女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

273話 異臭の元凶



リグが突然、海水浴に行こうと言い出した。


「今日か明日に皆の分の水着買って、泳ぎに行かないか?」


 急に行こうと言われてもなぁ……俺は人が多い所に行くのは苦手だし、更には人前で水着だなんてなぁ。


「私は──」
「行こうクロア! 僕エリフォラとアリスちゃん起こしてくるよ!」


 サタナが俺の意見を聞かずに、エリフォラとアリスを起こしに向かった。


「本当に行くのか? リグ」
「ああ、つい最近近くの海で海水浴場ができたって話を聞いてな。たまにはワイワイ遊ぶのも良いだろ?」


 ん〜……とりあえず、エリフォラとアリスの意見を聞いてからだな。


「泳ぎに行くんですか!?」


 エリフォラが満面の笑みでやってきた。
 アリスは眠そうに目を擦りながら、ソファに座る。


「ああ、皆が良いなら泳ぎに行こうと思ってな」
「私行きたいです! 今まで海で泳ぐなんて経験した事ありませんから!」


 うっ、皆行きたがってるな。


「アリスはどうしたい?」
「皆が行くなら行くよ」


 マジか……俺と両親だけ残るってのは何か悪いもんな。折角リグが提案してくれたんだし……どうした物か。


「分かった……じゃあ今日イザナギが帰ってきてから水着買いに行こう」


 すると、皆は嬉しそうに声を上げた。


◆◇◆◇◆


 イザナギが帰ってくるまで、俺はギルドに仕事に行くことにした。のだが、リグも一緒についてきた。


「たまには一緒に仕事した方が楽しいだろ?」
「そうだね」


 ギルドの掲示板前で何をするか探していると、簡単そうな依頼を見つけた。


「ゴブリンの殲滅……ゴブリンが急に増えて森の生態系が崩れそうだから、ゴブリンの住処に行って殲滅だってさ」


 報酬金は10000マニーか。魔物退治は得意分野だし、簡単に終わらせれるだろう。


「これにしよっか」
「クロアがそういうならそうしよう」


 リグが受け付けの人に依頼書を持っていき、すぐに戻ってきた。


「行こうぜ。場所は分かるから転移で行こう」
「お、流石」


 リグと一緒に転移すると、大きな洞穴の前にやってきた。
 この奥にゴブリン達がいるのだろう。殲滅だからここから焼き殺しても良いのだが、もしも中に人が捕えられていたらタダじゃすまない。


「よっしゃ、行くか」
「ん? クロアそんな剣持ってたか?」


 俺が鞘から剣を引き抜くと、リグが聞いてきた。


「あぁこれ、前にサタナとダンジョンに言った時の報酬。切れ味も完璧だ」
「おぉ、じゃあ壊れるなんて事はないか、安心だな。行こう」


 リグと一緒に洞穴の中に進んでいくと、鼻にツンとくる嫌な臭いがしてきた。


「うっ……何これ」


 思わず鼻を塞いだが、リグは鼻を握り潰してるかのように握っていた。狼だから嗅覚が良いんだな。


「うああぁ……くっせぇな」
「リグ大丈夫か?」


 俺ですら顔を歪めるほどの臭いなのに、リグはよく耐えられるな。


「何とかな。もう少し進んでみよう」


 リグと共に洞窟の奥へ進んでいくと、ゴブリン達の呻き声が聞こえてきた。
 かなりの数のようだが、皆苦しそうな声だ。


「リグ、隠密を頼む」
「了解」


 リグが俺の肩に触れて隠密を発動させると、周りの空気が変わって足音や気配が無くなった。リグの能力はとても便利だ。


 更に進んでいくと、大勢のゴブリン達が横になって朽ち果てていた。


「生きてはいるみたいだな……」
「……」


 あまりの臭さに、ついにリグは喋ることを辞めてジェスチャーのみでコミュニケーションを取り始めた。


 ふと、もぞもぞと動いているゴブリンを見ると、別のゴブリンと交尾をしているようだ。だが、その様子は苦しそうだった。


「何かおかしくないか?」
「……っ!」


 リグが何かに気づいて指を差した。その先には一つの大きな花が地面から生えており、魔眼で見ると魔力を発していた。


「うっ……あれは性欲を高める花だ……吸わないように気を付けろ」


 リグがなんとか声に出して正体を教えてくれた。
 俺は服で口元を抑えながら、花に近寄る。


「この花は持って帰った方が良い……ゔっ……高く売れる」
「分かった……」


 魔力で花を包み、魔力を外に漏らさないよう密閉した。
 その後、洞窟の中に篭った空気を風魔法で全て外に出してやると、ゴブリン達が少しずつ身体を起こし始めた。


 ほんの少しだけ臭いが無くなり、喋れる程度にはなった。


「コイツら、この花のせいでヤリまくってたんだろうな」
「地獄だな……今なら弱ってるだろうし、殺すか」


 俺とリグで弱ったゴブリン達を10匹程残して、後の全てを殺した。
 そうして俺の魔力で密閉した花をギルドに持っていき、合計18000マニー貰うことができた。



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