女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

267話 雪遊びといえば



 俺達がやってきたのは、オシャレでジャズクラシックが流れてきそうなカフェにやってきた。


 店員さんに案内された席に座って、メニューを決める。


「私はミルクと……漆黒に染まりし混沌のケーキ……?」


 ミルクは確定として、この漆黒なんちゃらケーキというのは何だろうか。


「あ、白い世界に佇む紅色姫のケーキっていうのもあるよ」


 この店にはよく分からない名前のケーキが多いな。


「噛めば噛むほど深い世界へ導かれるクッキーというのもあります」


 クッキーもあるのか。商品名だけじゃどんな物なのか分からないな……どうしたものか。店員さんに聞いた方が良いのか?


「よし! ここはちょっとスリルのある遊びをしよう!」


 イザナギが何かを思いついたのか、人差し指を立ててドヤ顔をしている。


「何だ?」
「今皆が見つけたケーキやクッキーを注文する。そひてどんな物が出てこようと、頑張って食べる遊び」


 運が悪ければ罰ゲームとなる訳か。確かにスリルがあって面白そうだ。


「それじゃあまだ選んでない人は選んでくれ」


◆◇◆◇◆


 それぞれ注文し終わり、テーブルに届いたのは……。


 俺はチョコケーキのような物で、匂いもかなり近い。サタナはクリームの上に種のないイチゴのような物が乗ったケーキ。
 エリフォラは、クリームとクッキー。アリスもエリフォラと同じ物を注文したので同じだ。


 イザナギはカレーのような液体の中に、色んな果物が入ったフルーティーカレー。
 リグはただのレモンだった。


「これ絶対不味いだろ……」
「安いの選ばなきゃよかった……」


 無事、男2人はハズレを引いてしまったという訳だ。リグに関しては腹の足しにもならないだろう。まあお腹空いてないって言ってたから大丈夫だろうけどな。


「じゃあいただきます!」
「「いただきま〜す」」


 テンションの低い男達の前で、俺達は笑顔でケーキやクッキーを食べ進めた。


◆◇◆◇◆


「「ご馳走様〜」」
「ごち……」
「ごち」


 皆頑張って完食することができた。お腹も満たすことができたし、そろそろ旅館に帰ってゆっくりするか。


「それじゃ、皆帰る?」
「そうだね〜眠くなっちゃった」


 他の皆も頷いている。
 じゃあ帰ってゆっくりしよう。旅館の部屋はかなりリラックスできるからな。


◆◇◆◇◆


「ただいま〜っっ!!」


 片付けていない布団の上に寝転がって、身体を休める。


「あ、旅館じゃなくて本当に帰るのはいつにするんだ? リグ」
「皆の疲れが取れてからでいいんじゃないか? まだしばらく外の景色でも楽しもう」


 外は少しだけ雪が降ってきていて、さっきよりも寒くなりそうだ。この世界にやってきてから雪を見たのは昨日が初めてだな。


「……っ! サタナ運今から外で遊べる?」
「遊べるけど……何するの?」
「雪遊びだよ。アリスも来る?」
「っ! 行く!」


 帰ってきたばかりだというのに、俺とサタナとアリスは旅館の外に積もった雪の元にやってきた。
 何して遊ぶのかというと、やっぱり雪といったら雪合戦だ。


「こうやって雪を丸めて、お互いに投げ合うんだよ」
「勝敗はどうするの?」


 勝敗……? そういえば、雪合戦に明確な勝敗ってあったっけ? ……ちょっと難易度高くするか。


「私とサタナは、雪玉に1回でも当たって砕けたら負け。アリスは5回当たって砕けたら負け。これでどうだ?
 ルールは相手の動きを邪魔するのは禁止。それ以外はなんでもあり」


 つまり魔法を使っても良いということだ。しかし、俺の物理攻撃を防ぐ能力なんかは、当たって砕けるという条件に入る為、アウトだ。


「よし! アリスちゃん! 一緒にクロア狙おっか!」
「うん!」


 なっ! あの2人手を組みやがった!
 2人が雪玉を作り始めたので、俺は魔法でまとめて5個くらいの雪玉を作り空中に浮かべる。


「うっ……そんな器用なことできない……」


 サタナが俺を警戒しながら急いで雪玉を作っていく。その動きはあまりにも早く、1秒で2個ほど作っているのではないだろうか。


 俺ももう少し補充しよう。
 更に雪玉を5個プラスして、合計10個の雪玉を浮かべてサタナに投げつける。


「おっと!」


 作った雪玉を壊さないように魔力で強化して、防寒服のポケットの中に入れているようだ。
 そのまま、片手の雪玉に魔力を注いで俺へ投げてきた。


──ヒュッ
「速っ!?」


 プロ野球選手顔負けの投球に、思わず動きを止める。


「えいっ!」
「危ない危ない」


 その隙をついてアリスが投げてきたが、魔法の使えないアリスの雪玉は簡単に避けることが出来る。悪いな。


 そうか……雪玉に魔力を込めて、自分の手で投げれば速いのか。


「よっしゃ!」


 こうして、豪速球の雪玉が飛び交う戦場が誕生した。


◆◇◆◇◆


「お〜い、そろそろ帰へぼっ!?」
「あっ……」


 たまたま俺が投げた雪玉が、俺達を呼びに来たリグの顔に当たった。
 悪いリグ、夢中で気づかなかった。

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