」


 やっぱり歩いて向かうことにした。


◆◇◆◇◆


 海の家に到着して、貸し出し無料と書かれた浮き輪を取る。


「無料? 凄いな」


 前世だと有料だったのだが、無料となるとわざわざ浮き輪を買ってくる必要はないという事か。


「私とサタナは泳げるから、エリフォラとアリスの分だな」
「それじゃ日焼け止め塗って泳ぎに行こうよ!」


 そうだな。
 にしても、さっきから周りの視線がよく集まるな。勿論サタナの身体を見る為だとは分かるが、堂々と見てくる男達は度胸があるな。


 その後、俺達は海の家の外にある休憩スペースで日焼け止めを塗り、海の浅瀬で冷たさに慣れることにした。

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